第56話 明かされる理由 前編




「娘がご迷惑をお掛けしたようで、申し訳ございませんでした。」


魔王様と僕が席に着くと、ルナの父が謝罪をした。


「構わん。」


魔王様は特に気にしていないようだ。

メイドさんがワインを注いでくれたグラスを回し、香りを楽しんでいる。


「改めてご挨拶させて頂きます。

猫族の長、ムーンと申します。

猫族一同、魔王御一行様を歓迎致します。」


ムーンが手を叩くと、猫族の女性たちが出てきた。

ブラジルのサンバのような衣装で踊りを披露してくれる。

魔王様は興味がないご様子だ。


「あの、、、1つ聞いてもいいですか?

ルナはどうして結婚を嫌がっているんですか?」


ルナの口から聞けていなかったので、気になっていた。


「娘はある方に憧れていまして、冒険して修行を積み、騎士として仕えたいそうです。

女である娘が騎士などと、、、。

これは早めに結婚させるべきだと思い、友好を結ぶため犬族へ嫁がせることに致しました。」


「なるほど、、、。」


正直引いた。

男尊女卑が過ぎる。


「はあ?

そんなことでルナの結婚無理矢理決めたわけ!!??

あんたもなるほど〜じゃないわよ!」


急に背後で声がした。

振り返るとリーアが立っていた。


「ここまでどうやって!!??」


リーアの力で登って来られる高さじゃなかったはずだ。


「私はテイマーよ!」


そう言いながら上空を指す。

上から突風が吹き、その強さに思わず目を瞑る。

次に目を開けると、大きな鳥がリーアの横にいた。


「ありがとう!助かったわ!

コウ!魚持ってきてあげて!」


「えっ!!??はい!!!」


言われるがまま、テーブルの上からリーアの元へ魚を運ぶ。


「これ、お礼よ!」


鮪のように大きな魚の尾ひれを、リーアが掴む。

鳥の口に運ぼうとすると、鳥は大きく口を開けた。


「うっわ!!!!ライルさん!!!」


鳥の口の中にはグッタリとしたライルが入っていた。


「あら、忘れてたわ。

口に入れて運んでもらったんだった。

この役立たず、自分で登るの無理そうだし、連れてきてあげたのよ。」


僕は急いでライルを鳥の口から引っ張り出した。


「ライルさんが可愛そうです!!!」


リーアはこちらを気にも止めず、鳥に魚をあげて戯れていた。

ライルが哀れすぎる、、、。



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