第33話ワッシャル・ボルフ男爵。

昨日は宴会に成り酒を飲み過ぎた。

ちょっと頭が回らない。

この現状は何だ?。


目の前に何か豪奢な馬車と、煌びやかな服の男と、後ろには私兵と思われる20人ばかりの男と女。

男が15に女が5人。

大体が2級傭兵も、男と女1人ずつ特級傭兵がいる。

それらが乗る馬車もずらり。

それに何と言っても問題なのが、俺の黒太郎が別の黒土蜘蛛こに押さえられ糸でグルグルな事だ。



「さてどうするね」

「どうも糞もソニーネを何で拘束してやがる」

「ああ、このゴミですか。コイツは私が町にいた商人から氷の魔石を買い取ろうとしたら、理不尽にも斬りかかって来たのですよ」

ニヤニヤ笑ってやがる。

その顔からもそれは嘘だと分かる。

「・・・クルトンさんが売るわけ無いだろう。こんボケが」

「はっ、何をおっしゃる兎さん。そのクルトンが売ると言ってるんですよ、ほら」

後ろを見るとかなり殴られたクルトンさんが、私兵達に腕を掴まれ引き摺られて前に出された。

「きさまあー!!」

「おっと、ワイバーンは駄目ですよ。召喚したら辺りに被害が出ますからね」

そうなのだイバンが暴れるには町中は狭すぎる。

「・・・このっ」

「あなたが4匹のテイマーなのは知ってますよ。ただ2匹の魔物の反応が無いので、何処かに置いて来てますね」

『ご主人様、ご主人様のコインは私も動くので使えませんが、唯一無二の私の魔法の真髄をお見せしますね』


確かワッシャル・ボルフと男爵と名乗ったこの男、どうやら直ぐ横に居て人形に変身しているギザパン(ギザミパンサー)と、今の念話には気付いて無い。

『ギザ頼む。それと今から念話でフラン(シーレンで女神の眷属)に救助要請を出す』

『了解です』


ギザは後ろをゆっくり見やり、また前の男爵と護衛を見た。

それだけだったが・・・。

「俺をアルミ・ヒルダと知ってやってるのか」

「知ってますよ特級傭兵アルミとやら・・・フッフフ」

「くっくく」

「あはは」

後ろからも笑いが聞こえる。

「他国の貴族・・・」

「「「「アッハハハ。ヒーヒッヒ。グヘヘ。イヒッアハッ。エヘエヘゴホッ」」」」

「・・・・・?」

「「「「「「きゃはっぎゃはっアハッアハッ」」」」」

「???・・・何だ?」

男爵も後ろの私兵も皆地面に転がりながら笑っている。

そしてそれが続く。

異常に気付いた俺はコイン魔法で敵の黒土蜘蛛を氷漬けにした。

ポトリと落ちて凍死した為、俺はコイン魔法で黒太郎を拘束した糸を焼き切った。


黒太郎に蜘蛛糸で拘束して貰おうにも、彼等は狂った様に笑い転げるだけだ。

『我が主よ、どうやら妾は要らぬ様じゃな』

空を見るとフランが腕と足を組んで浮いている。

『フランパンツ見えるぞ』

『ばっ馬鹿!』

フランが降りて来る途中で、彼等が血を吐きながら笑って絶命して逝く。

こええ~。

ギザミパンサー恐るべし。

『ギザ・・・』

『後1人です、男爵だけですね』

その男爵もついに血を吐いて死んだ。


「「「「「わー、やったアー。でかしたおっさん」」」」」

町のそこかしこから絶賛の嵐だ。

???・・・何だこれ。

あっ、そうだ・・・って、もうフランが自身の治癒魔法で、ギザが俺のコインでソニーネやクルトンさんを治していた。


流石に憲兵が来たよ。

こりゃ逮捕されるかな。

『ギザ・フラン手を出すなよ。何があってもな』

『『・・・・・・・』』

聞く耳持ちそうにも無い。

憲兵が男爵や私兵の数人を見て、「やったあー!!」と声をあげた。

「はあ?・・・」

何だこの状況。


「はあはあ・・・ふう。・・・これ貴方がやったんですか?」

何やら走って来た、憲兵では無い同じ年格好の男性がそう言った。



俺とギザとフランそしてソニーネにクルトンさんと、対面しているのはこの町の町長だ。

そうあの走って来た俺と同い年位の男性。

それから回りには憲兵さんが数名。

俺らは今、町の役場でも町長の家でも無く、憲兵隊詰め所にいる。

前世なら警察署な訳だ。


「余り大っぴらに他国の人に話す事でも無いので、ここでお話しますね」

そう町長は切り出した。

「この国はあのワッシャル・ボルフ男爵に困り果ててました」

「力が強すぎて刑罰を課せれなかった訳ですか」

「ははは、その通りです。情けない話しですが、殺人・強盗・婦女暴行・土地の不正取得なんでも有でした」

「王でもそこまでしたら革命起こりますね」

「まさか倒すお方がおいでに成るとは思いませんでしたので、本当に有り難く思っております。この事は既に早馬でフッカルに手紙を出しましたので、二週間も有れば国中に知れ渡るでしょう。同時にボルフ商会は査察が入り多くが逮捕されると思います」

「それは良かったですね」

「アルミ様や従者様には御礼をしないといけないので、フッカル滞在のおりはどうか貴賓館にお寄り下さいませ。そうで無いと国中を探さないといけませんから。この町では充分な御礼が出せませんから、申し訳ないですがフッカルにてお願いいたします」

「はあ~面倒臭いから地味に出ようかと思いましたが、先に釘を刺されましたね」

「そっそれは御勘弁下さい。私目が吊し上げられます」



宿に帰って晩飯を頼むととんでもない料理の数々が出てきた。


「こんなに食えないよ・・・」












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