第40話大道芸人出張す。
花見から帰ったとたん長男に相談された。
「今年の発足祭何かめぼしい催し物欲しいねお父さん」
発足祭って呼んでるけど本当は春祭だ。
あと1ヶ月もすれば麦の借り入れで、秋の収穫祭と同格の祭だ。
たまたま領主就任と重なったので発足祭としている。
今年はめぼしい催し物が頼んだ業者の主人が体調を崩して、まだ決まってないらしい。
その日は思い付かないまま就寝。
翌日隣国の温泉町に転移するとフランに言ったが。
「のんびり温泉ですか」
と、言われカチンと来たので。
「隠居の身だ好きにさせろ」
と言ってやった。
ついでに思い出したぞ。
「お前最初に会った時、コイン魔法では転移が出来ないから、私の勝ちだとか言ったよな。この嘘つき」
「・・・あんたは幼児か!、早よ行け」
「っ・・・あのやろ思い切りけとばしゃあがって」
もう湯治だこうなりゃって訳にはいかないので、さっと温泉を出てあの一家のいる宿に向かった。
うん、もう来てるよ例の温泉町。
転移でね。
人目につかない林に転移した時に余談では有るけど、とある植物をやっと見つけた。
それは気付け薬に使うもので、毒草だけどほんの少しなら薬になるベラボ草。
コイン魔法の検索でインフルエンザの薬を集めてたけど、この成分だけが見つからなかった。
これでやっとレシピが完成。
さて町に入るか。
結果から先に言うと、5日間なら大丈夫らしい。
普通に2ヶ月掛かる距離なので無理だが、何せ俺にはマイクロバスやら軽自動車とかの魔動力の車がある。
移動の往復に2日と休み1日、仕事2日でバッチリいける。
半日で移動出来るから、何なら観光すら可能だ。
えっ、観光地有るかって・・・大きなお世話だ。
そう言えばヒルダ領ってめぼしい観光地ねーな。
一週間前から警備の為に職業斡旋ギルドには依頼を出している。
3日前に傭兵さんたちに持ち場の割り当てと慌ただしい。
昔の内乱の名残で傭兵と呼んでるけど、所謂冒険者の類いの人達。
正直正規の仕事にあぶれた者達なのだが、悪い人間はごく一部だ。
俺の様に農家の三男坊とか家を継げないとか色々だ。
あと嫁入り前の女の子も含む。
だから家政婦から町の清掃から魔物討伐、まれに争い事みたいな傭兵そのままの仕事と様々。
なのでこう言ったイベントも貴重な収入源となる。
さて祭の準備も出来て彼らを迎えに行く。
勿論宿は我が領主邸。
朝と言うか、夜中に出発して午前10時って処かな。
到着してマイクロバスに荷物を詰め込み、一家を乗せ無い。
うん、お父さんは温泉町の経理的に主要な仕事をしてて、5日間も抜けられないので、居残り確定。
申し訳ないね。
昼の2時頃にはヒルダ領都に着いた。
観光すらままならず音合わせやら舞台のチェック。
主に音響効果のチェックだ。
練習風景だけど結構見物客が集まってしまったよ。
急遽知り合いの手の空いた傭兵さんに警備して貰った。
依頼料は俺のポケットマネーから。
いやあ賑やかだね。
屋台から数々の大道芸人から。
あちこちのベンチとテーブルでは朝から乾杯している。
次女達があの西陣織りの様な衣服で屋体を出していた。
反物からお菓子におもちゃはたまたウヰスキーやらブランデー。
なんだそりゃ。
でもあの衣装は客目を引いて結構賑わってたな。
2日目は品物無くて、焼き芋屋に変わったけど。
てな中での姉弟の歌とエレクトーン(魔動力なのでマギトーンなのか?)は大盛況の内に2日間が終わった。
本当に素晴らしい。
休みの1日は観光してたけど元気だね、若いね。
羨ましいわほんま。
その実プロの演奏者や歌い手のカロリー消費量は、アスリートを凌駕する事が有るのを、俺は前世で知っている。
祭の最終日に温泉町に無事送り届けたよ。
その後姉弟は世界各国を回る音楽家に成っていったのは、数十年先の事だったよ。温泉町が離したく無かったからね。
少しだけど次女と演奏家の弟さんは仲良しに見えたが、縁を結ぶ事は無かった。
まだまだ次女は嫁にやらんぞ。
「フラン用って何だ?」
「山地の国境を越えて作物育ててるよね」
「えっ、そうなの」
祭が終わって一週間のんびりしてたらフランに呼び出された。
で今は、前の演奏家の居る温泉町とは反対側の山地に来ている。
「あのうすいません。何でこっち側に植えちゃったんですか?。国境越えちゃてますよね」
「・・・つい、こっちの方が育ちが良くて・・・」
「いやいや、国際問題に成りますからこれ」
「申し訳有りません」
「ちょっと関所の向こうの町へ相談に行って来ますね」
「罪になるでしょうか」
「税金は要ると思いますので、報告はしないと不味いでしょう」
山地を越えてまで植えたのは本当に育ちが違ったのだろう。
それ程甜菜は難しい野菜なのだ。
食えないけどね。
関所を通る時。
「おや、またおこしですか?」
「ええちょっと今回は土地をお借りしたくて」
「町か村にお住いになるのですか?」
「いえいえ、作物ですよ。あの山際に植えちゃったみたいで」
「あんな所作物育ちましたっけ?」
「陽当たりや水捌けが良いので、イモ類や特殊な作物には向きます」
「はあ・・・でもそれならサンダホに行かないと無理ですね。その関連のお役所はサンダホにしか無いですから」
「サ・ン・ダ・ホですか・・・」
嫌な予感が。
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