第42話魔力廻戦2。
ふう・・・最初は様子見かな。
「ふう~ん。攻撃はして来なかったね?」
「心理戦でも無かった様ですしね」
「いちおう控えてくれてたんだ。まあ相談事みたいなって感じだな」
「しかし、転移者とはな」
「何故神様は面倒を見なかったのでしょうか?」
「まあ能力を与えたから、それで勘弁しろって事だろうな。使い方教えもしない。それを思うとアルストフ様は良い神だな」
「それで会うのか」
「魔力の使い方はフランに任しても良いか?」
「お菓子を対価に頂戴」
「初めてだなそんな要求。お菓子ならなんぼでも出すぞ」
冗談だと思ったら本気だった。
フランは沢山のお菓子を持って上機嫌に成った。
俺達は町からかなり遠くの荒野に来ている。
対決?の場は燃える物も人もいない場所で無いと駄目。
その提案をフランが言ったので、フラン自身に聞いてみると、此の国の東北で隣国との境に荒野が有ると聞き、そこに決めた。
確かに岩と赤土の荒野で疎らに草が生えているだけだ。
西部劇の世界だな。
「さてユカリさんだっけ、私と魔法対決してみる?」
「何で?」
「私が勝ったら今後一切アルミに手を出さない。私が負けたら・・・アルミ次第」
「それって私が勝っても負けても駄目じゃん」
「そうでも無いわよ。その前に貴女に魔法の使い方教えてあげるってどうかしら」
「あら私使えるわよ」
「そうね、でも貴女・・・完全に使い方気付いて無いわね」
「いやいや生活魔法全般に使えるわよ。凄いって言われたんだからね」
「そうね凄いわね。希少な存在。でも、貴女・・・魔法の威力掴んで無いのは何故かしら?」
「威力?」
「あの岩を見て!」
そう言い放ったフランは火球を岩に飛ばした。
轟音と共に岩は砕け飛び所々溶けて、焦げ臭い異臭を放っていた。
「・・・何、あれ」
「貴女も撃ってみて」
「出来るわけ無いでしょ」
「やっぱり神は教えて無い様ね」
「はあ~?」
フランはユカリに全ての威力有る魔法を教えた。
俺は唖然とした。
ユカリは今まで有った特級傭兵を遥かに超えていたから。
てか、スノーさん(スノードラゴン)並みの力が有りそうだ。
こえー、こいつこえー((( ;゚Д゚)))。
冷気魔法も火器魔法も、水雷地空全て俺より遥かに上だった。
「お前創製魔法とか出来る?」
もしかしてと聞いてみた。
「卵かけご飯!」
ポン!!。
「ほら出来るわよ」
「・・・・・」
「フランどうした?」
『こいつにはこれ以上魔法とか教えたら駄目だと思う』
『ヤバイのか』
俺達は念話に切り替えた。
「そうそう、それで良いわ。それじゃ勝負しましょうか」
「必要無いわ、だって私アルミさんに振られちゃってるし、そもそもあなた達と対決する必要性無いし」
「それはもうアルミに手を出さないって事で良いのね」
「無論そうよ。恋は諦めたし、もっと良い人見つけるわ」
あのフランが魔法をあれ以上教えないと言ったこの娘、正直どれ程の魔力の持ち主なんだろうか、俺はチビりそうに成った。
それからサンダフォに戻り、国境付近の芋と甜菜の耕作地を借りる話をした。
普通の税金より安く借りられた。
これであの人達には大手を振って勤しんで貰える。
運河観光の事務所に行って、ユカリの住所を聞こうと思ったら解雇されていた。
人伝に何とか知り得て行くと、理由は失恋のショックで無断欠勤したからと解ったが、もうカコはやらないらしい。
傭兵(この国では冒険者と言われる)稼業の為に今は魔法を磨いているとか。
山間の盆地で有るこの国は割りと魔物や他国からの盗賊が居るとの事。
護衛が主な収入源らしい。
「これやるよ」
「けっ軽自動車!?。でも燃料が無いわよね」
「これ、魔素で動くから事実上の無限機関だな」
「凄!しかもしかも、これパルコだよね。可愛い~」
「じゃあ達者でな。あっ、因にそれ空飛べるから」
「ふう~魔法で戦わなくて良かった」
帰りがけにフランが言ったその言葉に俺は身震いを覚えた。
魔法廻戦無くて良かった。
あの少女これからどうやって生きて行くのかな?。
おそらくこの世界最強の冒険者だろうけどね。
あっ、マルクに会うの忘れた。
またサンダフォに戻って今度はマルクに会って近況を確かめた。
うん恙無くやってるね。
「お父さん何やってんのよ!死んじゃうよ」
「これは大丈夫だよ。パチ屋の卵だから」
「いやいやいや、お腹壊すから」
次女は勿論日本の卵の安全性を知らない。
仕方無いので部屋でこっそり食べた。
あいつこれを創製するとか半端ねえ。
たかが卵かけご飯だが、物を何も無い状態から生成するのは、究極の魔法で有り、それは神の御業と成る。
いわゆる創造で有る。
一から創り出されるとどの様な魔法も太刀打ち出来ない事はお解り頂けると思う。
それは同時にその魔法を消せると言う事だからだ。
なんなら使い手その者を消せると言う事だ。
フランが途中で魔法を教え無く成ったのは、有る意味正解と言える。
おそらくフランは彼女に創造神としての恐怖を感じたのだろう。
神はなにゆえ彼女に力を与え給うたか?。
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