第5話とらわれるのはよくない。
坊やの寝顔を見てふと思った。
今は王都で宿住まいだけど、やはり定住する所を決めるべきかな。
友達が出来ないし、学問も必要だろうから。
旅は坊やが大きく成ってからすれば良いし。
そんな感じでうつらうつらして、気が付いたら深い眠りについていた。
夢のまた夢の中の様な感じで、辺りは色が有るようで無い様な、空間の広がりが何かふわふわして、自分も一つの気体の様な存在の中、女神様が現れた。
『アルミ貴方は一つ勘違いをしているから言っておくわ。もし緊急時に人をストレージに収納すると、死にはしないけど、一度記憶等はリセットされるから貴方を覚えていないわよ。だから従属DNA機能が付与されるの。わかる?』
「えっ、・・・人を助ける為に収納したら俺の従属に成るって事?」
『そうなるわね。ストレージと言うのは紙芝居の1枚の絵と、考えるのが分かり易いかしら。召還はその紙芝居の絵を巻き戻す感じね。そうすると出る時に衝撃が有るの。だから出る時は緩衝の為に書き換えて出すわ』
「あっ、ワイバーンが俺に向かって出て来なかったのは」
『そう貴方に危害を加えそうな物は排除されて出て来る。細菌もウィルスも脳の記憶でさえも。そもそも時間は無いけど、紙芝居の絵と言う距離は有るのよ。その絵を差し替える事が書き換えって事ね。だから人を入れると貴方を覚えてはいない』
「ストレージに生き物を入れられ無いと言う言い伝えは、そう言った意味が有ったのか」
『それはストレージの品質によるからかもね。つまり命までも排除するので入れられ無いから拒否される。でも細菌やウィルス程度なら死んでも良いと判断して入れられる』
「ストレージってとんでもない機能が有るんですね」
『一種の亜空間航法と捉えるのが良いわよ。今のストレージをもっと高性能にすれば、貴方は違う世界へも行ける。でもそれは私が困るからやらない・・・』
「そりゃそうだ俺が他の世界へ行ったら、何仕出かすか解ったもんじゃ無いからな」
『違う、貴方を失いたく無い。貴方が好きだから』
「・・・俺、パチスロ依存症で、パチスロ中に惨めに死んで、しかも汚いジジイなんだけど?」
『貴方は今世で自分の身も省みず人助けをした。あれは私には衝撃だったのよ。正直貴方は私の遊び道具だったけど、自分の間違いに気付かされたわ。ご免なさいね』
「俺、感謝しか無いよ。二度目の人生貰ったし、勇気も貰った。幸せだよ」
そこで目が醒めた。
宿の主人や憲兵所の人それに職業斡旋ギルドの人達に、マルクを学ばせられて、俺も何かしら働ける方法を聞いてみた処。
ノウスと言う町に身分を問わない学園が有り、鉱山との運送業で常に仕事が有るのが分かった。
王都から北へ七日程、乗り合い馬車でノウスへ着いた。
商業ギルドで借家を見つけた俺は、職業斡旋ギルドで運搬の仕事を請け負った。
3日に1度食糧を運ぶ仕事で、時間も金銭的にも自分には丁度良かったが、他の労働者には儲けが少ない仕事で空いていたから助かった。
町の外でコインを使いゴーレムの馬を生み出す。
競馬も好きでやってたからサラブレッドだわ。
名前はゴルシチにした。
もちろん芦毛だけどね。
荷台は幌付の簡素な物だけど、出来るだけ丈夫で板バネとスプリング付き、百キロ未満と心で唱えてコインの魔力で出す。
1回目はマルクと一緒に鉱山事務所へ向かった。
途中人気の無い所で食糧をストレージにしまい着く手前で出した。
それをみたマルクが不思議な顔をするので、殺菌出来るのだと教えておいた。
ゴーレムは1コインで3日は動くけど、余裕をみて2日に1回使う事にした。
・・・1回五千枚も有るので余裕と言えば余裕。
この街道脇で隠れてコケばいい。
見られ無い様にね。
夢であんな事言ってたからきっと悪ふざけで付与したんだなこれ。
まあ助かってるし、抜けるし。
うおおおー、とか言って街道脇でシコってる自分を想像すると、流石に情け無い。
まあ3日後に普通に街道脇で頑張ったけどね。
そんな先の話はさておき、鉱山の村に着いた。
村に入る前に食糧をストレージから出しておく。
荷物を村の坑夫宿舎に卸してサインを貰い帰路につく。
帰りは荷物が無かったが、傭兵さんを3人乗せた。
傭兵と言っても所謂冒険者の類い。
3等級から特別級(3級から特級と通常は使われる)まで4段階有る。
いわずもがな、3級は魔物と対峙しない採取系。
2級・1級は魔物討伐が主体だけど、特別な薬の採取も行う。これは魔物との遭遇が多い所で採取する為。
特級は軍隊の予備士官扱い。しかしそれなりに歳もいってるが、経験も腕も有る。
この特級を領主間の争いに駆り出すと、領主は改易と成り、拒めば官軍との戦争に成る。
国の戦力においても特級はそれだけの存在だ。
因に王軍はこの特級に近いクラスで構成されているらしい。
俺の馬車に乗って帰るのは、2級二人と3級一人。2級の内一人は女性だ。
すわ三角関係か?、ではない。3人姉弟だった。
女性は18ぐらいだろうか。
美人だ、とても美人だ。
惚れた。
『主ゃ誰でもええんかーい!!』
聞こえ無かった事にしよう。
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