第23話こんな相手敵うわけ無いので収納。

1ヶ月の短期でどれだけ技術を身に付けられるというのだろうか。

まあ、それはマルクには尋ねなかったが。

俺に鍛冶師の事はわからない。

オーステナイト・フェライト・マルテンサイト・パーライトなんて高校で習ったけど、とっくの昔に忘れた。

覚えてるのはペロトロコイド曲線なんて実生活に役に立たない事柄だけだ。

ロータリーエンジンの内径の転がり曲線をどうせーちゅうねん。


そんなもん知っててもパチスロは当たらへんわ。

ワシの曲線は人生転がり曲線じゃ。


あっ、いかん前世の愚痴が出てもうたわ。


なのでマルクはストゼロに残しこの国の各地を観光して回ったら、特筆するものが何も無かったな。

ただ、知らなかったのだが。

この国議会制民主主義なんだよな。

広大な盆地の内陸国で、二百年前は王国だったらしいけど、革命で王制排斥したとか。

なので割りと国内の観光が気楽だ。

北に凄い高い山脈が見える。

日本の穂高とかより遥かに高そうだ。

どうだろうか、6・7千メートル。

そんな処かもね。

聖地とされとんでも無い魔物が居るそうだ。

ただ中腹迄行かなければ大丈夫らしい。

麓は涼しく夏の保養地に成っていると聞いたので行く事にする。


「わあ~涼しい」

「アルミ様温泉も有るそうですよ」

「じゃあ今日はそこに宿を取ろうか」

「賛成~」

高地で宿代がそこそこしたので護衛の人達の分も出してあげた。

「アルミ様申し訳有りません」

「いいって、元々こちら側の提案で旅行してるから」

流石にうちの娘と違いエミル様の御子息は気遣いが有るなあ。


その日の夜は温泉と料理を堪能してまさに旅行気分だった。

翌日の昼迄はね。


翌日温泉街をぶらぶらしてると、轟音とともに土煙が上がったので何事かと遠くを見遣ると、ビルの様な物が動いている。

温泉街に向かって来ているみたいだ。

半鐘がけたたましく町のあちこちで鳴り響いた。

それに合わせて「直ぐ様南方向に避難して下さい」と衛兵達が呼び掛けている。

「緊急事態です。直ぐに南方面へ避難して下さい!」

「お父さん?」

「ああ、取り敢えずマイクロに乗ろう」

俺はマイクロバスを出して皆を乗せ空中に浮かんだ。


あの化け物はゆっくりと温泉街に近付いて来る。

土煙の中よく見ると、三ツ頭のイエティみたいだ。

真っ白な長い体毛に猿人の様な顔が三つも有る。

手は長い所謂テナガザル風のイエティだろうか。

突然側の岩を俺等に投げて来た。

収納!!。

あんなの避難中の人に中に落ちたらえらい事やがな。

咄嗟の判断で収納したが、それであの化け物の怒りを買ったらしい。

「父さん何かヤバそうな攻撃が来そうなんだけど」

・・・・・三ツ頭のイエティが白く光っていて、冷気が集まって来ているのが分かる。

氷系と言うよりもっと凄まじい迄の冷気だ。

「いけない!!、あれは伝説の氷結魔人だ。アルミ様このままでは避難中の人もろとも町が凍らされます」

「仕方無い。収納!」

「「「「ウソ」・・・始めて見た」凄い」・・・出す時どうするのかな?」

あれは駄目かもな?。

突然消えた氷結魔人に町の人がポカーンとし、続いて騒然と成った。

マイクロを降ろし外に出たら⁉️。

「さっ寒~!?」

マイクロに戻って気温が戻るのを待ってたら、衛兵さん達に取り囲まれた。



「えっ!、しゅっ収納って・・・」

「「「「「あれを!?」」」」

「どんなアイテムBOXですかそれ」

「あはは、二度と出せませんね」

もちろん1人で夜に山脈の中腹に行き出して見たら、三ツ頭イエティに撫で撫でされた。

いやいや、召喚主は俺なんだけど。

だけど・・・なんだこの体毛暖けえー。

まさにモフモフ。

気持ちイエティ。

よく見ると猿人の顔が凄く優しい。

「よっよろしく」

「グルウウゥ~」

「名前か?、そうだねえ。ホワイティでどうかな」

「ウホウホウホ」

喜ばれて何より。

握手をして収納した。

・・・海の魔物とか収納出来るのかな?。

人間に敵愾心さえ無ければ魔物と戦う事無いね。

神様全ての魔物を収納出来ますか。

『魔物が悪い訳では無いですよ。今回のホワイティ・・・でしたか?、あれは特別です。寂しかったのでしょうね。何百年もの間一体で過ごしてましたから。そして魔物も熊等の猛獣と同じ。肉食は補食対象を襲いますし、草食も危険を感じれば襲って来ます。全ての猛獣を敵愾心無しには出来ません。だから全ての魔物も敵愾心無しには出来ません。そうね、あなたの召喚獣は百匹と限定しておきます。後は自力で倒しなさい。あなたの召喚獣に強化や鎧代わりの障壁魔法を着ければ、SSS級の魔物でも戦えると思いますから。あっ因みにホワイティはSSですよ。フランがSSSですね。』


