018:レベル2

----レベルアップ----


 繰り返し繰り返し。とにかく繰り返し。自分でもびっくりするくらい、飽きもせずゴブリンを倒し続けた。これが無心か……というくらい、ルーティンワークとして倒し続けた。何匹倒したか判らない。最初数えていたのになぁ。って、後で計算しよう。


 そんなこんなで、やっとレベル2だ。時間にして既に約4日間ちょい経過している。

 旧スマホのストップウォッチで98:47:57。カレンダーが役に立たないっていうのはものすごく面倒くさい。さらに夜と朝の区別が付きにくい。


 予想通り、管理室に戻ってきた瞬間にレベルアップの声と表示が出現した。つまり、ダンジョンアタック中のレベルアップは無いということか。


 正直、このまま、廊下ダンジョンでレベル3まで上げようと思っている。なぜなら、レベル2では、これといった進展、特典が無かったからだ。というか、レベルアップ時の新規要素とか……何か呪文とかって無いモノなのかな? 良く判らんな。


 すでに睡眠も迷宮機能集中総操作室でとっている。キャンプ用のエアマットと寝袋、水を持ち込み、食べ物は主に備蓄用のエネルギーバー。カップ麺とかも持ち込めるのだが、お湯を沸かすなんていう調理? は、向こう側。当然、トイレも、だ。

 

 極力「向こう側での時間」は減らさなければならない。なぜなら、時間が進んでしまうからだ。週末、土日のお休みが終わってしまう。


 カセットコンロやランタンは火事が怖いので持ち込まなかった。コンセントがないので電気製品は動かない。延長コードを引っ張ってくれば普通に使えるが、扉を閉められない。時間経過無しはとんでもない特典なので、開けっ放しは却下だ。

 まあ、スマホなどの持ち込んだ電池駆動する電子機器はちゃんと作動しているので、発電機でもあればこちら側でも電化生活を送れるのだろう。そこまでの必要性を感じなかったので、やってないけど。


 Wi-Fiも扉を閉じれば当然繋がらなくなる。細かい確認はしていないが、一つずつ確かめていくしかないだろう。


【洗浄】のおかげで物理的な汚れは落とされていると思う。が。なんとなく風呂に入りたくなるのは、戦闘が思い切り肉体労働だからだろうか? 元々シャワー派だったのになーと思いつつも、一日(体感)に一度は風呂に入ってしまっている。


 ちなみに風呂に入って、風呂蓋を閉めて、ダンジョンに向かい、ゴブリンを倒しまくり、飯を食ってたっぷり八時間睡眠した後でダンジョンから、現実界(笑)に戻り、再度風呂に入ろうとしても、湯温はさっき出たときのまま。冷めていない。ほんの少し、気分で追い炊きするくらいだ。時間がね、進んでないからね。当然なんだが光熱費的にありがたい、ありがたい。


 ということで、レベル2にはなったが、このままなのか? 


「シロ、レベル2になったけどさ」

「はいなのよぅ」

「なんか新しく増えたモノはないの?」

「?」


 首をかしげる。あら。かわいい。


「レベルが上がると具体的に何か変更点があるだろ? そういうの」

「んーと「レベルアップによるパラメータの向上……以外はレベル2になったことでの変更点はありません」のよぅ」

「ちょいまて、いま、明らかに違う人が喋った!」

「?」

「くそっ。シロは……レベルアップで俺にどんな変更があったか判るのか?」

「だいたいなのよぅ」

「大体、か」


 ちっ。このシステムよく出来てやがるな。向こうの都合に合わせてある。尻尾が掴めない。パラメータ……って。


「とりあえず、基礎的な情報が欠けすぎている。初期情報だけでも「ちゃんとした」説明が欲しいんだが」

「んーと「判りました。基礎的な部分だけであれば解説しましょう。これは、貴方が思いの他、当システムを楽しんで頂いている事に感謝しての特別処置になります」なのよぅ」


 明確に違う何かがしゃべった。やった。引っ張り出した。多分、手紙が面倒になったんだな。優しい声だ。


「ダメ元で聞いておきたいんだけど。この不思議ちから満載のシステムは何だ? 俺に何をさせようとしている? 母さんが関係しているってどういうことだ?」


「えーと「手紙でも答えました通り、それら大半に答えるのは、導入のためのヒントに当たりません。貴方にして欲しいのは「世界の攪拌」。ですが、これに関しても詳細は、もう少しこのシステムに慣れてから説明することになるでしょう。手紙にも書きましたが、今回はテストケースであり、こちらから強要する「何か」は一切ありません。何もしなくても結構です。それこそ、扉に入らなければ何も起こりません。その場合、貴方の家の部屋に不思議な扉が置かれたままになるだけです。さらに言えば、数年触らない状態で放置した場合、魔力不足でいつの間にかその扉は消失します」なのよぅ」


 え? そうなのか……そうか。何もしなくてもいいのか……。


「わ、判った。あとは手紙にあったとおりと思って心にケリは付ける。ではチュートリアルとして気になってる、聞かないとわからないだろうことだけ教えて欲しい。レベルアップするとパラメータがアップするだけ? なのか? 他に何か特典は?」


「んー「基本、レベルが上がることでパラメータ、貴方の能力値がアップします。レベルをたったひとつ上げた、レベル1になったことだけでも、身体能力の向上は著しく、朝の目覚めを非常に快適に感じたハズです。パラメータは十全ではありませんが、あちら側でも反映されます。さらに。貴方のこちら側の世界での職業、正式には天職と言いますが、は迷宮創造主ダンジョンマスターとなります。そのレベルを上げていくことで、天職特有のスキルを覚えたり、スキルのランクがアップしていきます。レベルによって新たなシステムが開示使用可能になったりもします」ですのよぅ」


 マジか。文字通り、レベルアップなのか。RPG的な展開……なのね。レベルアップっていう表示があったらそれを期待していいってことか。


「あちら側っていうのは俺の知っている現代社会、地球世界でってことか」


「「そうです」」


「分からないが、レベルアップを繰り返していけばオリンピック選手になって世界記録とか出せたり?」


「んーと「出来るでしょう。というかレベル2となった貴方の身体能力は、既に普通の成人男性平均よりもかなり高性能かと」ですよぅ」


「そんなんで……」


「貴方が歴史に残る高名なスポーツ選手となっても何の問題もありません」


 どおりで体調が良い。身体が変に軽いハズだ。


「レベルアップしたときに、どれくらいパラメータが上がったのかとか、何かスキルを手に入れたのか? を確認する方法は? さっきレベル2になったんだけど、何も無かったよな」


「「システム的な変化、追加が有る場合は、シロから情報開示が行われます。レベルアップに伴うパラメータの変化、スキルの追加などの詳細は……レベルを上げていくと確認出来るようになるのですが……かなりレベルが上がらないと……最終的にはマルチモニターでも確認出来るようになるかと」なのよぅ」


「マルチモニター?」


 シロが机に附属しているモニターに向かう。


「これなのよぅ」


 ああ、DPでブロックを買えるヤツか。専用かと思ってた。アレ、マルチモニターってことは、色々と使えるのかな? というか、アプリとかソフトとかイロイロ入ってるとか? タブレットパソコンみたいな?


「判った。ありがとう。とりあえず、今のところ聞きたいのはこんなもんかな」


「「判りました。これ以降の質疑応答は書簡でお願いします。シロに渡していただければ対応できるかと思います。ある程度間があいてしまいますが。今回は例外と思ってください。では良い冒険を」ですよぅ」


 頷く。


 良い冒険……か。俺に取っては戦闘全般が無謀なんだけどな。うん。


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