第17話希代の超召喚獣。
最近は専ら例の渓谷の先に有る自由市場の露店で、パチ屋スーパーの品物を売って楽しんでいる。
てか、石焼き芋屋さんだね。
後は野菜や便利商品とかお菓子。
「さて帰りますか」
エミル様の領都の帰りとは違って昼前には自宅に向かう。
渓谷の街道脇で歩く人を見かけたので「乗って行かれますか」と、声を掛けたら「お願いします」と言われ乗せた。
廿半ばの女性がこの街道を一人歩きとはちと珍しい。
「ノウスの町で良いですか」と聞けば、「はい」と返事が有った。
「私を収納してみませんか」
「・・・は~あ?」
何を言ってるんだこのひ・・・っ。
後ろを振り返ったら髪が多くの緑色の蛇に変わり、口が裂け牙を出した緑の肌と鱗を持つ女の魔物がいた。
「収納!っ」
「はあ、はあ・・・何だあれ?」
街道脇にゴーレム馬車を停めて気持ちを落ち着かせて、「出して確め無いと町へ入れないよなあ」等と独り言をいって・・・。
出すか。
気持ちを切り替え決心して鼓舞し、言うぞ・・・「召還!」。
・・・絶世の美女!?。
だよな。
緑の化け物じゃ無いよなあ。
「失礼ね」
「えっとどちら様で?」
「私の種はシレーヌ。あらゆるモノの思考を惑わす心操獣よ」
「・・・???心操・・・じゃあ俺も操られるのかな」
「主を操る召還獣なんていないわ」
「そっそりゃあ助かる。って、わざと召喚獣に成ったよね?」
「だってギザちゃんいるし、ワイバーンに黒土蜘蛛それにミニマムボアまで」
「何で解るの?」
「だって私神獣だし、神の眷属だから」
「はあ?」
「はあじゃ無いわよ。あんただってアルストフの眷属じゃない」
・・・・・。
「・・・・・アルストフって誰?」
・・・・・。
「あんた!、自分の主神の名知らないの?」
「もしかして女神・・・様」
「はあ~。その女神様よ」
「・・・・・」
「・・・・・名前付けなさい」
「・・・・・」
「だから私の名前さっさと付けなさいっての」
「・・・ウーウー」
「殴るよ」
「へえ、召喚獣が殴れるのかよ」
パコーン!。
「って、木のお盆!?」
「何なら鉄が良かったかしら」
「いえ出来たら紙にしてください」
「名前付けなさい」
「アラートそう君はアラートだ」
「・・・私ね人の思考が読めるよのよね。鉄の洗面器よ出でよ」
「まっ、待てえー!。フランソワ・・・フランソワでどうだ」
「おかもとゴムかしら」
「ちゃうわ!、確かにゼロゼロスリーだけど。もうフランって事で」
「まあ紅一点だしね。良いわ」
・・・何でおかもととか零零九知ってんだよ。
「それじゃしゅ・・・」
消えた・・・?。
「これで良いわ。普段はこれで活動してるから」
「フラン隠れてお盆とか落とさないよなあ」
「そんな事ご主人様に畏れ多いですわ」
いや、さっきやったから。思い切りやったからあんたは。
何かちょっと面白いのが召喚獣に加わったけど、本人・・・本獣曰く、参謀的召喚獣らしい。
事前に危険なモノを排除したり、危険な貴族を操って排除したり、危険な魔物にも対応してくれるとか。
本人が一番危険な気もするがそこは突っ込んじゃ駄目だろう。
この召喚獣自らも召喚獣が使えるらしくて、その数がとんでもない。
流石眷属と宣うだけ有って、ステータスは俺なんかよりはるかに高そうだ。
参謀ってこの先戦争でも起こる訳じゃあるま・・・・・まさかね。
いやいや、急展開も甚だしい。
リィファが出産してマルクが卒業して、秋から冬へそして春を迎えるところで、今はエミル様の領地に引っ越している。
露店を出していた市場の近くの村だ。
何故かノウスの町が有る領主が、エミル領に最近難癖を付け始めて、険悪な状況に陥ったからだ。
どっちの領主に付くかと言えば当然エミル様だ。
そんなだからマルクの鍛冶見習いも今は立ち消えに成っている。
当然国王にも仲裁を頼んでいるが、ヌーシャテル公爵(ノウスの町が有るエミル領と同じ規模の領土を保有)側はまるで理解不能な対応だ。
あの学園も今は閉鎖されているらしい。
ヌーシャテル公爵は突然人が変わったと言われている。
何が起こったかさっぱりだ。
フランはそんな訳で今はヌーシャテルの領都に潜入中だ。
俺は取り敢えず自由市場で出店して毎日様子見の状況。
「フランか?」
「主よヌーシャテル卿は軍隊を領境に集結させているわ」
「マジかあ王軍は?」
「流石に両地に諍いでも起こらないと動かないでしょうね。ただ何時でも動けるみたい」
「それ、戦争になってからしか動かんやんかさ」
「そうね。それとヌーシャテル卿は完全に脳をやられてるよ」
「病気か?」
「何か魔力を持つ小さな生物が原因ね」
「アメーバみたいな?」
「スピロヘーターに近いかも」
「螺旋菌かよ。・・・フランって瞬間移動出来んの?」
「知らなかった」
「お前マジで神かよ」
「いや眷属だから。あなたのコイン魔法では出来無いよね。勝ったわ」
「・・・お前何で俺の召喚獣に成ったんだ?」
「・・・性格が悪いってアルストフに格下げされたのよ。悔しいわ」
解る、解るよアルストフ様。
上から落ちる木のお盆を俺は手で払い除けた。
「引き続きヌーシャテル卿の動きを見張ってくれフラン」
「了解」
俺はすぐさまエミル様にヌーシャテル軍が動く可能性を知らせた。
此の世に人を操る魔物菌の存在も書き添えて。
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