第27話岬めぐり。

石像宮殿の王都を後にし風光明媚な岬へと向かったアルミ達。


「やっぱり旅はいいな」

「ご主人様は旅がお好きですね」

「元来風来坊なんだよ。領主の時は仕事満載で旅もろくに出来なかったしね。本当はリィファも連れて来てあげたかったな」

「いつか御二人で楽しめる事を願っております」

「一番下の子がもう少し大きく成ったらね」


海風が心地よい。

複雑な岬の地形だが道が整備されていて、風光明媚なこの地を充分楽しめる。

「海岸線に細長い国ですからこう言った所にお金をかけていますね」

「有る意味大規模農業や鉱山資源が乏しいから、海の物に頼らないと厳しいからね。軍事拡大で港を整備した分商業港に変えたのは良かった」

「割りと早く回復したのは国境の港町を、商業港として隣国にも解放したりしたからですな」

「あれで輸送が楽になって隣国やこの国の経済が潤ったからね」

「大型船の泊まる良港が地形的に回りに少ないのが功を奏してます」


岬をぐるっと回りその良港の一つにたどり着いたのは。

この国に来て1ヶ月後の事だった。

実にゆるりとした旅だ。

そんな俺のストレージには買い占めた海産物が沢山入っている。

ナマコをみてギザが引いていた。

タコにイカそれに瀬戸貝に似た貝。

特に一夜干しのイカやめざし等の乾物は嬉しい限りだ。


未だ町の外れで野営地でも有る街道の広場にいる。

町の宿でなく野営する人も多い様だ。

土魔法で小さい小屋を作って泊まった。


翌朝その小屋で屋台飯を作って売ってみる。

海鮮チャーハンと焼きそばだ。

俺でも作れる料理となるとそんな物になる。

割りと売れたので機嫌が良い。

「おっさんうめえなこれ。作り方・・・無理だよな」

「良いですよ教えても」

「えっ、いいの?」

「ちょっとねソースが難しいので同じものは無理ですけど。別のソースで代用出来ますよ。チャーハンは胡椒が手に入るかなあ?。そこは工夫して下さいね」

「ワシ隣の国で飯屋やってるんやけど、工夫して売り出してもええかのう」

「はい、俺料理人じゃ無いので大丈夫です」

「そうか、側で見さしてもろうてええか」

そう言って二十歳半ばの兄ちゃんはしばらく見てた。

ソースの原料を教えたり、高額な胡椒の代わりは山椒にしようかとか、話したりして夕方に成ってしまった。

仕方無くもう一泊した。

朝出ようとしたがチャーハンや焼きそばの注文が来て、出発したのは昼前に成った。


う~ん、巷の様子が少しおかしい。

「夕べクラーケンが出たってよ」

「今朝の出港は見合せだよ。いてえなあ」

「困ったのう。傭兵さんに退治して貰うようギルドに夕べ依頼したけど・・・」

「クラーケンじゃ長引くのう」

そんな話を漁師がしている。


「クラーケンですか、厄介ですね」

「ちょっと職業斡旋ギルドに寄って行くか」

「そう言うと思っておりました。私目は海の魔物とは対峙した事が無いですけど、何かお役に立てますかな」

「雷撃とか出来る範囲で頼む」

「解りました」


ギルドに入って受け付けにクラーケン討伐に参加の申し込みをする。

身分証を見て受付嬢が声をあげた。

「とっ特級傭兵さんですか!」

回りがざわめいた。

「初めて見ました」

「そっそうなんだ・・・あはは」

「この国にはお三方しかおいでになりませんので」

「あっ、俺は隣国の傭兵で、観光の途中で出くわしたから」

「よろしいのですか、そんな中でこの依頼を受けて下さって」

「だってクラーケンですからね。俺としては受けないのはポリシーに反します」


魔法使いの手練れが揃うのは明日と言う事でその日は町に泊まるが、俺はパチ屋スーパーで前に軽自動車を見たので覗いて見る。

あった、大阪発動機の最新ワゴン。

昔は軽にワゴンは無く、ハコバンと呼んでいたものだ。

ワゴンアールからかな?、ワゴンって呼んで良いのは。


前のマイクロバスが色々おかしかったので機能を調べたら、やはり魔動力のうえ空が飛べる仕様だった。

もうこれガン○ムの世界だよ。

・・・日本刀要らないね。

買い取って貰え無いかな?。

『査定額コイン2万枚に成ります』

あれ?、ストレージのパチ屋スーパーって買い取り出来るんだ。

日本なら色々違法だが・・・。

てか三日月宗近が中古査定40万って、刀鍛冶怒るでー。

それで軽自動車買いたいのだけど。

『1万5000枚の交換に成ります』

それでお願いして軽を貰った。


そっと夜の海に偵察に出て見たが、ライトを消して町の灯火だけで海を目指すと怖いものがあった。

海上では車のライトを使わず、パチ屋で小型のサーチライトを交換して使った。

これなら町からはまず見えない。

捜すこと4時間。

何やら波間に蠢く巨大海洋生物。

「いたぞクラーケンだ」

「ご主人様如何なさいます」

「・・・・・収納していいか?」

「こればっかりは召喚獣に成るか否かは解りませんが」

「実は前から海洋生物の召喚獣の必要性を感じていたんだ」

「解りました。召喚獣に成らぬなら私目が電撃で気絶させて、その後絶命させましょう」

「うむ、頼むな。それでは、収納ー!・・・・・入った?かな」


そっとかなり沖に移動し、今度は車のライトを点灯して、そこにクラーケンを出してみた。

「・・・お前は俺に従うか、従うなら触手を上げて示せ」

なんとクラーケンは触手を上げて踊り出した。

「本当に俺の召喚獣に成ったのなら、両触手を上げて示せ」

クラーケンは両触手を上げて海上でピシャピシャ小躍りを始めた。

「お前に名前を付けるから、良かったらもう一度片方の触手を上げて示せ。それでは・・・スクィッド。お前はスクィッドだ。どうかなそれで」

クラーケンは触手を片方だけ上げて跳ね回ったので収納した。

「ご主人様の明日のお仕事が無くなりましたね」

「うん、平和でいいね。帰ろ」



朝いちおうギルドに行ったら、30人の魔法使いの傭兵と共に大型船で海へ出たが・・・、当然何も起こらず。

数日の待機をギルドから言い渡されて、結局クラーケンは何処かへ消えたとの判断で解放された。

ギルドからはその分の宿代と少し依頼料が出たが、丁寧に俺の分は断って町を後にした。


そして隣の国フッカルに移動しながら街道筋で屋台飯を続けるのであった。





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