022:さらに骸骨

 正直……面白かった。


 この迷宮システムを気に入って無駄に熱中している自分だが、今回の迷宮行は抜群に楽しかった。


「シロ。これ面白いな」

「面白いです?」

「ああ、ブロックで自分で作った迷宮に挑めるってだけで感動してたのに、その上、上手いこと迷路というか、迷宮を組み立てればボーナスも入るって……面白すぎだろ?」

「なのです?」

「ああ、正直……俺はこの歳まで趣味らしい趣味を持てたことが無かった。無駄な……生産性の無い好きな事に時間を費やせる、気力体力を振り絞る知り合いを……バカにしながらもうらやましいと思っていたんだ」


 シロに向かって言った所で、何か刺激的な返答が帰ってくることがないのは分かっている。彼女は……少々性能の悪いAIみたいなものなのだろう。システムのレクチャーやチュートリアル的なこと以外は大抵わからない。これはもう、単純に彼女に公開されている情報が制限されていると予想される。考える葦ではなく、端末機器だと思えば腹も立たない。


「それはよかったのよぅ」

「まあ、伝わるとは思っていないが、シロの上司にお礼……いや、感謝を。俺にこのシステムを与えてくれたことに感謝する。ありがとう」

「……「感謝の意、伝わりました。詳細な事情説明などを明かさぬままのシステム運用にも関わらず、そのような対応、こちらこそ、感謝致します。嬉しく思います。というか、嬉しくてつい、直接対応してしまいました。お礼……というわけではありませんが、一つ情報を開示いたしましょう。シロは確かに末端機器でしかありません。ですが、これは「現在は」です。条件を満たすと進化し……本来のAIの様に学習し各種情報を有機的に記憶していくことになります。最終的には人間を超える神経細胞を形成する事が可能になります」なのよぅ」


 いきなり伝わった。直接対応はマズいんじゃ無かったのか。


「そうなのか……つまり……レベルなのか、レベルアップによるスキルの獲得なのか分からないが、シロは賢くなると」

「……「そうです。なので、最初期はあまりに判らないコトばかりで戸惑うと思いますが、乗り越えていただけると幸いです。先日直接対応は控えるとしたばかりでなんですが、あまりにうれしかったのでこうして降りてきてしまいました。が。これ以上、世界を歪ませたくありません。今度こそ、今後は全てにお答えできるか分かりませんが、書簡での対応になります。御自分の好きなように尽力いただければ」……シロは賢いのよぅ」

「ああ、そうだな。シロは賢いな」


 まあ、良いアドバイスをいただいた……と思うんだが、いかんせん、ヒントが足りなくて目標にならないし、シロが賢くなるとどんな恩恵があるのかも分からない。とりあえず、どうでもいいか。笑。


「よし、今の階層をもう少しカスタマイズしよう。とりあえず、迷路自体は今のままで良いだろ。なので~魔物だな。魔物。四つある小部屋のうち、三、四番目の小部屋にソードスケルトンを配置する。そして……シロ、このスケルトンナイトってさ……格上だよな」

「だとおもうのよぅ。でも詳細は配置して戦ってみないと判らないのよぅ」

「そか」


 格上決定だな。まあでも、決定的なのはフィギュアの出来だ。笑。同じ剣盾を装備しているスケルトンなのに、スケルトンナイトの方が重厚で細かい細工が施されている。彩色細かく、色数も多い。簡易だが金属鎧を身につけているのも大きいか。

 通常のスケルトンの色違いとか、焼き直しとかそういうレベルじゃ無いんだよなぁ。骨の段階からちょっと強そうというか。実際、フィギュアの全体の作りもがっしりしている。骨一本毎の太さが太いというか……ってそこまで細かく作られてる……のかなぁ? これが実際に蠢いているモンスターの縮小版だと考えれば、有り得るか。



「こいつをフロアボスにして。完成と」


「新階層を承認時に、階層構造ボーナスを確認しました。

階層ボーナス:迷路化レベル1

階層ボーナス:部屋⇔通路レベル1

階層ボーナス:迷宮構造構築

階層ボーナス:階層ボス配置

階層ボーナス:コンセプトレベル3

階層ボーナス:芸術レベル1

結果、階層ボーナスとして経験値増加、ドロップアイテム増加、ドロップアイテム品質向上が発動しました」


 お。コンセプトレベルが3になった! 強いボスの配置とか強化は主にそこに加算されるんだな。

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