017:大きく
「撤収」
(はいなのよぅ)
迷宮に転送、ゴブリンをぶち殺し、戻る。これを数度繰り返した。
「魔石」
「はいなのよぅ」
「なかなかレベルアップしないな」
「それはそうなのよぅ。レベルアップはもの凄く時間がかかるのよぅ。レベル1にはすぐなれるけど、レベル2になるのは大変なのよぅ。さらにちょっとすると、一つレベルを挙げるのに数年かかるのは当たり前なのよぅ」
「げっ。本当に? そうなの?」
まあ、低レベル時のネクスト経験値は少なく、高レベルになると多くなるのは当たり前だからな。それにしても数年……て。
「でも、
「なんで?」
「早いのよぅ」
「そうなの?」
「そうなのよぅ」
何だろう。俺だから? チートって事なん……だろうか。
現状俺の最優先目的は、レベルアップだ。普通に考えて、シロの言ったその能力は【経験値倍】とか【早熟】【早成】なんていう名前で、俺はそのスキルを持っているという事……と推測した。俺の灰色のゲーム脳(意味違い)からすれば予測も簡単だ。
神様っぽい存在に手紙をもらっている以上、俺は「異世界系でお馴染みの神様遭遇イベント」を経験していると思っていい。手紙だから自由に質問したり出来ないけど。つまり、この「ダンジョン」に関係することでチートな能力を授かっていてもおかしくない。
それにしても。シロはAIみたいなものだと判断した。知らないものは本当に知らない。確認はしても、深くは踏み込まない方が精神的なダメージは少ないのだ。
下手に会話が出来るから、同じ人として考えてしまいがちだが、ゲームのチュートリアルを説明するNPCと思えば、スゴイ高性能だよな。
「いくつから、レベルアップに数年かかるか知らないか?」
「んーとぅ、レベル4からなのよぅ。レベル3まではそこそこ上がるのよぅ。なのでみんなのへーきんレベルは8くらいなのよぅ」
みんな? 俺以外にもこのシステムに関わってるヤツがいるのか?
「へー。みんな、迷宮創造主なのか?」
「違うのよぅ。へーきんレベルは世界のへーきんなのよぅ」
「どの世界の?」
「世界は世界なのよぅ」
開示されてないか。それにしても、本当に良く判らんなー。シロ越しの伝達はどうにも間接的で大事な事、聞きたいことが伝わってこない。足りない。
まあ、いいか。
最初の戦闘が唐突で、逃げ出す余地、考える余地が無かったせいか、ゴブリンの様な人型の魔物を倒す=殺す、禁忌感は感じていない。死体もあっという間に粉々になって光の粒子になっちまったしな。
これは、あれか。盗賊とか、同じ種族の敵を殺してやっと発生する系かな。楽しみにしておこう。って、今んところ魔物以外の選択肢が無いけどな。
その後もただただ、ゴブリンを倒し続ける。少しだけ工夫した。
廊下を長くして、ゴブリンを3体、配置したのだ。距離を空けてあるのでリンクはしない。一体ずつ仕留めていく仕様になっている。
最初からいるアックスゴブリンと、ソードゴブリン×2が大活躍だ。なんとなく勿体ないので新規購入? はまだしていない。
と。いうか。対ゴブリン、安全マージン確保しまくりの余裕ぶっこき案件だからこそなのかもしれないが、俺は異常に楽しんでいた。
剣を振れば一撃で倒せるにも関わらず、
・わざと一撃を剣で受けて、それを弾き、体勢を崩してから斬る。
・一撃を避け、カウンター気味に剣を振り抜く。
・最後の一体が疲労で剣が振れなくなるまで避け続ける。
・少し傷を負わせて、激昂させ、強力な一撃を剣で受ける。
etc。様々なパターンの戦闘訓練を工夫して楽しんでいた。
シロが「迷宮機能集中総操作室に戻った時点で、【回復】【修復】【洗浄】が行われる」と言っていた。
武器防具の事を聞いたつもりだったが、装備関係は【修復】【洗浄】。では【回復】は? と思ったら、普通に俺の体力や身体の回復だった。
どこまで重傷でも回復するか? なんていう賭の様な検証はしていないが、コレまでに受けた、擦り傷、切り傷、それこそ敵を一掃した後、転送直前に自分で切った深く大きい傷も跡形もなく治っていた。
ちなみにそれなりに血も滴っていたが、その後も奇麗に消えていた。
「一瞬で傷が治るってスゴくないの?」
「元々、ここは
「へー。コアとかあるんだ。ダンジョンコアってヤツ?」
「あるのよぅ。これなのよぅ」
そういうシロの小さな掌、両手を差し出したその上に、小さなクリスタルの様な、結晶体の様な何かが、輝いていた。
「小さいな」
「仕方ないのよぅ。迷宮が大きくなると、一緒に大きくなるのよぅ」
DPだっけか? アレかな? 魔石でゲットするヤツ。アレを沢山使う=大きくなる、なのかな?
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