第16話海戦。
3ヶ月毎から4ヶ月に一回の護衛依頼と言う仕事で生活するように成った。
一回の報酬額が大きいし働かなくともお金は有るので、実にまったりした生活に成っている。
最近は盗賊も減り尚且つ、魔物が元々街道に出にくいので、この処戦闘はしていない。
まあ平和でよろしい。
マルクも4年になり再来年には卒業となる。
どうやら職業訓練として鍛冶師に適性が有りそうで、鉱山村の鍛冶職人から弟子入りしてみないかと誘われている。
俺の様な命のやり取りよりはマルクにはその方が良いと思う。
俺も二十歳を過ぎリィファとの間にまだ子供が出来ない。
リィファがごめんねと言うが、それは俺も同じ事なので気にしない様言っている。
女神様から治癒魔法の真実を教わった事をリィファにも伝えた。
反魂の法と言う魔法は神が禁忌としているらしく、その為死に至る病気や怪我は治癒魔法では治すのに制限が掛かるとか。
つまり俺の魔力量に関係無く、人が死に至るのを食い止める魔法は制限されるのだ。
使おうとすると気を失うらしく、女神様はわざと死ぬと脅かしたのだ。
太古に反魂法を使って死者を甦らせ様とした王がいたので、女神より上の神によって国をまるごと消された経緯が有ったと、女神様が仰った。
人助けと思って最大限の治癒魔法を使えば一国が消えかねなかったのだ。
今思うと戦慄が走る。
反魂とはそれ程の禁忌なのだとか。
春の終わり頃エミル様より護衛の依頼が入った。
比較的大きな島に渡り男爵家の次男を王都まで往復の護衛だ。
船に乗るのは初めてだけど前世では酔った事は無い。
いちおう梅酒ポーションの酔い止め版をコイン魔法で作っておいた。
後は海の魔物対策として、町の近くの池で水上バイク型の魚雷をイメージした物を、コイン魔法で作って実験しておいた。
それと爆雷も飛ばせる方法を考えてみたりした。
因みに魚雷は水中にも対応出来る。
流石に海中の魔物は初めてなので転ばぬ先の杖は必要だろう。
王都経由で海岸線の懐かしい町へ行き、船で男爵領の島へ渡った。
幸いに魔物は出なかった。
男爵の次男は人の良さそうな純朴な方で好印象だ。
エミル様のお見合い相手だそうな。
国王の紹介って、・・・それは断れないお見合いやんかさあ~。
準備をして来た船であの町へ渡る。
「坊っちゃん魔物は出ませんね」
「まあ滅多にいないからね」
男爵の次男とその護衛の話を横で聞きながら、10キロ四方を索敵していると、何やら船団らしきものが近づいて来ている。
男爵次男一行に危険を促した。
「お気を付け下さい。何やらおかしな船団が此方に向かっております」
「何!、その様な事がわかるのか」
「はい、索敵魔法で感知しました」
全員に緊張が走るが、帆船ではこれ以上の速度は望めない。
町のはるか沖で船団に囲まれてしまった。
「モーガンの海賊船だな」
「これは厄介ですな」
「海賊なんですか?」
俺は男爵の次男に聞いた。
「ああ、うちの島と50キロ離れたモーガン諸島の海賊集団だ」
敵の船は五艘、此方は一艘。
分が悪い。
先ずは斥候か白旗を揚げて一艘の船が近付く。
「ポニエール男爵の次男殿とお見受けいたす。降伏して此方の船に参られよ」
「何故その様にせねばならぬか?」
「知れた事、エミル様との婚姻を快く思わぬ方がおられるのだ」
「では死しても手向かうまでの事」
「・・・わかり申した」
敵の船は白旗を降ろし距離を取ると、残りの四艘が近寄って来た。
「申し訳御座らぬがお命頂戴いたす」
どうやらあの船の男が頭目らしい。
火矢を各自に渡し始めたので、俺は爆雷を見舞ってやった。
白旗の船と頭目の船が木っ端微塵と成ってまさに海の藻屑と成った。
頭目を失った三艘は慌てて距離を取り始めるが、逃がす分けにはいかない。
イバン空から頼む。
ギザパンあの船を惑わせ。
黒太郎糸を飛ばして船を逃がすな。
此方の船も敵船も騒然と成った。
イバンのブレス一撃で一艘が撃沈。
もう一艘は水主(カコ)が錯乱状態だ。
そして一艘は蜘蛛の糸で此方へ引き摺られている。
引き摺られる船が火矢を放とうとしたので、仕方無く魚雷を見舞った。
轟音と共に撃沈したので、残りは一艘だ。
これは拿捕して拘束した。
流石に20人の海賊の錯乱は町へ着いてから、憲兵隊が拘束の後解いた。
憲兵隊は最初ギザミパンサーにビビっていたが、大きな猫と変わり無くおとなしいので、最後には撫で回す人までいたのには笑った。
この時は流石にワイバーンと黒土蜘蛛はストレージ内だ。
ギザミパンサーには錯乱を解いて貰わないとね。
「特級とは聞いていましたが、本当に恐ろしい方ですね」
「いえあのう・・・悪者や危険な魔物に対してだけで・・・悪い事には絶対に使いませんから。そんな事したら俺が女神様に消されちゃいます」
「「えっ?」」
「?・・・何か」
「あなたもしかして女神様の眷属ですか?」
「あっ、いえいえ。・・・えっと・・・その女神様の玩具ですね。どちらかと言うと」
「「おもちゃ・・・」」
「はい。弄ばれました」
「「???」」
男爵の次男曰く。
「弄ばれる程愛されていますね」
らしい。
海の町から王都へは俺の自前の馬車で送った。
「荷車みたいですいませんが、幌もクッションの敷物も有ります。何より速度が違うので勘弁してくださいね」
「「・・・この馬車欲しい」」
あっ、やっぱりね。
王都へ着いての第一声がそれで有った。
エミル様との見合いは上手くいった様だ。
てか王様の仲人だけんね。
断れんよね。
ともあれ仲良く手を繋いで頬を赤らめておいでだった。
重畳重畳。
後日チューリィ子爵家と言うのが改易となり、当主は亡くなったと知らされた。
事実上の処刑で有り、モーガン海賊の長老も幽閉された。
海賊集団は海上交通の警備をするなら壊滅はさせない条件で、海賊では無く海上警備隊に改められ一族郎党は存在を許された。
ただし悪さをすれば即処刑で有る。
チューリィ子爵位はポニエールの次男が受け継ぎ、それと共にチューリィの家族はエミル様預かりとなった。
一族郎党処刑を免れエミル様に凄く感謝している様だ。
ポニエールの次男がエミル様にお願いした形になる。
「早いわね」
「びっくりだね」
3ヶ月後ポニエールの次男を護衛して、直接リィファとエミル様の婚儀に参列した。
引き出物が護衛途中の海の魔物で、マッコウクジラに似た特攻魚で、これが美味しくて話題に成った。
まさか俺が倒した魔物が料理にでるとは思いもよらずびっくりだ。
ただ特攻魚には慌てた。
速くて爆雷は当たらず、辛うじて3発の魚雷の一つが命中。
冷や汗をかいたのは内緒。
そんな中マルクは5年生に成った。
そしてリィファが・・・。
「えっ」
「だから妊娠した」
「えええー」
第一子を授かった。
えっと、パチ屋スーパーにて紙オムツとか粉ミルクを探してみたのは言うまでも無い。
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