029:装備
それにしても……三人がどことなく似ているというか、なぜ「美人」という一括りでまとめたかと言えば、彼女たちの身長が大体同じくらい(165センチくらい)というのと、装備が似たような感じだったからだ。
シャツはベージュのレース系のふわっとしたタイプ、空色の肩が膨らんだタイプ。そして、黒い袖なしのノーカラータイプという三者三様なのだが……下は全員ミニスカート……膝上15センチくらい? なんか腰高。上に持ち上げた? みたいな。
だからなのか、スゲー足が長く見える。いや、実際に長いのか。三人とも高いヒールの靴は履いていない。若手の若島さんはスニーカーだ。にも拘らず。スタイル良すぎってことか。
俺もなぁ……ルックスはともかく、身長は180センチ、体重70キロ前後ってことで、所謂スッとしている系だ。ガリガリ……でも無いし。容姿で褒められるとしたら、ほぼそこのみだけれど。足も……まあ、短くは無い。
なんだけど。彼女たちの側にいると気後れしてしまう。なんという圧倒感。ってまあ、おっさん的にはしょうがないよな。足の長さだけじゃなくて、純粋に……リア充というか、この手のハイソサエティな御嬢様方には接点がないもの。
(なんで、若島までミニなのよ……)
(そう言う詩織先輩だって常にパンツなのに。何故今日は)
(あらあらあら……私だけじゃなかつたのねぇ)
(そうですよ、何よりも! 最上先輩ですよ! そんなコーデあり得ないじゃないですかっ)
(そんなこと無いわよ~昔はよくこんな感じで~)
(嘘ですね。美南先輩は明和女子→女子大でストレートですから、ずっと三つ編みロングでロングスカートだったはずです。ミニなんて……何年ぶりですか?)
(……初めて……)
(!)
(そ、そんなこと言ったら、桐子ちゃんも詩織ちゃんも、ミニスカ何年ぶりよ!)
(……12年……ぶり……くらいですかね)
(14年ぶり……くらいです)
(それ小学生じゃない! 私だって小学生くらいのときは何も考えずにミニスカワンピとか履いてましたもの。一緒じゃない!)
再整理しておかないと訳がわからなくなる。
若島桐子 22歳 ショートカット
青森県出身。若干訛りが残る。超絶美男子と言っても通用するような感じ。
松山詩織 24歳 ボブカット
千葉県出身。大人しめの女子アナみたいな感じ。
最上美南 26歳 ロングヘア
東京都出身。上品な感じ? ゲーム好き。
(ど、どうしよう、でも、似合ってない?)
(くっ。そ、そんなことないですよ……)
(ええ、いつもこの手の格好をしている私から見ても、卑怯なくらい可愛いですよ、美南先輩。もうババア領域のクセに汚い。これだから天然御嬢様は汚い)
(ババアひどーい)
(その年齢で恥ずかしくも無く、そういう台詞が言えるのがズルイのですよ)
(そうですよー)
それにしても彼女たちの会話がよく聞こえる。アレだ、これもレベルアップの効果なのだろうか? 室内で話している会話が余裕で聞こえてくる。
今、自分はバルコニーのチェアで森下社長と酒を飲んでいる。昼間から良いのだろうか? とか思いながら、上司(安中係長)に今回の件を相談したら、完全にプライベートのりで午後全部使って行って良いと許可が出たのだ。
「社長はいいんですか? こんな時間から」
「村野君と飲むのなんて……2年ぶりだろ? 優秀な秘書が時間を空けてくれてね。午後は完全にこれのみにしてくれたよ」
「それにしても良かったですね、大きな事件にならなくて」
そう。先日のファーベル襲撃事件は、銃乱射、犯人死亡という事実はあったモノの、怪我人が一人も出なかったことからあまり大きな報道はされなかった。どちらかといえば、現在収監されている元社長に対しての様々な記事が書かれた感じか。
いちばん大きかったのは事件直後に社長自らが説明会見を行ったため、余計な憶測が入り乱れなかったことだろう。
