第54話 父の登場 前編




振り向くとルナと同じ髪色、瞳の色をした男の獣人が立っていた。

ローブもそっくりだ。

背丈は僕と変わらないのに威圧感があるのは、鋭い眼光のせいだろうか。


「お父様、、、。」


「ルナの父さんなのか!!!」


ルナの方が目元が優しいが、たしかに二人はよく似ていた。


「嫁入りの準備はどうした!!!

勝手に村を抜け出し、何をしていた!!!」


ルナの父が怒鳴る。

耳も、肌もピリピリとするような、怒りの満ちた大きな声だった。


「何度も言っていますが、私は結婚する気なんてないです!!!」


父親の前に歩み出て、ルナが自分の気持ちをぶつける。


「もう決まったことだ。

お前の意思など関係ない。」


そんなルナを彼女の父は冷たく突き放した。

実の娘への態度とは思えない。


「ルナを檻へ!!!」


父親が右手をあげ、大きな声で叫ぶと黒い影が3つルナを囲む。

一瞬の内にルナはその影と共に消えた。


「さて、、、お前たちは誰だ。

娘とはどういう関係だ。

返答次第では帰すことは出来ない。」


父親の威圧が僕らへと向く。

思わず魔王様の後ろへ隠れてしまった。

自分だけ隠れるなんて情けない、、、と思っていたらリーアもライルを連れて隠れていた。


「我は魔王だ。」


「俺、勇者!」


「私とコイツはその仲間!」


魔王様とジェイクが堂々と名乗った。

リーアは便乗した。


「魔王?

魔王がこんなとこに来るはずがないだろう。」


出会った時のルナと同じ反応だった。

そうですよね、信じられませんよね、でもこの人マジで魔王様です。


「似た者親子だな。

信じられるようにこの村、滅ぼしてやろうか?」


魔王様が右手の人差し指を立てると、青い炎が浮かんでいた。

炎はどんどん大きくなり、魔王様と同じくらいになった。


「全てを燃やしてやろう。」


それを聞いたジェイクが魔王様の右腕に飛びつく。


「やめろよ!!!

おい、コウ!!!お前も止めろ!!!」


ジェイクが飛びつき、降ろさせようとしてもビクともしないのに?

僕が止められるわけがない。

でも!!!!!


「魔王様!一旦やめましょう!ね?」


一か八か、僕も魔王様の右腕にしがみついて説得を試みた。


「わかった。」


魔王様が手を握ると、一瞬で炎は消えた。


「これでわかっただろ!!!

この人ガチの魔王!!!

マジで村全部燃やされんぞ!!!」


魔王様から離れたジェイクが、ルナの父親に言い放つ。

放心状態だったルナの父親が、その声で我に帰った。


「魔王様!!!大変申し訳ございませんでした!!!」


ルナの父親は片膝を地面に着け、頭を深く下げて魔王様に謝罪した。


「二度と舐めたことを言うなよ。」


そう言ってルナの父親を見下ろす(見下す)魔王様の眼光はまるで氷のようだった。



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