第14話ガタカナムの代官。

翌日宿を出て約束通り昼にかの邸宅に向かった。

どうやら中年の男性は領地を持たない一代限りの騎士爵らしい。

今回は若い俺より下のメイドさんと二人で領都へ行くのだとか。

「あれ?、昨日の御仁」

「おやおや、昨日の峠のお二方。昨日はお世話に成りました」

「この者はワシの甥っ子でコルドナと申す。今回は護衛で呼んだのじゃ。それとこちらのメイドはセレイナと申す。よろしく頼むよ」

「はいわかりました。お・・・私はアルミと申します。こちらは妻のリィファです」

「「これはお綺麗な奥さまで羨ましい」」

叔父と甥でハモった。


「このパッドは昨日は無かったですね」

「お客様様に買っておきました」

「叔父上この馬車は凄くクッションが効いてますよ。昨日は快適でしたから」

「そうなのか」

「はい、普通の荷台に見えますが、貴族の馬車より揺れません」

「それは酒瓶なんかを運ぶ為に荷台を作ったからですよ」

「成る程のう」

「それにこの敷きパッドは座り心地が良いですね」

メイドさんも褒めてくれる。

昨日パチ屋スーパーでコイン交換したものだ。


「アルミさん昨日オケラ寸前だった事は内密に」

「わかりました」

気付かれない様に馭者席でヒソヒソ話をコルドナと交わした。


一昨日の峠でメイドさんが、「またコルドナ様はお酒に路銀を使ってしまわれた様ですね」って言ってしまう。

・・・そうだったんだ。

「ほんにお前はだらしないのう」

「あーいや、申し訳ない」


峠を下った先の村で宿を取った。

村で宿が確保出来るので夜営はしない事にする。


翌日は村間の距離が有るのでとばしたら、馬を心配された。

「大丈夫です。このくらいこの馬は平気ですよ」

ゴーレムですので。はい。


だがしかし、物語上当然お出ましに成る。

突っ切ろうかと思ったが前方に柵を置かれた。そして両脇の林の中をそれぞれ6人くらい人が走る。

盗賊と言うより暗殺者だろう彼等。

前方には9人が控える。

馬車の速度を落とし止めた。

同時に馬車の左にゴルドナ、右をリィファが守る様に降りる。周りを見ると後方にメイドさんが降りた様だ。

ただのメイドさんでは無いねあれ。


俺は密かに左右の林に黒太郎とギザパンを召還して、空高くにイバンを召還した。

敵はイバンに気付いてはいない。


「何者か!、誰の差し金か!。ワシをパインビーク騎士爵と知っての事か」

「言うわけねーだろ。無論パインビークのおっさんにはここで死んで貰う」

・・・「なら話が早いね」

「何だと?」

「問答無用!、イバン撃て」

異変に気付いた彼等は散ろうとするが、大半はイバンのブレスで焼かれた。


左からは糸が絡まった4人が出て来るが、ゴルドナにあっさり斬り倒される。

右からもヘラヘラ笑うおかしな奴らが3人、これもリィファが簡単に斬り倒す。

何やら馬車の後ろで数人が悲鳴をあげていた。

残りの左右の数人も黒太郎とギザパンに仕止められている。


前方には逃げようとする者が3人いる。

「黒太郎ギザパン追え!」


暫くすると糸で巻かれ黒太郎に引き摺られる二人と、ギザパンに咥えられた一人が目の前に置かれた。


「ギザパンの方はもう喋れそうも無いね。黒太郎の糸で巻かれた奴は何か言っている」

「言う、言うから、ガタカナムの代官ネルネに頼まれた。なっ、言ったから助けてくれ」


二人の生き証人以外の暗殺者は、コインの土魔法で林の中に埋めた。

パチ屋スーパーで何か無いかと見るとリヤカーが有る。

あれえ?、何か商品増えて無いかと思ったら、交換の度にレベルが上り品物が増えると表示された。

店も拡大してるしな。

馬車の後ろにパッドを敷いたリヤカーを、パチ屋スーパーのロープで繋ぎ糸で巻かれた二人を運ぶ。


