第43話 脱出大作戦 後編



結局夜までタクシーが止まることはなかった。

ずっと大人しくしていると、タクシーが下降した。

逃げるチャンスが巡ってきた。


「降りろ。」


タクシーから降ろされ、逃げようとすると、、、ガチャン。


「何これ!!!!!」


「逃げられては困る。」


私の手には手錠が掛けられた。

鎖は5メートルくらいはありそう。

魔物をテイムして壊して逃げてやる!!!


「魔法で逃げられると思うなよ。

この手錠は魔道具、魔法は封じられる。

変な動きがあれば、すぐに縮むようにもなっているからな。」


「、、、クッソ!!!!!」


テイムも魔法の一種。

さっきから試しているけど、魔物を呼ぶことができない。

考えろ、考えろ、私。

どこに行くのかも、いつ殺されるかもわからない。

どうしたらこいつから逃げられる。


「ここで待て。」


そう言って私のそばから消えた。

この間に出来ることはないかと考えたが、思いつかない。


「テイムさえ出来れば!!!」


とりあえず服を少し破り、その場に隠した。

魔王様もいるし、運が良ければ見つけてもらえる可能性がある。


数分で真っ黒野郎は戻ってきた。

手には果実と、水筒が握られていた。

一人で食べるには多い気がする。

私の分?それとも数日篭る分?


「お前の分だ。食え。」


その場に焚き火が出来上がり、果実と水が渡された。


「ありがとう、、、。」


毒が入ってる可能性も考えたが、殺すつもりなら銃で撃ってるだろう。

そんな周りくどいことはしないんじゃない?と思い、果実から口にする。

本当は空腹に耐えきれなかっただけ、なんだけど。


「甘い、、、。」


青い桃のような果実は皮も柔らかく、皮ごと食べることが出来た。

一口齧るだけで果肉から果汁が溢れ出す。

果肉と果汁は透明で甘くて何個でも食べられそうな味だった。


私が果実を食べ終えると、タクシーの中に入れられた。

真っ黒野郎も運転席に座る。

手錠はつけられたままだった。


「妙なことはするなよ?」


そう言って真っ黒野郎は眠りについた。

逃げるチャンス、方法を考えていた私もいつの間にか眠りについてしまった。






「おい、起きろ。

出発するぞ。」


真っ黒野郎の声で目が覚めた。


「これ、外してくれない?

飛ぶタクシーからは逃げられないんだから。

手が痛いのよ。」


夜通し手錠をつけられ、手には赤く跡がついていた。


「、、、いいだろう。」


銃口を向けられながら手錠が外される。

逃げる事はできない。

それはわかってる。

ただ、私はこの時を待っていた。


「出るぞ。」


タクシーが出発して、走り出し、飛ぶまでのほんの数秒。

私はリスをテイムした。

タクシーの上からコツっと小さい音がした。

上に乗ったのだろう。


タクシーは透明になる。

でも、上に乗ったリスは?

攻撃の意思はないし、ただ乗っているだけ。

透明になっていなければ、空飛ぶリスが完成する。


お願い!!!!気づいて!!!!


仲間たちからの助けをただ静かに待った。



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