第30話フッカル観光二日目以後。

「わっわわ、喧嘩だ!」

キンッ、カーン、ジャキーン。

「・・・ご主人様」

「町中で刀音とは尋常では無いな」


1人の男が力ずくで倒され、相手の男が今まさに斬ろうとしていた。


「絶対障壁!」

ガア~ン。

「!?・・・何だ」

倒れてた男があわてて起き上がった。

「チッ、誰だ邪魔したのは?」

辺りを見渡してどうやら俺に見当を付けたらしい。

「てめえ邪魔しゃあがって。てめえから片付けてやらあ」

男が剣を振りかぶって襲って来たので、ギザが電撃を喰らわせた。

声も出せずに男は弾き飛びそのまま気絶した。

「ギザ有り難う」

「いえ、ご主人様のコインだと絶命致しますので」

「いや、確かに。その辺手加減が出来なくてね」


憲兵があわてて駆け寄って来た。

「何事だそこの者達!?」

事情を説明して3人で憲兵詰所へ行くが、1人は荷車で運ばれた。

「気絶してるだけですね」

若い憲兵が荷車の男を観てそう言った。

「剣を振りかぶって襲って来たので電撃を喰らわせました」

ギザが言うと、町民から事情を聴いた憲兵がその通りと答える。

「ではそこのお二方は完全な正当防衛ですね。ただ申し訳ないですがもう少し事情をお聴きしたい」

「別に構いません」

斬られそうに成った男の話では、知り合いの女が声を掛けて来たので世間話をしていた処、突如あの男が叫びながら斬りかかって来たそうだ。

間男と勘違いしたらしい。

しかし女はその場から逃げていた。


でも後にその女も事情徴収されたとか。


流石に斬りかかった男は牢屋へ収監の後、鉱山労役送りと成った。


この日は仕方無く宿で夕飯を取り部屋で休んだ。

そこへ宿の女中が呼びに来た。

お客だそうだ。

下の食堂に降りて誰かと思いきや見たら、斬られそうに成った男だった。

「どうされました?」

「あの少ないですが御礼に」

男は金貨5枚を差し出したが、丁寧にお断りした。

「私力が余り無いから打ち負けちゃうんですよね」

男は二十歳くらいだろう、確かにやさ男で体格も小さい。


「ちょっとそこの席で話ますか」

女中さんに酒と肴を頼んだ。

席に着き男の剣を見せて貰う。

軽めで細目の直刀だった。

「こりゃあまともに受けたら駄目だですね。受け流したり体位を入れ替えないと」

ギザが言った。

俺は密かにパチ屋スーパーで見つけたコイン三千枚の刀を交換していた。


『これナマクラとちゃうよね?』

『大丈夫です。名は備前長船ですから』

密かに頭の中でスーパーの声と会話する。


もう無茶苦茶だなパチ屋スーパー。

備前長船が6万円って・・・。

「それじゃあ、こんな剣の方がエエんとちゃうか」

男に刀を見せた。


「力は余り使わず切れは抜群だ。衝撃も反りで少ない。引いて斬るタイプの剣だな。刺すのも凄く有利だぞ」

「はあ・・・」

今何処から出したのこの人?。

「取り敢えず持ってみろ」

「はい」、ガチャ。

「あっ、今の剣より軽めで短いですね」

「重さで打ち据えて押し斬る剣とは違うけどな。相手の初手は受けずかわして反撃しろ。体位を入れ替える術を覚えて相手の肉を斬る戦法だな」

「私に出来ますかね?」

「出来なきゃ傭兵としてはその内死ぬ」

「・・・あはは確かに。何も能の無い私には傭兵しか稼ぐ道が無いですから」

「俺も能無しの無駄飯食いだったけど、何とか成るもんさ」

まあ神様スキルで助かったけどな。


「これおいくらですか?」

「金貨三枚だ」

「へっ、安すぎでしょ。大丈夫ですか?」

「それは保証する。試作品だが名工が打った物だからな。何なら何処かで試し切りするか」


酒代は男におごって貰い、明日は町の外で木の枝で試し切りすると、約束して別れた。


今は町の外の森の中だ。

「ハグレの山犬がいるな、丁度良い」

この世界の山犬は、人をも襲う危険な害獣となっていて、駆除の対象だ。

ガウガウ、グルルゥ~。

ガァー。

男はさっと体位を変えて刀を一閃した。

山犬は首筋を斬られふらふらと歩くと、少しして絶命した。

「ご主人様、この者剣術の腕自体はよう御座います」

