第48話 攫われた理由



「お?目覚めたか?」


焚き火を起こし、魔王様作のダイニングセットで夕飯を食べている間に犯人が目を覚ました。


「私をどうするつもりだ。殺すのか?」


手足を縛られている犯人は自分が抵抗出来ないことを悟ったのだろう。


「殺す!!??

殺すつもりなんてないから手当てしてあんだろ?」


ジェイクが自分の額をコンコンと指で突き、犯人が額を意識するよう促した。

犯人はチラリと目線を上に向ける。

包帯が見えたかどうかはわからない。


「また暴れたら面倒だから縛っただけだ。」


テーブルには大きな葉を皿にして肉や魚、果実やパンが並んでいる。

肉とパンは僕が持参した物、果実や魚は川や森でジェイクが調達してくれた。

ジェイクはパンに肉を挟むと、犯人へと差し出した。


「食べながら話そうぜ!!!」


犯人は首をふいっと横へ背ける。


「いらん。

敵から食料は貰わん。」


「ああ!そうかよ!!!」


イラッとした顔をしたジェイクは持っていたパンにかぶりついた。


「じゃあ、あげませんよーだ!!!」


まるで子どものようだった。


「アンタの目的は?

私に使い道があったから殺さなかったんでしょ?」


今度はリーアが犯人に話しかけた。

自分が殺されず、攫われた理由が知りたかったようだ。


「お前たちに教える必要はない。」


犯人は話そうとしなかった。


「むっかつく〜!!!

コウ、アンタは知りたいわよね?」


急に僕に話を振られ、驚いて持っていた水を溢しそうになった。


「僕ですか!!??

まあ、多少は気になりますけど、、、。」


「だって!!!魔王様!!!」


急に話を振られても僕みたいに驚いたりはせず、魔王様はゆっくりと水を口に運んでいた。


「おい、お前。

自分で吐いた方が賢明だぞ。

無理矢理吐かせることも可能だが、何もかもを知られたくはないだろう?」


僕に向けられた言葉ではないのにゾクっとしてしまう。

知られたくないことを無理矢理言わせる魔法もあるのか、、、。」


「ハッタリだな。

そんな魔法、魔王くらいしか使えん。」


「我がその魔王だが?」


「魔王がこんなところに居るわけがない!

嘘をつくな!」


普通の人だったらそんな簡単に信じられないと思うが、現に魔王はここにいるのだ。


「ほう、我が嘘をついたと申すのか?

面白い、、、。」


あ、まずいやつだ。

本能がそう告げる。


「お前が生きようが、死のうが、我には関係ない、どうでも良い。」


森の彼方此方から鳴き声や、足音が響いてきた。

それらは徐々にこちらに近づいている。


「お前と、我とではどんなに差があるか見せてやろうか?」


木々が倒れる音、何かが飛んでくる音、禍々しい雰囲気が森に流れる。


「聞こえるか?

同族たちが集まる音だ。」


ジェイクが立ち上がり、リーアを引き寄せる。

二人の顔が強張る。


「こんな数の魔物をテイムするなんて、、、。」


テイマーのリーアにはことの重大さが十分伝わっているようだ。

ジェイクにしがみついている。


「次は木々を薙ぎ倒そうか?

川を氾濫させようか?

火山を噴火させようか?

地面を揺らすことも、暴風雨を呼ぶことさえ可能だが?

それとも、あの星を降らせようか?」


ニヤリと笑う魔王様の顔は邪悪そのものだった。

この人は本当に魔王で、一人の人間なんて虫ケラくらいにしか思っていないのだろう。

今更ながらに怖くなった。


「、、、本物の魔王なのだな、、、。」


ここまできて犯人も魔王様の言うことを信じんたようだ。


「自分から話す。

魔法で全てを吐かせるのはやめてくれ。」


犯人は観念したようだ。


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