第45話 追跡 後編



「夜通し走りっぱなしで狼たちは大丈夫ですか?」


「コウ、こいつらは狼の姿はしていても魔獣だぞ?」


「動物じゃないんですか!!??」


言われてみれば、こんな大きな狼がいるわけがないことに気がついた。

魔獣ならば納得だ。


「食物を糧にすることも出来るが、魔力でも可能だ。

我の魔力を与えている。

水は首に樽をぶら下げた。

道中癒しの魔法も使っているが、、、これはあまり得意じゃない。」


「魔王様にも得意不得意があるのですね。」


なんでも出来るスーパー魔王だと思っていた。


「聖なる魔法と呼ばれる光の魔法は不得意だ。

闇の魔法ならば我に敵うものは居ない。」


「ああ、魔王様って闇属性っぽいですもんね。」




馬車は走り続け、やがて陽が落ち、夜になった。

こんなに走っても出られないなんてこの森、広大すぎる、、、。


「停まったようだぞ。」


狼たちが走ることをやめ、僕と魔王様は馬車から降りた。

ついにこの時が来た。

やっとタクシーとリーアを奪還することが出来る。


「ここからはお前の仕事だろう?」


魔王様の視線の先には、馬車から降りてきたジェイクの姿があった。

腰元の鞘からは剣が抜かれていた。


「ああ。

サンキューな魔王様。

キッチリ仕事してくるぜ。」


「コウ、お前は我のそばを離れるなよ。」


魔王様のそばにグッと引き寄せられ、そのままマントの中に入れられた。

大柄な魔王様のマントの中に、僕はスッポリと入れてしまう。


「お前だけは守り抜く、安心しろ。」


美形にこんな台詞を吐かれたら、リーアだったらぶっ倒れていたかもしれない。


「ありがとうございます!!!」


僕は武道の心得もないし、武器も持ってない、運動神経も良くない。

魔王様に守ってもらえば安心安全だ!!!

マントの隙間から少しだけ外の様子を見ることにした。


ジェイクが歩き出し、魔王様と僕がついて行く。


「居た!!!」


タクシーのそばにリーアが立っていた。

目立った外傷は無さそうだが、手には鎖の長い手錠が掛けられていた。


「リーア!!!」


すぐさまジェイクが飛び出し、手錠の鎖に切りかかる。

ジェイクの一振りで、鎖は糸のように切れた。


「ジェイク!!!」


仲間たちの感動の再会だ。


「遅い!!!遅すぎる!!!

何やってんのよバカ!!!」


リーアのビンタ(フルスイング)がジェイクの頬に命中した。


「何すんだよ!!!

助けに来てやったのに!!!」


「助けに来んのが遅いのよ!!!」


そのまま口喧嘩が始まってしまった。

僕が想像していた感動の再会は見られなかった。


「お前、、、そいつの仲間か?」


ジェイクと言い争うリーアの背後には、黒いローブを来た人物が立っていた。


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