「体格が小さくて元々筋肉が付かない成長障害かもな」

俺の交換したのは脇差しだった。

刃渡り40と少しの、この世界で言うショートソードだ。


「うん、合ってそうだな」

「びっくりです。凄くしっくり来る剣ですね」

「刀を拭いて鞘に戻して腰に差したまま、低い体制から相手の顎に打ち上げる様に、摺り足で素早く振り抜いてみな」

ピュッ。

「速ぇっ」

「見え無かったですよ、ご主人様今のは?」

「多分居合斬りって言う抜刀術なんだけど・・・、脇差しとは言えこいつ一発で決めやがった。ろくに剣技を知らない俺が感覚で言ったのに」

「あれは避けにくいですね」

「低い姿勢からだからな。にしても摺り足の速さは普通じゃ無い。・・・天性か」


「小さい頃は体術を独自で練習してました。でも組まれると力で負けちゃいます」

「我流で摺り足とか体位の入れ替え覚えてたのか凄いな。剣があれだったから鎧を着てる相手には無理だったんだ。細身でも日本刀と比べたら幅広だし重いからな」


男は金貨3枚で脇差しを買った。

「処で名前は?」

「ソニーネって言います。えっと貴方は」

「ああアルミって言うよ」

「アルミさんこの度は有り難う御座いました」

「なんのなんの、でも街角で剣を振り回す奴がいるなんて、思ってもみなかったよ」

「私も剣を抜くとは思って無かったですよ」


その日の夕方は彼と宿で少し呑んで別れた。


「ギザ観光も粗方終わったな。次は何処に行こうか」

「折角ですのでギルドで護衛の仕事探しませんか」

「それも有りかな久々に」


「ご主人様メンヒルって町までの護衛が有りますよ」

「メンヒルって何処だ?」

「ここから馬車で廿日と三日・・・こりゃまた遠い」

「いいなそれにしよう」


受付嬢に依頼を受けると張り紙を差し出した。

「クルトン様の護衛ですね、身分証をご提示願えますか」

「ほいっ」

「・・・あっ、わっわわ分かりました。後出立は三日後の朝に北門からに成りますので、夜明け前にお願いいたします」

「クルトンってどんな人か聞いてもいい」

「あっはい、クルトン様はこの辺りの豪商に成ります。今回は山脈の麓のメンヒルで、希少な物品の買い付けだそうです」

「有り難う。あの山脈方向なんだ」

「軽い防寒具や厚手の毛布の携帯をおすすめします」

「寒いの?」

「ここより10度は低いので、冬なら重装備に成りますね」

「馬車で行ける町?」

「かなりなだらかに街道は登りに成りますが問題無いです。むしろ帰りが馭者の方が大変ですね」

あっ、ブレーキかけながらか。



三日後の早朝。

「おはようございます。護衛させて頂きますアルミとギザと申します」

「どうもどうも、商人のクルトンと申します。この度はメンヒルくんだりまでの護衛有り難う御座います。後あちらのパーティー5人の方も護衛ですよ」

見ると傭兵らしき装備の男3人と女2人のパーティーがいる。

こちらに気付いてリーダーらしき30くらいの男が寄って来た。

「護衛のお二人ですか?」

「あっはいアルミとギザと申します」

「これはご丁寧に、私はマシュウで橘の花ってパーティーのリーダーをしてます。今回はよろしくお願いいたします」

「ご丁寧な挨拶いたみいります」

「お二方とも帯刀されておりませんが、魔法使いの方ですか?」

「はい私は投擲魔法でこちらのギザは氷結魔法が得意です」

「投擲?・・・ですか?」

「はい魔道具の投擲ですね」

「それと氷結はどの程度でしょうか?」

ギザパンに軽めに離れて誰もいない地面を凍らせた。

「なっ何だ涼しくなったぞ」

近くの門兵が呟いた。

「凄いな、びっくりです。頼もしいですね。お~い4人とも挨拶してくれ」

ゾロゾロと4人が集まって来た。

「ソランダよ、よろしく」

「ヘルンだ、よろしくな」

「カッファだよろしく」

「オリオネ。よろしくね」

「アルミとこちらギザだよろしくな」

「は~い、出発しますよぉ~」

クルトンが出発の合図を出した。


ソランダと言うのはマシュウの妹らしいく25歳だ。

ちょっとボーイッシュ。

ヘルンとカッファは兄弟で27と24。

