第8話穏やかな鞭声。
そう言えばお姉さん(現嫁さん)の名前出して無い。
そこまでのキャラにするつもり無かったから。
で、名前付けました。(リィファ)
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マルクの入園が近づいて来たある日の事。
例の如く鉱山村へ食糧を運んでたら一人の男を馬車に乗せた。
少し柔和そうで目は細く割りと笑顔で話す人物だった。
まあ一寸何を考えてるかわかんない処は有るけれどね。
剣を携えて無かったので傭兵とは違うみたい。
俺と同じで魔法使いかも。
でないと、武器無しで街道は歩かないよな。
あっ、そうするとやはり傭兵?。
此方へ来たばかりで町の事や鉱山村の事を色々聞かれた。
「君も魔法が使えるの?」
「ええ、まあ弱い魔獣相手なら」
「ここら辺は魔獣とか出そうも無いね」
「結構狩り尽くされてますから」
「そっか、歩いてて不安だから乗せて貰ったけど、あのまま歩いても良かったかな」
「いやいや、しんどいから馬車の方がよいですよ。まだまだ暑いですしね」
「まあでも、もう廿日もしたら涼し・・・」
「オオカミ?」
「いや、山犬だね。だけど半分魔物化してるね」
男は無詠唱でサクッと氷の刃で倒すと、その場で業火を使い燃やしてしまった。
「凄いですね。あっと言う間だ」
「いや流石に山犬ごときには、後れを取りませんよ」
「傭兵さんですか?」
「昔はね」
「ノウスへはいつ?」
「一昨日かな、金も貯まったし腰を落ち着けようと思ってね。あっ、名前まだ言って無いね。ヨンセルってて言うよ。よろしくね」
「俺、アルミって言いますよろしく」
「珍しい名前だね」
「あはは、良くいわれます。じゃ、馬車出しますよ」
山犬に止められた時間を戻すべく俺は馬車を再び走らせた。
「君はどんな魔法が使えるの?」
「俺は魔力量自体は少ないんですけどね。コインに魔力を込めて増幅できるんですよ」
ストレージの事は内緒で、アイテム袋から出したコインを見せる。
「貨幣じゃ無いね。これ」
「ええ、魔法のコインです」
「魔法?、魔道具の一種かい」
「そうです、魔力を込めると色んな武器に出来ます」
「随分便利だね。初めて見るよ」
「俺専用に作って貰ってるから、他の人には二束三文のコインですね」
「へえ・・・」とヨンセルはコインを返してくれた。
神様からの贈り物で俺の精液から出来てるとは死んでも言えない。
特に精液なんて。
ストレージには今は五百枚くらいかも知れない。
アイテム袋には百枚程。
この袋は市販の物に俺がコインに魔力を込めて作った。
同じ物をマルクとリィファにもあげた。
便利だと喜ばれたけど、材料の一部は決して言えない。あはは。
リィファにはちゃんと注ぎ込んでるから勘弁な。(これが今コインが少ない理由)
その成果が実ればこの町から放れられない。
まあ、それも人生さ。
幸せは中ぐらい成りオラが春。
そんな事を思っていると町が見えて来た。
「俺、受け渡し書役所に持って行くんで、ここで良いですか?」
「ありがとう。宿に近い所まで送って貰って。それじゃまたな」
「はい、それじゃまたです」
ヨンセルを降ろして人通りの無い隠れた通りで馬車を収納した。
表通りに出た時・・・・・、ふとセンサー魔法に少し敵意めいた影を感じた。
詳しく知るためコインに魔法を掛け探査したが、気配を完全に消された。
この探査から逃げるって、相当な魔法使い?。
仕方無いのでそのまま役所に書類を出してお金を貰い、遠回りと迂回を何度かして帰った。
センサーは張っていたが何も引っ掛かから無かった。
仕方無いのでその日からは家の外周に、敵意を持った者をはじく障壁魔法掛ける事にした。
マルクやリィファにも障壁魔法を掛けておいた。
俺がコインに魔力を通しておくと、マルクとリィファにもコイン魔法が使える事が判明したので、それぞれ百枚程渡しておいた。
その数が限界で俺が目眩を起こしたからね。
・・・護身用にコインが使えるのが解ったのは重畳。
それから二百枚くらいストレージには護身用コインを入れて有る。
ああ、普通のコインがストレージには五十枚になったなあ。
とうとうマルクの入園の日を迎えた。
俺とリィファが保護者説明会に呼ばれて行く。
かねてより聞いていたが全寮制なので、一月に一回ぐらいにしか会えなくなる。
実感が・・・沸いて来た。
「寂しいな」
「アミル子どもみたい」
マルクに言われて俺は顔を真っ赤にしてしまった。
周りもクスクス笑っている。
