第49話 攫われた理由 後編



「コウ、聞きたいか?」


隣に座る魔王様が僕の顔を覗き込む。

どうしてみんな僕の意思を確認するんだろう。

やめてほしい。

ここで聞かないと言ったらあの人は、、、。


「聞きたいです!」


食い気味に答えておいた。


「そうか。」


近づいていた足音や鳴き声が徐々に小さくなり、やがて消えて行った。

森は静まり、鳥と虫の鳴き声しか聞こえない。

焚き火のパチパチと言う音が響く。


「これを解いてくれないか。

逃げたりしない、逃げても無駄だろう。」


圧倒的な力の差を見せつけられ、抵抗する気も逃げる気も無くしたようだ。

魔王様チートすぎるもんな。


「おう!待ってろ!」


ジェイクはリーアから離れ、犯人の元へと向かった。

犯人から回収していた短刀で、器用に縄を切っていた。


「まずは、、、、『グゥゥゥゥウ』。」


大きな音が辺りに響く、再び魔物が来たのかとジェイクが警戒する。


「済まない、私の腹の音だ、、、。」


顔が見えなくてもわかるくらいに、犯人は恥ずかしがっていた。


「まずは食えよ!こっち来い!

魔王様椅子もう一脚追加で!!!」


ジェイクは居酒屋でビールを頼むかのように、魔王様に椅子の追加を気軽に頼む。


「知らん。」


魔王様がすぐに断る。


「ケチくさいこと言うなよ!

コウ!お前もコイツ座らせてやりたいよな?」


また僕かよ!!!


「出来れば、、、。お願いできますかね?」


チート級の力を見せつけられた後だ、魔王様の顔色を伺ってしまう。


「良いぞ。」


椅子は秒で出来上がった。


「ありがたい。」


犯人が座ると、ジェイクが食べ物や飲み物をどんどん渡す。


「それで?

なんで私のこと攫ったわけ?」


犯人が話し始める前に、リーアが本題に入る。

当事者だ、気になるだろう。


「まずはこれを見てほしい。」


そう言って犯人がローブを脱ぎ、顔を僕らに見せてくれた。


「まじかよ、、、。」


「えっ!!??」


「、、、私じゃん、、、。」


犯人の素顔はリーアにソックリだった。

黒髪のショートカット、目は金色だったが、顔はリーアと瓜二つ。

もう一つ彼女と違うところは、、、。


「お前、獣人だったのか。」


彼女の頭部にはフサフサの毛が生えた、猫のような耳がついていた。


「私は獣人、猫族のルナと言う。

猫族の長の娘だ。

私の代わりに結婚をしてもらおうと思い、攫った。」


「「「結婚!!??」」」


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