第37話 僕の大切な人 前編



「この狼たちは魔王様のペットですか?」


狼の走るスピードにも慣れ、魔王様と会話する余裕も生まれた。


「森で拾い、育てた。

今は別の者が管理している。

ここからそう遠くない場所だ。

こいつらが来れない距離であれば、他の動物をテイムしていた。」


本来は魔法使い、テイマーのように得意分野は分かれているらしい。

が、さすが魔王様!関係なし!


「匂いを辿れているということは、窓が開いているか、車内から降りたのだろう。

小娘は生きている可能性が高いな。」


「ジェイクさーーーん!!!

ライルさーーーん!!!

リーアさん生きてる可能性が高いみたいですよーーー!!!」


少し後ろを走っている二人に大声で伝える。

後ろを振り返って二人の様子を見た。


「おい!!!俺にベタベタと触るな!!!」


「触らなかったら落ちるだろ!!!」


「お前なんて落ちろ!!!走れ!!!馬鹿!!!」


喧嘩をしている二人に僕の声は届いていなさそうだった。

関わりたくないので、何事も無かったように前を向いた。




走り出してから2時間は経った頃、狼たちが止まった。

そばには川があるのか、水が流れる音がする。

狼たちは地面や、空中の匂いを嗅いでいる。


「ワォ!!!」


僕らの乗っている狼が1つ鳴いた。


「小娘は一度ここで降りたようだ。

川で水でも汲んだのだろう。」


狼と意思疎通してる、、、。

もうこんなことでは驚かない。

この人が何をしても不思議じゃない。


「コウ、一度水分補給をしよう。

こいつらに餌も与えねばな。」


「そうですね。」


僕と魔王様が狼から降りた。


「そんな!!!悠長なことを言ってる場合ではないです!!!

早く迎えに行かねばリーアが、、、。」


ライルは休憩に反対のようだった。


「こいつらが走れなくなったら小娘の救出は不可能になるが?」


魔王様がライルを睨む。


「、、、そうですね。

すいません、冷静さを失っていました、、、。」


ジェイクとライルも狼から降りて、水分補給をした。

魔王様は狼のために狩りに出た。

あの万能魔王様のことだ、すぐ帰ってくるんだろう。


「ライルさんは仲間思いなんですね。

誰よりもリーアさんを心配してますよね。」


「いや?

こいつはどうでも良いですよ?

攫われてもいいし、何をされても構わないですよ?」


全然仲間思いじゃなかった、、、、、。



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