第41話 空飛ぶリス 後編



「今朝羨ましそうに見ていただろう?」


そう言って魔王様は僕のために、馬車の中に繭を作り出した。


「2段ベッドだな!!!」


上部の繭に僕と魔王様、その下でライルとジェイクが寝ることになった。

ジェイクは寝袋を用意していたが、ライルはそのまま寝ようとしていた。


「リーアが見つかったらすぐに飛び起きられるようにしたい。

仮眠程度で十分だ。」


「ほう?我が寝床を作ってやったのに寝ないと言うのか?」


この発言が癇に障った魔王様が指をパチン!と鳴らすと、ライルは一瞬で眠りに落ちた。


「大人しく寝ろ。」


ジェイクがズルズルとライルを引きずり、寝袋に入れてあげていた。

あんなに辛辣な態度を取られていたのに、、、優しい!!!


「これでヨシ!!!」


寝袋に入れられたライルは、縄でぐるぐるに縛られていた。


「こいつ寝相悪りぃんだよ。

手足縛らねぇと、蹴られたりするからな!

寝袋に入ってると縛りやすいな!」


優しさからの行動ではなかったらしい、、、。


僕らはそのまま眠りについた。

繭は僕と魔王様が寝てもスペースが余っていたので、快適に寝られた。

狼に合わせて馬車(狼車?)も大きめに作られていて助かった。






「コウ、コウ、起きろ。」


魔王様の声で起こされた時、辺りはもう明るかった。

葉っぱの匂いや、土の匂いがする。

まだ森の中を走っているようだ。

繭の寝心地は最高で、疲れた体との相性はバツグン。

朝までぐっすり眠りにつくことができた。


「コウ、あれを見ろ。」


魔王様が上を指さす。

幌馬車の上部は切り取られて、穴が開いていた。

その隙間から見えたのは、、、。


「リス、、、ですか!!??」


1匹のリスだった。

ただのリスだったら僕はこんなにも驚かなかっただろう。


「飛んでる、、、。」


リスが空を飛んでいた。

しかも、座ってドングリを食べながら。


「この世界ではリスが座りながら飛ぶことは珍しいことじゃない、、、とかですか?」


「リスは飛ばぬ。」


僕の疑問はすぐに打ち砕かれた。


「タクシーの上に乗っているのだろう。」


「なるほど!!!」


あの下にタクシーがあるのか、、、とマジマジと見ていたら足元の方からジェイクが顔を出した。


「リーア見つかったか!!??

生きてたか!!??」


「あれを小娘が使役しているのならば、生きているだろうな。」


僕らがタクシーとリーアを追いかけてから、初めてリーアの生存が確認された。


はしゃぐ僕と、ジェイク、それを見守る魔王様。

魔王様に眠らされたライルはまだ夢の中だった。


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