021:迷路

 様々なボーナスを得られることが判明したわけだけど、とりあえず、作ってみた迷宮を修正しながら、クリアを繰り返していこうと思う。


 ぶっちゃけ、難易度的には大して苦労しないだろう。なぜなら、迷路になっているとはいえ、自分で作っているので経路の正解は全て覚えているし、配置する魔物も自分次第。現状、罠も設置していない。そんな状況で負けるわけが無いというか、苦戦するわけが無い。


 通路に配置されたジャイアントバット。既に襲いかかってくるタイミングは見切っている。ひらりひらりと躱す様に迫ってくるので最初は焦るのだが、大きさによって周期がハッキリしているのでそれに合わせて剣を突き出す。


 それにしてもボーナス武器である「切り裂きの剣」の性能がとんでもない。これが最初から与えられていて良かった。チートってヤツなのかな。というか、迷宮を管理? 所持? しているっていう今の状況ってなんだ。小説やアニメだと転生とか転移とかイロイロあるけど……。うーん。レアすぎる。


 再度プレイ再開して、先へ進む。


 小部屋につく。これと同じ小部屋が……四つ配置されている。この部屋には……ソードゴブリン二体。正直、既にゴブリンは文字通り飽きるほど倒し続けた。そのため「次の行動が読める」くらいまでになっている。


 なので同時に襲い掛かってくるくらいなら楽勝で対象出来る。距離的に右のヤツの剣が先だ。左のと距離を保つためにも少し下がる。


 右、空振り。そのまま、少し回り込む。右を左のヤツの盾にしながら、剣を突き出した。


ぐずり


 大した手応えも無く、剣が突き刺さる。右のゴブリンは勢いのまま、俺に躍りかかって来ていた。

 首元に深く収まる刃。突き抜けたソレを素早く、横に振り抜く。血がはじけた。


 首の約半分に切れ目が入っていても、気を抜いてはいけない。ヤツらは魔物だ。なんというか、生き汚い。オーバーキルで完全に死に絶えるまで確認しないと安心出来ない。


 実際、首を刎ねても身体が動き、剣を振り下ろされた事があるしね。


 残るは一匹。お仲間が邪魔で攻めあぐねている様子。さらに右に回り込んで踏み込む。野球のオーバースローの要領で、片手で持った剣を斜めに振り下ろす。

 キチンと刃を立てるのは、既に身体に染み込んでいる。チート武器の「切り裂きの剣」でさえ、敵に突き立てる刃の角度が違っていると、若干鈍い切れ味となってしまう。

 それこそ、俺の様な剣の素人でも。この剣なら「正解の角度であれば」ゴブリン如きは寸断出来るのだ。


 今回は正解だった様だ。ほとんど手応えを感じないまま、剣は斜め下に振り抜かれた。


ズス


 斜めの線に従って上半身が地に落ちる。一瞬遅れて血が溢れた。魔物の血は人間の血と比べると少し赤黒い気がする。臭いは変わらない。鉄錆の様などす黒い臭い。たまには汚臭がするのは内臓まで切ってしまったからだろうか? 


 まあ。どちらにしろ、しばらくすれば死骸は泡の如く消える。魔石等のドロップアイテムを残して。


 坦々と小部屋をクリアしていく。後に残るのは中部屋。まあ、このフロアのボス部屋だ。


 ボスはソードスケルトンだ。正直、これが初対戦となる。ソードゴブリンの延長線だろうと何となく配置したのだが、実戦を甘く見てはいけないと再確認するハメになった。


 まず、剣を右手に、左手に盾を持つ腕。骨は細く長く感じる。さらに骨のみの身体は余分がないからか、リーチが読みにくい。

 というか、これまでゴブリンとばかり戦いすぎた。変にヤツらに慣れてしまっていたらしい。これは……もう少し鍛錬方針を考える必要があるな。


 懐に入りにくいのはもう諦めて。慣れるまで無理だ。末端を攻めていく事にした。まずは腕、剣道なら小手だ。盾を持つ左手はほぼ隠れてしまっている。なので狙うは右手。剣を持つ根元部分。

 幸い、スケルトンの敏捷度はゴブリンよりも低い。多少。その分確実に力強く、リーチもはるかに長い。

 わざと剣を受ける。盾を斜めにして流す様に払う。剣を正面から受けることも出来たが、それだと硬直してしまい、攻撃に繋げられない。


 目の前には伸びきった骨。そこに思い切り「切り裂きの剣」を振り下ろした。


イィン


 何とも言えない硬質な音。しかし断ち切った。さすがチート武器。鈍い音と同時に剣と、ソレを握っていた手首が転がった。


 ん? こいつ、ここからどうやって戦うんだ? うお。


 盾を振り回し始めた。さらに骨で突いてくる。結構がむしゃらなんだな。とはいえ、バランスが悪いのか、攻撃に鋭さがない。踏み込み、攻撃を仕掛けた後に、フラつくのだ。これなら回り込むのも楽勝だ。


 回り込んで斜め後ろから、狙い澄まして首を断ち切る。さっきよりも気合が入っているせいか、音も無く首の骨が寸断された。


 と。スケルトンだからなのか、頭(骨)が落ちてもまだ平気で動く。其の分、これまでよりもさらにスピードは落ちている。通常の人間と同じく、頭部にはセンサーがあるのかな? よくわからないな。骨の生態。


 次は腰。……多分、腰椎と思われる部分へ断ち切る。


 お。動きが……止まって……おお。そうなのか。胴を分断されるとさすがに死ぬのか。……骨に死ぬで合ってるのか良く判らないけど。とにかく、他のモンスターと同じ様に、散乱した骨の遺骸? が光輝く粒子となって崩れ消えて行った。


 残されていたのはゴブリンよりも若干大きい魔石。うん、まあ、やれなくは無いな。


「シロ、撤収」

(はいですよぅ)

 

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