第46話 戦闘開始 前編




犯人が月明かりに照らされる。

真っ黒なローブは口元も隠していて、素顔を見ることは出来ない。


「そいつをこちらへ返せ。」


そう言うと、犯人はリーアに向かって手を伸ばし、少しずつ距離を詰めていく。

互いに手を伸ばせば届きそうな距離まで迫る。


「返す?

何言ってんだ?

リーアは俺らの仲間だ。」


二人の間に剣を担いだジェイクが入り込んだ。

ジェイクと並ぶと、犯人は小柄に見えた。

僕よりも背が低いかもしれない。

この隙にリーアは犯人と距離を取っていた。


「返す気がないのなら、力づくで奪うが?」


犯人の言葉に、ジェイクの目つきが変わった。

殺気と、怒りが篭っているように見えた。


「やれるもんなら、やってみろよ!!!」


ジェイクが剣を振り上げ、犯人に斬りかかろうとする。

犯人はふわりとジャンプをして、攻撃を躱す。

手元にはいつの間にか、2対の短刀が握られていた。

ジェイクの剣は空を切り、地面を抉った。


「加勢するわ!!!」


リーアがテイムをしようとする。


「すんな!!!

こいつは俺の獲物だ!!!」


ジェイクが今度はリーアに剣先を向ける。

今にも飛びかかってきそうな気迫に、リーアが後退りをする。


「よそ見してる暇はないぞ!!!」


犯人はこのチャンスを見逃そうとはしなかった。

胸の前で短刀を十字に構え、ジェイクに斬りかかろう飛び上がる。

ジェイクの頭よりも高く飛んでいた。


「人が話してんのに攻撃してくんな!!!」


ジェイクは頭上の短刀を剣で受け止め、犯人を弾いた。

筋肉の塊のパワーは伊達じゃない。

犯人は後方へと飛んでいったが、綺麗に着地していた。

猫のような身のこなしだ。


「少しは出来るようだな。」


犯人は立ち上がり、再び短刀を胸の前で構える。


「お前もな!!!」


ジェイクも剣を構え、戦闘態勢を解かない。

口元はニヤリと笑っていて、この戦いを楽しんでいるようだった。


二人は同時に飛び出し、剣を交える。

ジェイクが何度弾き飛ばしても、犯人は木の幹に着地してすぐに攻撃を仕掛けてくる。

ジャンプ力を生み出している脚力は強く、足跡が残っている木もあった。


「すごい、、、。」


「面白いか?

もっと明かりを増やそうか?」


魔王様の言葉に辺りを見渡す。

火の玉のようなものが無数に浮かび、二人を照らしていた。


「なんか見やすいと思った!!!

何してるんですか!!!」


「コウが見やすいかと、、、いや、小僧が戦いやすいかと思ってな。」


魔王様が言い直したのを聞き逃さなかった。


「嘘ですね。

、、、ジェイクさんが戦いやすいならいっか!!!」


僕が喜んだと思ったのか、魔王様はニコニコしていた。




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