第52話 猫の村 前編




「リーアが結婚させられる!!??」


誘拐事件の事情を話すと、ライルは顎が外れそうなくらい驚いていた。


「けっ、、、結婚、、、?

だっ、、、誰と、、、?」


「犬族の獣人のお坊ちゃんだとよ!」


僕たちが食卓を囲む中、ライルがガクッと膝から崩れ落ちた。


「結婚、、、結婚、、、。」


まだ途中までしか説明していないのだが、もう彼には僕らの声は届かないかもしれない。


「うっるさいわねえ!

結婚させられそうになっただけよ!

第一、私が誰と結婚しようがアンタには関係ないんだから黙ってなさいよ!」


リーアがキレて、ライルに向かって食べ終えた肉の骨を投げつける。


「関係ない、、、関係ないか、、、。」


リーアの言葉はライルに届いてようだが、更に彼を落ち込ませただけだった。


明日の朝、ルナの住む猫族の村へと旅立つことになった。







「おはようございます!皆さん!」


魔王様、リーア、ジェイクは準備万端。

ライルだけは顔色が悪い。


「ライルさん眠れませんでしたかね、、、?」


彼の近くに寝ていたはずのジェイクに、コソッとライルの様子を小声で尋ねる。


「ずっとブツブツ言ってたぞ、、、。

相当ショックだったみたいだ、、、。」


ジェイクも僕にコソコソ耳打ちをしてくれた。

ライルは昨日、眠れぬ夜を過ごしたようだ。





「猫族の村までタクシーで移動するのよね?

一人乗れないんじゃない?」


タクシーは進化したが、5人乗り。

ルナが乗れなかった。


「それなら心配ない。」


ルナが右足を軸にその場でクルクルと回転し始めた。

三周ほど回り終えると、そこには金色の目をした黒猫が1匹座っていた。


「これで乗れるだろう?」


黒猫からはルナの声がした。


「獣人ってそんなこと出来んのかよ!

すげーな!」


ジェイクが大喜びで猫に駆け寄り、抱き上げた。


「皆出来るわけではない。」


ルナは抱き上げられるのは嫌じゃないようで、特に抵抗せずジェイクの腕の中に収まっていた。


「私も抱っこさせて!」


リーアも猫に駆け寄り、頭や背中を撫でている。


「我も出来るが、やろうか?」


僕が二人の姿を羨ましがっていると思ったのか、魔王様が余計な提案をしてきた。


「出来るなら最初から言ってください。

タクシー4人乗りでも良かったじゃないですか。」


「、、、。」


図星だったのか、魔王様は何も返事をしなかった。




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