「それもこれも、村野くんのおかげだ」
「いえいえ、何度も言ってますけど……自分は大したことはしてませんから」
「そういうことにしておくよ。まあ、私はいい。君がそういう性格だという事をよく知ってるからね。無茶なコトも言わないしな。だがなぁ~あの三人は火が付いちゃってる様だぞ?」
「え?」
「君に「何か」を感じたんじゃないかなぁ~戦場で俺が君に感じた「何か」を」
「……」
そう。森下社長が俺にこだわるのは、その「何か」という部分だ。いやーでもなー今はダンジョンシステムによってイロイロと変化しているからあるのかもしれないけど、社長の場合は既に7~8年前なのになぁ。
(と、とりあえず、恋愛に先輩後輩は関係ないですから)
(そ、そうよね。うん)
(こういう時こそ、ちゃんと先輩を立ててよ~)
揉めてる。アレは……信じがたいが俺を取り合っているということなのか。うーん。正直、ただの気の迷いだと思うんだけどなぁ。
「一時的な気の迷い……吊り橋現象による錯覚……じゃないでしょうかね?」
「いえいえ、私の後輩は優秀です。そのような簡単な現象でここまで上司に詰め寄ったりしませんわ」
実は優秀秘書な箕輪さんも既にリラックスモードでお酒を傾けている。今日はそういう日にしたらしい。優秀なネゴシエーターは自分のスケジュールも自由自在なんだろうな。
「そうなんですか?」
「はい」
「くくく。村野君もそういう顔で困るんだねぇ」
「……」
そりゃそうだろ。社長……。お戯れもほどほどにってヤツだ。
「お嫌ですか?」
ぬ! 三人が肉や野菜を手にバルコニーに出てきていた。最上さんがすがるような目でこちらを見つめている。というか、他の二人も見てる。
「と、とりあえず、皆さんは御三人とも客観的に見て魅力的だと思います。健全な男子として、よく知りもしないでいやだなんて思うはずがないですが、が、何よりも、これは吊り橋現象の可能性が高いです。なので少々時間を空けてからにしませんか? 正直自分は本当につまらない男ですから、時間が空けばなんでこんな男に? と感じ始めること間違い無しと思うのですが」
「あのいま、大切な人……フィアンセなんかは?」
「い、いません……しばらく独り身で」
キュピーン! と三人の目が光った気がした……マジか。こんな現象が起こりえるんだな……。
「あの、私、直感には自信があるんです。これはっ! と来ました。そして、いまも来てます。ビンビンに」
と、若島さん。いや、ちょい距離感が近い近い。ボーイッシュなのにイイ匂いだ。いやいや。
「わ、私もです。だ、男性をを見る目はあると思いますし、一時の気の迷いでここまでセッティングをして欲しいとお願いしたりしません。しかも、大先輩や社長を巻き込むことを分かっているのに」
松山さん。うん、それはもっともだ。皆さん自信に満ちあふれているだろうしな……内から溢れ出るエネルギーが違う。
「あのでは~できる限り平等に~ということで、4人で、お友だちとして、何回かデートをするというのはどうでしょう~? 村野さんの御性格上、先手必勝な気がするのです」
最上さん。おうふ。ゆったりとしてるのに鋭い。た、確かに……それこそ、超積極的に迫られたりしたら撥ね除けられなくて、そのままそういう関係になってしまったら、責任を取らねば……と考えてしまう。
正直、もう、脳のキャパオーバーに近かったので、細かく考えるのをやめた俺は、向こうの言いなりにメッセージソフトでグループを作り、3人を誘い、連絡は「これのみ」を使うことで頷いた。
さらに彼女たちから差し出される肉や野菜を無我夢中で食べ。正直最終的には久々の飲み会による飲酒効果ですっかり酔い潰れ、タクシーでの帰宅と相成ったのでありました。
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