第47話 戦闘開始 後編


二人の戦闘が始まって、しばらくは同じ攻撃が続いていたが急に戦況が変わった。


「ぐはっっっ!!!!!」


犯人が短刀を構え、ジェイクが受け止める。

そこまでは同じだったのだが、犯人がジェイクの鳩尾に蹴りを入れた。

ジェイクのお腹に犯人の足がめり込む。


「いつまでも同じ攻撃が続くと思うなよ?」


鳩尾を抑え、四つ這いに倒れ込むジェイクを犯人が見下ろしていた。


「終わりにしよう。」


そう言うと、右手に持った短刀を高く上げ、ジェイク目掛けて振り下ろす。


「ジェイクさん!!!!」


もうダメだ、、、。

そう思った時、ジェイクが犯人目掛けて砂を投げつけた。


「何っ!!??」


砂は犯人の顔を覆い、視界を奪う。


「勇者様を、、、。」


ジェイクが立ち上がり、犯人の両手首を掴む。

そのまま地面へと押し倒す。


「舐めんなよ!!!!!」


犯人に馬乗りとなったジェイクは、上体を逸らした。

そしてそのまま、、、渾身の頭突きを犯人の頭にお見舞いする。


「うっわ、、、。」


あまりにも痛そうな姿に声が漏れる。

犯人は額から流血していた。

一方のジェイクは少し額が赤くなっているだけだった。


「よしっ!!!!」


勝利を喜び、ジェイクがガッツポーズをしている。


「なんか紐とかあるか?

こいつ縛ろうぜ!!!!」


元気に手を振りながら、僕らに近づいてくる。

無邪気な顔とは裏腹に、物騒な言葉を吐きながら。


「ジェイクさん!!!

額は大丈夫なんですか?」


荷物を漁り、紐を探すジェイクに声をかける。


「俺小さい時から石頭なんだよ!

これくらい余裕!余裕!

岩割ったこともあるんだぜ!」


さすが勇者に選ばれるだけある、規格外の体の強さだ。

今度は犯人のほうが心配になってきた。


「ジェイクさんが倒れた時は焦りましたね、、、。」


一緒に観戦していた魔王様に声を掛けると、不思議そうな顔をしていた。


「コウ、見えていなかったのか?」


「コウ!お前気づいてなかったのかよ!」


魔王様、ジェイク、両名から意味のわからない言葉が返ってきた。


「手出すなって言ってんのによー。」


荷物から紐を見つけ、犯人を縛り上げながらジェイクがぶつぶつ言っていた。


「リーア!!!お前!!!

こいつのローブの中に蛇入れたろ!!!」


犯人のローブの中から蛇が1匹出てきた。


「あら、バレてた?

毒のある蛇をテイムしたのよ。

ジェイクが負けそうになったら噛ませようとと思って。」


ジェイク以上に物騒なことをしている人が居ることに、僕だけが気づいていなかった。







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