019:配置換え

 まあ、気を取り直して、レベル2になったことだし、ダンジョンの構成を変化させようと思う。


「シロ、現在DPは?」

「24832DPなのよぅ」


 お、おう。結構貯まったな。


 剣ゴブリンと斧ゴブリンの魔石から得られるDPは、大体3。というか、多分、3.2とか、3.4とか、そんな感じで個体差が存在する。最初の報告で3体倒して、DP10っていう割り切れてない部分にしっくりきてなかったのだ。


 まあ、厳密に検証する意味も無いかと思い、今に至る。


 1回のダンジョンアタックでDPは9〜10加算されていたようだ。たまに「どれくらい貯まった?」と聞いていた感じからの推測だけど。


 ダンジョンアタック開始から睡眠時間は平均すると大体8〜9時間程度。慣れない運動に疲れているのか毎回熟睡してしまう。

 活動時間は一日約15時間。休憩は合計で3時間位だろうか。つまり正味12時間。

 1時間で 60回程度周回出来ていたから、一日に720回くらいダンジョンにチャレンジしている。つまり、×4日で2880回アタック。


 DPはその10倍だから、28800。まあ、これは理想値でしかない。最初のうちは心の準備に手間取ってたし、時間もかかっていた。

 なので現在の24832DPというのは納得出来る。思っていたよりも休憩してたんだな。

 最高効率を考えればいまいちでも、総計はスゴいな。最初のポイントの稼げ無さ気分は何処へやら。


「DPで武器、防具も交換できるんだよな?」

「なのですよぅ」

「ん? 少なくない?」


 モニターに表示されているのは厚布の服、冒険者の服、黒狼革の鎧。ラインナップに乏しい。


「そもそも武器が無いな」

「レベルが低いのよぅ。これでも良いモノなのよぅ。DPで買える武器防具道具は、宝箱や魔物を倒したら手に入る、ダンジョンのお宝なのよぅ。ご褒美は良いモノじゃないとなのよぅ」

「そっか。俺のダンジョンで手に入るアイテムは、俺のレベルより下になるのね」


 つまり、レベル2の冒険者へのご褒美となるアイテムが表示されてるって事か。まあ、こんなもんか。

 ……というか、何だ冒険者って。俺は迷宮創造主だよな? 


「シロ、冒険者って何?」

「非正規雇用の何でも屋の事を指すのよぅ。主に冒険者ギルドの依頼をこなす者の事なのよぅ」

「その、冒険者ってどこにいるんだ?」

「ここにはいないのよぅ」

「ここ?」

「ここよぅ」


 うーん、よくわからんな。まあ、いい。この辺の謎はレベルアップすればいつか解消する……と思っている。


「よし。んじゃダンジョンの模様替えといこうか。あ。確認したかったんだ。ダンジョン作成ってさ、フロア、階層毎に行えば良いんだよな?」

「そうなのよぅ。階層が完成したら登録するのよぅ。作成出来る階層数はレベル分なのよぅ」


 お。そうなのか。今、俺はレベル2だから、2階層いけると。

 シロとの会話はマメに。チュートリアルに漏れた些細なシステムが、さりげなく語られる事があるから侮れない。


 多分、想像するに、このダンジョンシステムは凄まじく壮大なのだと思う。なので説明しきれない案件が溢れてしまっているのだ。

 コレに似た状況を、長年続いたオンラインゲームを始めた時に感じた事がある。途中からっていうのがイヤだったのだが、リア友に誘われて仕方なく始めたのだ。

 判らないことがある度にネットで調べないと判らない上に、ネットで調べられない事も多かった。事細かに友だちに聞くのは向こうの負担を考えてあり得なかったため、何となくログインしなくなり、フェイドアウトしてしまった。ちょうどそのリア友も仕事が忙しくなったのでログイン出来なくなったらしく、以来、疎遠になったままだ。

 

「今回は……レベル2になったことだし、ちょっと迷路にしちゃおうかな」

 

 これまではとにかく単純に、直線の通路に距離を開けて魔物を配置するだけだった。元々俺はリアルでもゲームでも、繰り返し作業が苦にならないタイプなので、効率重視で問題なかったが、何となく「遊び」たくなったのだ。

 何より、このシステムなら、昔、憧れた壮大な超絶難解迷路なんかも作れるハズだ。今はまだブロックの数が足りないだろうけど。


 ということでまずは試しに、それなりにメリハリのある、小規模な迷路を組み上げてみた。


 迷路の通路の所々にジャイアントバットを。小部屋にはゴブリンを2体配置した。

 魔物を配置するには、フロアにその魔物に対応したスペースが必要になる。

 今目の前にあるダンジョンであれば、通路は細くしたのでバットなどのSSサイズの魔物しか配置できない。小部屋もゴブリン2体がギリギリだ。

 そしてボス部屋ではないが、次の階層への転移床手前の広間には、ソードスケルトンを配置した。


 ソードスケルトンはこれまで配置してきた魔物に比べ、明らかに格上の魔物だ。


 レベル2になったからといって即倒せるモノでも無いだろうが、ダンジョン攻略途中から瞬間帰還できてしまう俺には関係ない。

 ヤバくなってきたら帰還、やり直しを繰り返していればいつかはたどり着き、倒すことも可能だろう。


「よし、完成!」


 迷宮(ブロック)から 手を離した瞬間、淡い光が発生した。


「新階層を承認時に、階層構造ボーナスを確認しました。

階層ボーナス:迷路化レベル1

階層ボーナス:部屋⇔通路レベル1

階層ボーナス:迷宮構造構築

階層ボーナス:階層ボス配置

階層ボーナス:コンセプトレベル1

階層ボーナス:芸術レベル1

結果、階層ボーナスとして経験値増加、ドロップアイテム増加、ドロップアイテム品質向上が発動しました」


 いきなり、天の声、システムメッセージが語られ、表示された。というか、こんなシステムあったのか。


 言えよ。


 ちくしょー。アイテムはともかく、経験値増加って、明らかに時間短縮出来たろう? リアルでは時間経過していないとはいえ、レベルアップすんのに4日間かかってるンだぞ。疲労はしてんだ。まさしくちりも積もればなんとやらだ。


 悔しいが、致し方ない。


「シロ。DPで交換出来るブロックのパーツの種類も、レベルアップする毎に増加するんだよな?」

「増えるのよぅ」


 現時点でポイントを全部ぶち込んで、大きな迷宮を創ったとしても、そんなにスゴイ完成度にはならないだろう。

 何より、コンセプトレベルと、芸術レベルは、お揃いの特殊ブロックで統一感を出すとか、装飾系のブロックを上手く使わないとダメな気がする。そもそも誰の審美なんだよ。芸術点とかって一番揉めるとこだろ。まあいいけど。


「なんでこんなにブロックの種類があるのか、謎だったんだよなぁ。こういうことか」


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