第37話こっこっこ、コインはどうやって?。

あれから冬に成ってお袋の容態が悪化したので、1ヶ月エミル様の領に留まった。


実はお袋は俺が行った時には臨終間際で直ぐに他界した。

しかし、親父が1ヶ月も経たない内に後を追ったのだ。

支えが無くなったのだろうね。

こんなにあっけ無いとは。

2人とも治癒魔法ではどうにも成らなかったと言うか、治癒魔法が効かない時点で最期を覚らされた。


エミル様に感謝を述べてヒルダ領に帰った。

その前にゴーレム馬車を注文されたけど・・・。

やはり揺れの少ない馬車は嬉しいらしい。


領に戻ってルンナ達と遊んだりしてたら、次女のルンナがとんでもない事を言った。

「お父さんの反物私が買ってもいい」

「はあ?・・・」

俺は慌ててパチ屋スーパーを確認したら、何と俺がストレージにし舞い込んだ反物と黒土蜘蛛の糸があるでは無いか。

えっ、それが買えるってか交換出来るって?・・・えっ。

「スロットル持ってるの?」

「うん先月初潮のお祝いに女神様から貰ったよ」

こっこっこコインはどうやって得ているのだろうか?、怖い聞くのが怖すぎる。

「ちっ、因みにコインはどうやって?」

「女神様に一回お祈りしたら五百枚くれるよ」

「えっ、そっそれだけ?」

「・・・お父さんは違うの?」

「いや、いやいや勿論そうだよ。ちゃんとお祈りしてるよ」

言えない、センズリこいて出してるなんて、娘に言える訳が無い。


アルストフ様あ、娘に甘過ぎやしませんか。

『じゃあオ○ニーを対価にする?』

・・・いえ、お祈りでお願いします。

私が悪う御座いました。


「・・・ルンナのはどんな機種なの?」

「イワワカって女の子の悲話みたい」

前世で最期に見た5スロ専用機だ。

(実際には5スロ専用機は有りません。あくまでフィクションです。)

イワワカは奈良時代が舞台で、嵐を静める為人身御供として海に落とされてしまうが、それを防げなかった水主の恋人が嘆くが、最後は千四百年の時を越えて結ばれる物語と記憶している。