割りと男前の兄弟だちくせう。

オリオネは16と若く凄く気品が有り可愛らしい。

貴族かなと思った。

ん~、どうもソランダとカッファって・・・あれかな。

オリオネだけは少しおとなしいな。

しかしギザはそう言うの聞き出すの上手いな。

感心するわほんま。


3日さして何も無く小さな村に着いた。

ここには宿が無く野営だ。

野菜や肉・玉子は調達出来るので不味い飯にはならない。

商隊も護衛も皆同じ鍋で炊いた飯を食べた。

村や町ではそうするそうだが、街道の野営はそれぞれ別に成る、監視を持ち回りするからだ。


街道で休憩の時オリオネがお菓子を分けてくれたので、次の日お返しにパチ屋で交換したお菓子をあげたら、凄く驚いていた。

かなり美味しかった様だ。

ブランデーケーキだからね。

それにしてもこの娘は可愛くて美人で人当たりが良いな。

モテるだろうなあ。


7日目ここまで無事だったけど、ステッペンボアに出くわした。

「15匹はいるな」

「駆除対象の魔物だ狩るぞ!」

5人は次々倒して行く。

俺等も5匹倒した。

「アルミさんその馬車にこれ入らない?」

「よろしいですよ」

「あと1日で次の町なので売りますから、それまでお願いいたしますね」

「ソランダさんの様な美人に頼まれたら断れませんよ。ついでに氷漬けしときますね」

初老で白髪が目立つ風体のギザが言うから洒落に成る。

俺が言ったらセクハラ紛いだ。


良い食糧(ステッペンボア)が手に入った。

時々狩りに来ようかな。

「あれ?、5匹いない」

オリオネが気付いてしまった。

「ああ、俺たちが倒したのはアイテムBOXに入れて有るよ」

「ウソ、持ってるの」

俺はストレージから出したものを、手持ちのカバンから出した様に誤魔化して、荷台に乗せた。

そして仕舞う。

「すっ凄い便利」

「それってまだお持ちですか?」

「ああ空いているのが有るよ」

「次のヤリスに着いたらお金払いますから売って貰えますか」

「ああいいよ」

この娘やっぱ貴族だろうなあ。

アイテムBOXって高いからな。


8日目にヤリスに着いた。

オリオネに手を引かれて商業ギルドに連れて行かれた。

「どれ位しますか?」

「大一枚でいいぞ」

「???安過ぎます」

「いや中古だし、魔法を解除して主を変えないといけないからね。そんなもんだよ」

「そうですか」

と、言って彼女はギルドで大金貨1枚をおろした。

俺は金を受け取りカバンの魔法を解除した振りをして彼女に渡す。

実は予備で作っておいたアイテムBOXで、持ち主を決めていないのだ。

しかもこれ、王城が一つは入る代物。

「オリオネだけしか使えない様に魔法かけようか、それとも自分でかけるか?」

「う~ん、お願いします」

「はい」カバンがほんのり光った。

受付嬢がじっ指を咥えて見ていたけど。

そりゃ欲しいよね


宿まで歩きながら説明をした。

「家一軒分は軽く入るから」

嘘では無い、王城も家だ。


「ちょっと職業斡旋ギルドに行って来ます。私の倒したステッペンボア入れたいので、あれ旨いんですよ」


そうなんだ旨いんだ。

やったね。


無事買い取り前に自分のステッペンボアを2匹確保した様だ。

パーティーの仲間もどうやら部分的に肉は解体後に貰うらしい。

もちろん買い取り価格から引かれるが、市場の半額で肉は貰えるとか。

ステッペンボア8頭で肉を差し引いても120万円相当だった。

ステッペンボアはセントバーナード犬位の大きさで、農家の畑を荒らす害獣だが肉は高く売れるのだ。


俺も解体が面倒なのでパチ屋スーパーにステッペンボア1頭を卸してみたら、ちゃんと手数料分の肉を取られて解体してくれた。

これは素晴らしい機能を知ったぞ。

スーパーにステッペンボアの肉が並んでたのに笑ったけどな。


こっそり1頭目のステッペンボアを食べ尽くした時、肉を交換に行ったら息子のリッカが既に交換してた。



・・・・・(汗)、そんな機能は聞いて無いヨー。











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