第15話領都リンティプラスト。

領都に着いてエミル様から依頼料を受け取った。

「あのな、アルミ・・・」

「何でしょう?」

「馬車を私にも売って貰えまいか」

「荷馬車に幌は貴族様には・・・」

「そこは手を加える」

「わかりました」

コイン魔法で複製を出した。

「あのクッションのパッドも貰えぬか」

「ちょっとお待ちを」

・・・・・。

「良かった有りましたよ。あっ、これはサービスで差し上げます」

ピンクの羽毛ロングコートをサービスした。

「こっこれは何と温い」

ゴルドナにもあげれば良かったかな。


疲れたろうとエミル様がお屋敷に二泊もさせてくれた。

流石に良いベッドで夫婦してすっかり回復したので、三日目には我が町に向かい帰還の途についた。

エミル様の執事にたっぷりとお菓子と紅茶の葉を渡してね。

そして執事さんに恐る恐る聞いた。

「この町の名前って何て言います」

執事さんは大笑いして、リンティプラストですよと教えてくれた。

「エミル様には知らなかった事、黙っててくださいね」


帰りは違う道を冒険がてら帰る事にした。

リィファの提案だ。


やはり5キロ毎に休憩所が街道沿いに置かれている。

エミル様の領地以外では見ない。

道普請も常に村や町で行われ、馬車の車輪が泥濘に取られる事もほぼ無い。

作物も街道から見るに育ちが良い。

用水路もこの数年で延伸されている。

溜め池も幾つか見てとれる。

川の堤も造られつつある。


「領地が良く整備されてるね」

「うちらの町とは大違いね」

「領主が変わるとかくも違うかねえ」

そんな話をしていると。

「あれ何かしら?」


少し広場に成っている街道脇で人集りが有る。

馬車を脇に停め様子を見に行く。

ちょっとした市が開かれている。

側の人に聞くと、周りの村から買いに来るのに、丁度良い位置にここは有るらしい。

どうやらその為に道脇を拡張して広場にした様だ。

元々良く行商人がここの道端で売っていたので、いっそ広場にしてしまえと言う事みたい。

成る程ね。

見れば他より大きい休憩所も設置されてるね。


「あっ、降りだしたかな」

「あーにわか雨ね」

辺りを見ると商品に布を掛けている。

だけど屋根は簡易的に設置されてて、雨宿りも出来る様にして有る。

降り込む雨から商品を布で守るだけで良い。

俺達も馬車に戻った。


どうやら2時間程度で雨はあがった。

季節的に時雨でも夕立でもなく、雨雲の端がかかった程度に思える。

だから弱い雨だった。

見ると簡易屋根の下にスペースが幾つか有る。

「ここは誰でもすぐに商品を売って良いのですか?」

近くの行商人に訪ねるとそうだと言ったので、リィファに俺も何か売ろうかと聞くと、面白いからやろうと言う事になった。



紅茶のティーバッグ、これはほぼ紙製品なので売る。

おや生鮮食品が新たに加わっているが、これは正直助かる。

玉葱・白菜・大根・人参・薩摩芋を並べたけど、ジャガイモは止めておいた。

もしかしたら芽の事を知らない可能性が有るから。

卵をパックから外してバラで売った。


量は余り無かったので、薩摩芋以外は全て1時間で売り切れた。

どうも薩摩芋は認識されていないらしい。

「くっひひ・・・」

「何よ気持ち悪い」

「売れないならこれを出そうかな」

俺は焼き芋コーナーがあるのを知っていたのだ。


この芋をじっくり焦がさず焼くとこうなりますと、画用紙の看板を店の前に置いて焼き芋を販売した。

即完売!。

生の薩摩芋も即完売!。


雨もあがったので「リィファにそれじゃ行こうか」と、言った処で一人の商人が待ったをかける。

「すまんがその紙まだ有るなら売ってくれんか」

俺は29枚の画用紙を売ってあげた。

半端なのは先程1枚使ったから。

これサービスですと安物の色鉛筆十二色入りの紙ケースも渡した。

商人はそれを見て何故かプルプルと震えていた。

まずったかな?。


その場を早々に去り、なだらかな下り坂を行く。

「あそこら辺は結構高地だったのかな」

「そうね低い丘陵地に成ってるわ」

「そうなんだ」

暫く行くと平坦な広い場所が有ったので、今日はここで夜営をする。

馬車も何台か停まっているので、その様な場所なんだろう。


一夜明け出発すると渓流沿いの道を、かなり緩やかに下って行く。

途中で徒歩の母子連れを乗せた。

徒歩で朝暗い内に俺達を追い抜いて下ってたらしい。

かなり疲れていたし、寒そうだったのでリィファが梅酒ポーションを、魔法で温めてあげてた。

無論6歳くらいの子供にはかなり薄めてだが。

俺は羽毛ロングコートを出してあげて、焼き芋も手渡した。

「馬車にタダで乗せてもらった上に、この様な物まで有り難うございます」

「いやいや、困った時はおたが・・・あれ?ここって」

「アルミ・・・」

「あっ」

俺は子供がいたので口を閉じた。

そうここは俺とリィファが初めて男女の関係に成った場所。

通称子作り渓谷なのだ。

今も数組の男女が勤しんでいる事だろう。

自然の岩影によるラブホだ。


リィファが母子にキャラメルをあげている頃に町に着いた。

「これ良かったら貰って下さい」

俺は時間を掛けてゆっくり焼くと良いと、薩摩芋を手渡した。

母子は深くお辞儀をして門をくぐった。

久々の我が家に帰りまだ明るいが、二人ともぐっすり寝てしまった。



夜中に目が覚めてしまうが、・・・やる事は一つしか無い。

俺はリィファを抱き寄せキスをすると、寒いので布団の中でリィファの寝間着を脱がせた。

自分の寝間着も脱ぐと愛撫を始める。

久し振りの営みなので夢中に成った二人は、2回の行為で終わるとまた寝てしまった。

朝起きて軽くもう一勝負。

3回もリィファの中に注いでしまうのは、前世とは違い若いから成せる技だ。

いわゆる猿みたいってやつかな。

・・・あれはコク時か。


だけど7日してリィファはあの日に成った。

子供は2年経ってもまだ恵まれない俺達だった。


リィファごめんね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る