でもリィファは少し涙ぐんでる。
だよな、だよなあ。
「プッ。あー、可笑し」
そっちかリィファそっちなのか。
あれから10日センサー魔法には何も引っ掛からない。
・・・何だったのか?。
そしてその日は例により鉱山村からの帰りだった。(後で思えば帰りで良かったよ)
「あっ、ヨンセルさんお久し振り」
「乗せて貰っていい」
「どうぞ、どうぞ」
しばらく行くと王都からの街道との合流地点で、50人くらいの騎兵隊と馬車に出くわした。
横を「失礼します」と声を掛けて通ると、馬車の中から「あらアルミじゃないの」と声がした。
見るとハミルトン伯爵家当主エミル・ハミルトンさんだった。
この人は最初に助けたあの男兄弟から命を狙われた人だ。
可愛らしく美人で悪いけどオカズにしてしまった事も有る。
「あれえ、何でこんな所に居るんですか、しかも大所帯で」
「やあねえ、ここも一応家の管轄地なのよ。隣は叔父の管轄地だし」
「随分広いんですね」
「貴方海辺を通って王都から来たんでしょ。それって迂回してうちの領地に入ってるわよ。端だけど」
「はっ?、・・・あはは。」
「それにしても護衛凄い数ですね」
「・・・叔父の動きがおかしいの」
「まさかその叔父さんもお兄さんみたいに?」
「元々叔父が挑発してたふしが有るのよね。今日は鉱山村の視察なんだけどそんな訳だから・・・」
「・・・これあげます」
「これ貴方の魔法のコイン」
「誰でも護身に魔法を使える様に改良した物です。使ってやって下さい」
「いいの」
「はい、何かあったら大変ですから」
「有り難う」チュッ!。
「あっ!!」
「それじゃね。鉱山村に来たらまた会いましょう」
「どっどうも」
・・・あれえ、人生初のモテ期か。
いや人生×2かな。
ヨンセルさんがいるのでアイテム袋から、ストレージを経由してコインを出した。
「残り少ないなあ」
アイテム袋を見ながら俺は呟いた。
ストレージになくなったね。
またひっそりシコらないと。
そう思い町に向かって馬・・・
・・・・・・・「うん?」・・・。
??、何処だここ。
知らない天井だ。
まさかチュウニビョウの台詞を自分が使うとは。
だが、ヤバい。
素っ裸で両手を縛られ板の間に寝かされている。
寒いし何より頭がクラクラする。
起き上がれるのに5分くらいは要したろうか。
ふらふらしながら窓らしき板を頭で押し開けて、外を見るとどこかの丘の草原みたいだ。
何かの納屋なのか土臭いし藁の残りも置いて有る。
・・・う~ん、ヨンセルさんを馬車に乗せてからの記憶が無い。
何が起こったのかな。
薬を空気中に撒かれて吸わされたのかも、障壁が効かなかったのはその為だろうな。
アイテム袋が無いし服も無い。
ストレージ・・・あっ。
コインがゼロ。
しまったしまった島倉千代子。
因みにステンの灰皿は無い。
いやそんな場合か。
一時間経ったろうか。
男達が小屋へ入って来た。
俺は縛られ板の間に座っていた。
「お目覚めかね?」
「何だあんた」
その男が大勢の中で異彩を放っていたのは、いかにも貴族的な良い身なりしていたからだ。
「私はドナヴェル・フォン・ハミルトンここの領主だ」
・・・こいつがエミルさんの叔父って奴か。
するとここは隣の領地に成るのかな。
「あっ、間違えた。ここはまだエミルの領地だったな。・・・まあもうすぐワシの物に成るがな」
・・・・・。
ん、するとこの丘はあの街道の近くの丘か?。
そうするとこの小屋は見た事の有る小屋かも知れない。
こいつらエミルさんを襲う気だ。
遠くで鞭声がする。
かなりの数だ。
「今出発しました」
一人の兵士がドナヴェルに報告した。
「エミルさんを襲うきか!」
俺が怒鳴ると。
「おお、あの薬を嗅いだのに元気ですねえ」
「ヨンセルあんた」
「コインはここに有りますよ。マルクって子は学園でしたが、何より町の奥様の命がご心配ですよね。アルミさん」
「きっさまあー」
「手出ししたら奥様がどうなる・・・」
俺は構わずイバンをストレージから召還した。
「なっ!」
小屋がイバンで吹き飛ぶ間際、ヨンセルはまわりの男達に障壁魔法を掛けていたが、その刹那イバンを拘束していた。
「?、黒太郎」
違う、この黒土蜘蛛は黒太郎じゃ無い!!。
「貴方のワイバーンは宣告御承知。捕らえさせて貰います。これで何も手は無くなりましたね」
・・・・・俺はニヤリと笑ってやった。
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