女神様によるとフランはメルソドンと言う国を、滅ぼした過去が有るそうだ。

ホワイティは三つの町を氷漬けにして壊滅的打撃を与えたとか。

二人?とも味方に成って良かった。

てかこれは絶対に国王とかには気付かれるとヤバイな。

フランと同じく人形にホワイティも成れないかなあ。


出て来てホワイティ。

君人形に成れる?。

首を横に振った。

「俺のコイン魔法で人形に出来るかなあ?」なんて独り言を呟いたら、ホワイティが首を縦に振った。

「へぺ?」

思わず変な声が出た。

「ででで、出来るのオー」


「えっと雄だよね君」

コクりとホワイティが頷く。

「よし!、ホワイティをイケメン人形にして下さい」

ポンッ!!。

「おおお、フランと並んだら世の中全ての人が振り返るなこりゃ」

フランなんて町を歩こうものなら男共が羨望の眼に成る。

「ホワイティお前を市井に出すと町が壊れるから、これからはこれで我慢してくれ」

「ホブホブ」

「有り難う。すまんな」


帰ると朝方だった。

サミィー!。

本当に寒い。

高地に有るせいで夏だけど寒かった。

尾瀬でも6月に人が凍死した事が有る。

此処は千四百有るのか。

コイン魔法で標高を確かめた。

だから剛力の賃金で宿代が高いんだ。

そう馬車が登れ無い町なのだ。


これは朝飯にあれが欲しいな。

んでも?、あれは流石にパチ屋スーパーには無いよね。

「粉茶・・・有るのかよー」

思わず言葉に出た。


「お父さん何食べてるの?」

「土色の粥ですか。薩摩芋入ってますね」

「これは芋茶粥」

「「イモチャガユ?」」

「必殺の貧乏食だ」

ただ生姜と山椒を少々入れた。

おかずは塩鮭。

この時点で貧乏食では無いが。

「私も食べる」

「もうすぐ旅館の朝飯だぞ」

「それなのに何故アルミ様はイモチャガユを御召し上がりに?」

「山の中腹で昨日の魔物を召喚してたら寒くて死にそうだったから」

「「「「・・・・・あれも召喚獣!?」」」」

「まあね」

結局芋茶粥を皆で食べた。

その中に何故か旅館の女将もいた。

何故か好評だった。

何故だ?。

・・・でも何故女将が。



「あれ私の親戚の宿ですから」

「だから宿代一割引きだったんだ」

護衛の一人の親戚だったらしい。

・・・ん?、娘とこの護衛さん何か仲良く成ってね。

娘と顔を見合わせ笑ってる。

まっいっか。

数年後この町の名物に芋茶粥が含まれていた。

まっいっか。


茶粥ってそんなに旨いもんでは無い。

本来は冷えたご飯から作る。

米から炊いたりはしない。

その方が早く出来る。

わざわざ米から茶粥を作るのは観光客の為だ。

冷えた飯の上にもかけたりする。

冷飯を温めるのは面倒だからね。

そして粉茶(こちゃ)は茶選別の屑で凄く安い茶なのだ。

粉茶の特徴はいくら煮出しても苦く成らない。

茶袋に入れてそのまま冷飯と沸かした湯の中に入れる。

普通の茶はこんな風に煮出すと苦くて飲めない。

つまり貧しい庶民の為の物なのだ。

特に薩摩芋の入った茶粥なんて貧乏だから、米が少ないから生まれた物なのだ。

チシャっ葉の酢味噌和えもそうだ。

チシャはサニーレタスとかの仲間だ。先の方が段々茶色く成ってるやつね。

ただチシャっ葉の酢味噌和えと言うか酢味噌付けは美味しい。


俺の前世の家は貧乏だった。

昔は塩鮭なんて貧乏人の食い物だった。

塩鱈もそうだ。

安かったのだ。

もちろん薩摩芋もね。

でもね塩鱈も塩鮭もお茶漬けにすると美味しい。

安くて手軽な食べ物だった。

今は塩鱈なんて見ないよね。

冷凍技術が発達したから。

祝い物で棒鱈って処かもね。

本来は塩抜きをして煮込む物だけど、塩を抜かずにそのまま焼いて食べた方が旨かったりする。


この国を色々観光したらあっと言う間に1ヶ月が過ぎた。

マルクを迎えに行く日だ。

「有り難うございました」

「おう、これからも精進しろよ。それにしてもお宅のマルクは凄いな。たった1ヶ月なのに技術の吸収が半端ねえぞ」

「有り難う御座います親方だからですよ」

「あはは、あんた褒めても何も出ねえぞ」

そう言って親方は俺の背中をバンバン叩いた。

護衛さんが動いたので手で制した。

「親方拙い物ですが御礼の印です是非受け取って下さい」

俺が出したのは・・・間違いなく銃刀法違反のパチ屋スーパーにあった日本刀。

親方がプルプル振るえるのが面白い。

でもこの日本刀苦労した。

流石に安いが50万円する。