「ああ、あれか。お父ちゃんも打ちたいけど、他の人のは打てないんだよなあ」

「お父さんはどんな機種?」

「あっ、ああ。ちょっぴりエッチな大人の物語だな」

実際は物語など無くやりまくるだけのAVだけど。

次男のリッカは前世の歌謡曲でボサノバ風のヒット曲が題材に成っている。

ただ2人とも俺の前世の事は知らない。


次女ルンナの名前は前世の物語が由来だ。

ルンナは裁縫が得意で反物で、日本の着物とは違うが煌びやかな衣装を作り、友達らと共有していた。

反物はパチ屋スーパーで何故か複製されいくらでも買える。

後黒土蜘蛛の糸は良質な絹の様な糸らしい。



2ヶ月アルカセット国内で過ごして、フッカルに戻りまた旅をして今度は山脈の一番低い峠を越える事にした。

一番低いとは言え三千メートル近くは有りそうだ。

この峠を越えるとあのホワイティを収納した温泉町が近い。

フッカルから北東に馬車で15日有るミンメって町まで行く。

そこからはひたすら山道を進むのだが、ミンメを出れば直ぐに関所が有るらしい。


このミンメ、芸能の町だった。

楽器から謡曲それらの学校がある。

舞台も4ヵ所も有る。

人口が2万とこの世界では中規模の町だが、4ヵ所は流石に多い。

芸能の学校が有ってこその舞台の箱物だろう。


幾つか楽器等も土産に買って帰る。

町を出て関所に向かう途中徒歩の一家に有った。

「よろしかったら馬車に乗られますか?」

そう声を掛けたら、私共は元ボルフ商会の雇い人なのでと断られた。

自らボルフの名前を出した時点で悪人とは思えない。

「この先ずっと徒歩はお辛いでしょう。お乗り下さい」

「あの、ですから私共はボルフの・・・」

「たまたま生きる為にボルフ商会に籍を置いただけでしょうに、気にする事は有りませんよ。さあさあどうぞどうぞ」

「本当によろしいので」

「はいよろしいですよ」


徒歩の一家は両親と女の子と男の子四人家族で、たまたま数年前に旦那がボルフ商会の世話に成っていただけだったが、旦那としては食わす為とは言え悪事に荷担して来た事が、許されない罪としてこれから重荷を背負う覚悟らしかった。