村で一泊の時と領都に入る前に、二人にはクリーン魔法を掛ける。

垂れ流しなので汚いからね。

領都に入る前の時は皆からクリーン魔法をお願いされたので、俺も含めて皆にクリーン魔法を掛けた。

このコイン俺の精液が元だとはとても言えない。


エミル様の役宅に案内されると、(仕事場とお屋敷は別で有る)俺達は生き証人二人を差し出し、残り19人は討ち果たして埋めた事を報告した。

「エミル様このアルミさんは何者ですか?」

ゴルドナの言葉に「一級傭兵ですよ」と、エミル様は答える。

特級とは言わないが、どうやら一級でもかなりのモノらしい。

「成る程ね。ランクはもっと上かな」

「それは言っちゃダメ」

エミル様がゴルドナを嗜めた。

ああ特級は出来るだけ秘匿なんだね。


エミル様のお屋敷に戻り、役宅に案内されたのがようやくわかった。

そこにはガタカナムの代官ネルネがいたのだ。

生き証人二人を前にネルネは膝から落ち、両手を付いて観念した。

ガタカナムの町の横領全てを自白したのだ。


「エミル様それにしてもこの国は盗賊の類いが多すぎますね」

「平和に成って傭兵の仕事が減ったからね。魔物討伐も出来ない、仕事も出来ない傭兵は、盗賊とかに墜ちてしまうんだ」

「国家事業とかの対策は?」

「例えば」

「この国はまだまだ用水路それに、治水も不完全ですし道路普請もねえ」

「国の財政的にどうかな?」

「領地ごとでも良いのでは、先ずは用水路と道普請からでも。穀物の増産に商業活性化は国を豊かにしますよ」

「進言しておくよ。勝手にやると国王に睨まれるからね」

「度量の狭い国王ですね」

「これこれ、国を乗っ取りたい輩は何処にでもいるもんさね」

「成る程ね。王様も大変だ」

「アルミ程の力があれば乗っ取れるからね」

「いやいやいや、無い無い無い」

「あはは、それは知ってる」

「お人が悪い」

「この度の事アルミ殿には感謝する」

「いえいえ、ゴルドナさんもそれにメイドさんも凄腕でしたよ。特にセレイナさんには驚きました」

「確かに私も見てびっくりした」

リィファがメイドのセレイナの戦い振りに感想を述べた。

「セレイナは山賊に育てられたんじゃよ。山賊が軍に討伐されてワシが引き取ったのじゃ」

「私はパインビーク様に感謝しております。真っ当な人間として生活出来たのはパインビーク様のお陰です」

「ゆくゆくは何処かの貴族にでも嫁がせたいのじゃが」

「それじゃ僕がもらいます」

「お主は家が継げぬ平民じゃし、何より飲んだくれの穀潰しじゃ」

「酷いなあ。セレイナはどう、僕じゃダメ?」

「・・・わ、私で良ければ」

セレイナの顔がみるみる赤く成って行く。

それを見たゴルドナも赤く成ってしまう。

「あれえ、お二人は好き合っておるのかえ?」

エミル様の言う通りだろう。

「パインビーク様、思惑が外れましたね」

俺が言うと。

「むむむ・・・蓼食う虫も好き好き」

そんな事をパインビーク様は言ってしまわれた。



思ったより色々と早く事が片付いて、ガタカナムにパインビーク様とセレイナさんを送って行った。

因に代官はパインビーク様が就任される様だ。

ワシも歳だから後はゴルドナにでも任せ様かなとか言ってた。


ガタカナムに着いてパインビーク様に馬車が欲しいと言われたので、コイン魔法で複製を作って売った。

リヤカーと梅酒ポーションと羽毛ロングコートやお菓子の類い、それと護身用魔法発動コインも売った。

ゴルドナにはパチ屋スーパーからコニャックを換えて売ったら、セレイナに没収されていた。


もう尻に敷かれてしまっている。


さてエミル様の領都に行きますか。

あれえ?、領都の名前知らないや。





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