ひたすらスロットを回す日を数日設けたのは内緒。

親方が抜き身を取り出して見てた。

流石剣鍛冶師。

・・・・・三日月宗近。

へえ、そんな名前かあ。

名が入ってたんだ。

「これ何て書いて有るんだ?」

「(みかづきむねちか)ですね」

「へえ、凄い鍛冶師だなこいつ」

「えっと?、そんなに凄い物なんですか。割りと安かったんですが」

「これ国宝級だぞあんちゃん。受け取れん」

突っ返された。

「そっそれじゃこっちで」

俺は三木市の包丁2本を渡してお暇した。

「みっ、三日月宗近あー!」

帰りのマイクロバスの中で俺は叫び声をあげた。

そう名刀中の名刀だったのだ。

それもある筈の無い名刀。

「足利家だったかな?」

「何それ?」



そんなこんなの中、サンバハルに着いた。

あの親子を乗せて帰る為だ。

日程を合わせて有った。

「どうも、あれから体調は大丈夫ですか」

「はいお陰様で」

じゃあ・・・乗って下さい。

・・・この人の娘さんとエミル様の御子息がてを握り有って赤ら顔だ。

こりゃ本物だな。

町を出てそのまま地を走り関所の手前で速度を落とした。

その時娘がボソッと「お父さんあの娘さん一度養女とか考えてる?」そう言った。

つまりハミルトン家に嫁ぐ前に建前上うちの娘に成ると言う事だ。

「必要が有ればな」


関所を通り山道で空に上がった。

「あの峠越えは1日がかりでしたが凄いですねマイクロって」

「一気に越えるんですか?」

「はい峠は夜営の場所が無いんです」


俺は一度峠に降りて街道に土魔法で、広場と寝台が20の大きな休憩所を設けた。

「こっこれは・・・もしかして街道に有る休憩所は貴方様が」

「ハミルトン領の真似ですけどね」

「これは有難い事です。これで岩塩の運搬が楽になります」

「岩塩?」

「ええ、うちらの領では山から岩塩が取れます。前の領主様が興味を示さなかったので、普通に採掘して隣国に行商してますよ。今回も薩摩芋の苗と共に運んだから骨が折れましたけど」

あああ、海から運べるからかあ。

隣国は盆地だから塩は貴重だよな。


峠を下り俺の領の関所に着いた。

親子は関所を通る必要が有るからだ。

「駄目ですよおーアルミ様あ。アルミ様も関所は通って下さい」

「そっそうなの?」

「当たり前ですう。違法出国に違法入国ですよお。もう勘弁して下さい。一応ハンコ押しときますけど、次回からはアルミ様でも拘束致しますからね」

「ごっご免なさい」


親子の村に着いた。

「元々ここの出なんですよ。あの時はハミルトン領の村に嫁いでまして、夫が亡くなって離縁されちゃいました。姑と仲が悪くて」

「そうでしたか。ではお元気で」

身分を明かした上でも岩塩の場所は簡単に教えてくれた。

何時かは領主様が来ると思ってたらしい。

「あっあの、私目ニケール・フォン・ハミルトンと申します。おっおじゃう!、痛ッ、お嬢様をお嫁に下さいまへ」

二回噛んだよニケール君。

「ハミルトン家の・・・あのでも娘はあなた様より4つは上かと」

「アルミ様の奥方も3つ上とお聴きしております。ですから問題は御座いません。私目もようやく旅の途中で十と一つに成った若輩者では御座いますが、心にはこの方しか無いと思い至りました。どうかお嬢様を私目のお嫁に下さいませ」

おお、今度はまへじゃ無かったな。

にしても若い内から結婚する世界だけに、しかっりしとんなニケール君。

俺の前世の10歳なんて夢精も出ない鼻垂れ小僧やったわ。

「私目も未だ夢精は有りませんアルミ様」

「わっわっわっ、声に出とったんかあ~」

娘に頭を叩かれたが、しっかり娘の顔が赤いのを確認した。

うちのは未だおぼこいのう。

と、思った日も有りました、はい。

まさか十三で嫁に行きお里の便りも絶え果てるとは。

・・・まあ俺がハミルトン領にすぐ行けたからだけど。


平均年齢が30後半の世界だ。

俺も十六手前でリィファと関係を持ち結婚した。

早めの子作りは当たり前の世界であり、その為性にもおおらかだ。

あっ、でもニケールもうちの娘も未だ子供は無理だよ。

両方とも種も畑も出来て無いからね。

いくら早くから子供を作ると行っても、若過ぎると体の成長が伴わず危険な妊娠に成るから、女性はせめて16位からだけどね。


今はリィファが妊娠中なので独りHでコインを増やしてる俺である。

ますますの馬鹿に成りそうだ。



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る