第28話ふるさとに咲く花。
海岸線沿いを行くとちらほら白い花が見える。
橘の花。
くちなしの花の花弁を細く全体を小さくした様な花。
秋には青い実がなり寒さが近付くと橙色になる。
そうミカンの花。
5月の花。
少し哀愁の有る花でも有る。
この季節海からの風は心地よく、温暖なこの地は過ごしやすい。
俺が育った前世の地に似ていて目頭が熱く成った。
外洋なので波は荒いのが瀬戸内と違う処だが。
今日は屋台でイカ焼きを焼いている。
醤油の焦げる匂いにつられて客足も良い。
「ご免なさいね。イカ無くなっちまいやした。今日はこれで店じまいでさ」
「そんなあ」
「あー残念」
「本当に悪いね。こればっかりはしょうが無いので」
明日は海産物仕入れて何処の町か。
取り敢えず今日はこの町に泊まろう。
宿の夕げは貝汁にギザミの煮付け。
菜っ葉の漬け物に炊き込み御飯。
なんか前世のふるさとそのものだ。
朝白む前から市場へ行き海産物を仕入れて帰って来た。
あさげは御味御付とアジの塩焼きそして漬け物。
こっそりパチ屋スーパーで生卵を交換したのをご飯にかけて食べた。
まさにザッ日本。
民宿の朝で有る。
異世界で日本の田舎を満喫の気分だ。
ちょっとまだ帰りたく無いね。
橘の花と言えば淡い恋の花。
宿を出て街道筋で屋台飯をやってると十五前くらいの男女が前のベンチに腰掛けている。
うい・・・そんな二人。
まだ告白前の二人。
カラタチの花そんな二人。
今日の屋台飯は飯じゃ無い。
たこ焼きだ。
プレートはパチ屋で交換。
皿はこの地の大振りの笹。
つま楊枝はパチ屋。
ベンチの若い二人が2つ買って食べてた。
さてもう一泊同じ宿にした。
連日のたこ焼き屋台。
まあタコが余ったんだけどな。
仕入れミスとも言う。
夕方昼間のういカップルの女の子が俯いて泣いていた。
彼と上手くいかなかったのかな。
恋の道は下手に手を出すまい。
これは神の領域なのだから。
翌日兵役に赴くかの男の子の姿があった。
流れる川面に映る欄干の少女。
ずっと彼を見つめて佇んでいた。
兵役だが戦は無いので三年ばかしで帰って来るだろう。
大丈夫。
成就するさ。
パチ屋で交換した桜餅を彼女にあげて、大丈夫だと言ってあげた。
今日はこれで店じまい。
ミュウの最期が思い出されて商売に成らない。
なんだか涙が溢れて商売に成らない。
翌日町を後にした。
この歳に成ってもミュウの事はどうしようも無い。
辛い思い出で有る。
心で好きと・・・
カラタチの花はミカンの仲間
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