第44話 追跡 前編



「今すぐリーア取り返そうぜ!!!」


腕まくりをして、やる気充分なジェイク。

今にもタクシーに飛び乗りそうだった。

ジェイクの熱さで気温が上がりそうな勢いだ。


「無理だな。」


反対に魔王様はクールで冷静だ。


「はあ!!??

なんでだよ!!!!」


魔王様に反対されるとは思っていなかったのだろう。

今度は魔王様に飛び掛かりそうになっている。


「アレに攻撃は効かない。」


「あっ、、、。」


タクシーは外部からの攻撃は受けない。

普段は便利で、安心安全の機能だが、相手に使われるとここまで厄介だとは、、、。


「どうすればいいんだよー!!!」


ジェイクが頭を抱えて、自分の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱す。


「そのうち停まるだろ。

気づかれては厄介だ、少し離れて追いかけるぞ。」


魔王様が手を握り、開くと、笛が握られていた。

狼の時は銀だったが、今度は木製のようだ。

魔王様が笛を吹いても音は聞こえなかったが、一羽の烏が飛んできた。


「これをやる。

リスは食べるなよ?」


魔王様が昨日の夕食の残りの肉を手渡すと、烏はタクシーの元へと飛び立った。

烏が隣に乗ると、リスが一瞬ビクッと驚いていた。

が、自分への危害がないとわかるとそのまま座っていた。


「魔王様もテイマーなのか?」


一連の様子を見ていたジェイクが質問をぶつけた。


「これはテイムじゃない。

元々指摘している動物や魔物を呼び出しているだけだ。」


「だからリーアとやり方が違うのか!」


ジェイクに意外と勉強熱心な一面もあることに驚いた。


「夜には停まりますかね?」


「夜に停まる可能性は高いな。

昨夜も停まっていたのだろう、でなければ追いつけない。」


「うぉぉぉおおお!!!

早く停まれ!!!」


ジェイクは興奮が抑えられないようだ。

僕もなんだかワクワクしてきた。


ライルはまだ夢の中だ。



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