関所に着いて身分証を見せたら驚かれかなり御礼を言われた。

けれども、道連れの一家には厳しい顔付きだった。

流石に俺達の同行者なので酷い言葉は無かったが、一家には針のムシロだったと思える。


上り坂を3日馬車で行く。

1日毎に道幅を広げて休憩所を土魔法で作ったら凄く一家が驚いていた。

休憩所は俺達と一家の2ヶ所。

道行く人はすれ違わなかったので、交通量はかなり少ないと思うから、これで良いだろう。

4日目坂が急に成ったので馬車を諦め収納した。

一家はかなり驚いていた。

「あはは、あれ全部ゴーレムですから」

「「「「はあ?・・・」」」」

少し荒れ始めた山道に差し掛かったその時だった。

山賊・・・?。


「へっへへ、久々の獲物だぜ」

「こんな峠を越えようなんて馬鹿がまだ居るんだよな」

「ムンバ!!」

「あっ!?、もしかしてスカルゴかおめえ」

「ムンバまだ飽き足らずに人様に迷惑を掛けているのか!!」

「はっ、何言ってやがる。てめえも同じ穴の狢だろうが。何善人ぶってんだよ」

「ムンバこれは神への贖罪だ。俺達一家全員でこのお方をお守りする」

「だからてめえは馬鹿なんだよ。面倒だ女の子は後で楽しませて貰うぜ。死ねや」

「黒太郎・イバン・ギザ総攻撃だ遠慮は要らん!」

「「「「「あ"っがががっ」」」」」

ショートソードを構えた一家が唖然とする中、黒土蜘蛛があっと言う間に3人を糸で捕らえ、イバンがブレスと爪で5人を葬った。

横では4人が躍り狂って涎を流し狂い死にしていた。

「「「「えっ、えっえっ」」」」

一家は茫然としている。


山賊の死体を集めイバンが焼却した。

その間俺はコイン魔法で索敵を広範囲に掛けた。

10キロ範囲に人の気配は無かったので、おそらく山賊の仲間はいないと思われる。

関所側に人がいないって、どんだけ通行人がいないんだよ。

山側に魔物が結構な数程いるけどね。

「ギザあの魔物狩った方がいい?」

「そうですね、レッドパンサーとホワイトウルフそしてスノーイーグルにアイスフライは狩りましょう」

「数が多いんだけど・・・」

「ドラゴンさんに任せたら一瞬で終わりますよ」

「出すの?・・・一家が見てるけど」

「ご主人様、イバンと黒太郎出して今更です」

「スノードラゴンさん出てきて下さい。召喚!」

一家はついに腰を抜かして立てなく成ってしまった。

「周防さん彼らの討伐お願いいたします」


周防さんとはスノードラゴンに着けた召喚獣の名前で有る。

えっ、ああそうですよ。

そうですとも、スノーだから周防。

似てるからですよ。


「「・・・・・雪の中で暮らす魔物を全て凍らせて討伐するって」」

俺とギザの目の前には完全に凍って息絶えたホワイトウルフ・スノーイーグル・アイスフライそしてレッドパンサーが有った。

まあレッドパンサーは雪の無い所にいるけどね。

雪の塊の様なアイスフライが凍って死ぬとは思わなかったよ。

全て取り敢えず収納した。

「有り難う周防さん」

「主人よこの程度は容易い、だが雪山をその一家は越えようとしている。ワシを収納せず見守らせて貰えぬか」

「やっぱり俺の手助けを断るつもりかな?」

「多分な、贖罪のつもりなので有ろう。この山を自力で越えられねばそれは天罰と考えている」

「・・・・・わかった。俺とギザは先に軽で山を越えて待ってるよ。周防さんお願いね」

「うむ、相分かった」



「ここまで誠に有り難う御座いました。山賊迄退治して頂いて・・・申し訳ございません。ここからは私たちは全て自力で越え様と思います。越えられなくばそれが天罰と思し召し下さい」

「分かりました。もう何も申しません。俺等は先に行って待ってますから、どうぞご無事で」


周防さんは山の上を飛んで行った。

俺等は軽に乗って山を越えた。

その前に6ヶ所土魔法で避難場所の小屋を作って置いたけどね。


峠の向こう側で土魔法の小屋を作り一家が来るのを待った。


5日後に一家の顔を見た時は抱き合って喜んだ。

「途中ブリザードに有ってリバーグしておりましたけど、風が強く凍死寸前に成って、暖かい白いものが風を遮ってくれました。あれはもしかして・・・」

「あれは神獣、つまり神様なのであなた方は、神様が自ら守るべき存在と認めた事に成ります。俺の意思とは関係無くあれが決めた事ですよ。何よりも滑落も無く無事で越えられましたから、神の思し召しでしょう。よう御座いました」


「神様、私たちの様な者に思し召しなど身に余る事で御座います。誠に有り難う御座いました」

そう言って山に手を合わせていた。

まあ周防さんは既に俺のストレージにいるけどね。


「これからどうされるのですか?」

「実は考えておりません。日雇いの労働を探したいと思っています」

「僕らは楽器と歌が得意なので大道芸で稼げないかと思っています」

「・・・どのくらいの実力なのですかその芸能」


例の温泉町で大道芸を見せて貰う事にした。


「へえ~凄いな」

「あの楽器何て言うの?」

「凄い技術だな」

「わあ~、綺麗な声」

「歌上手い!?」

マジか、楽器は俺がパチ屋で交換したエレクトーンだし、歌はこれも交換のラジカセで聞かせたアニソンだから一見物だよ。

それを昨日の今日で使いこなすとか有り得ん。

「マジ凄いぞこの姉弟」

「流石にこれは凄いですよ」

俺とギザは驚愕している。


温泉街の中央広場は凄い人集りでごった返した。

投げ銭もたんまりだ。


その日泊まった例の茶粥の女将から連泊してくれる様に要請された。

温泉街の客が連泊して大道芸を連日楽しみにしているからだと。

まあ急ぐ旅でも無し、ゆるりと温泉を楽しませて貰うぜ。

何せ宿代が温泉協会持ちに成ったからねえ。

10日も連泊中だよ。

どうしょうこれ、温泉町から出られなく成っちゃったよ。


旦那は最初風呂掃除とかしてたけど、計算とか仕入れ管理が出来るって分かって、諸々の仕入れ管理を任されるに至った。

大道芸は町の観光資源に成ってしまい、もう町が手放しそうも無い。

俺が土魔法で一家の家を即席で建てたら、町長から劇場の建設を頼まれた。

初めての大型箱物に緊張したが、アルストフ様から強度に御墨付きを貰い安心した。

まさか劇場の建設をするなんて一生思って無かったので・・・。



完全に一家の生活基盤が確立されたので、1ヶ月後やっとお暇する事に成った。

姉弟には楽器の替えやラジカセのCD等も有るので、連絡出来るアイテムをパチ屋で交換した。

あっ、魔動力のスマホだね。

当然俺も持ってるよ。

嫁や子供に見られたらせがまれるので、しばらく見せないけどね。



でも一度我が領、いや息子の領地に来て欲しいなこの一家。


女将が渋るだろうけど。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る