第36話 捜索開始 後編



「どうやって!!!

どうやって見つけるんですか!!??」


「リーア見つけられんのか!!??」


ライル、ジェイクが大きな声を出しながら近づいてくる。

本気でリーアを心配しているのだろう。

必死さが伝わってくる。


「お前、小娘の荷物を持っているのだろう?

服を寄越せ。」


ライルが言われるがまま自分のリュックを漁り、リーアの服を引っ張り出す。

昨日リーアが着ていたものだ。


「これをどうするんですか?」


少し不安そうな顔でライルが魔王様を見ていた。


「黙って、見ていろ。」


魔王様が右手を握り、すぐに開く。

そこには銀色の細い笛があった。

子供の頃水族館で見たイルカショーを思い出す。

あの時飼育員さんが使っていた物に似ていた。


「ピーーーーー!!!!!」


甲高い笛の音が辺りに響く。


「数分待て。

すぐに捜索に向かえるようにしろ。」


僕らは急いで身支度を整える。

1分でも、1秒でも早くリーアさんの元へ向かえるように。


「、、、来たか。」


あれから5分くらい経った。

僕らの準備が整った頃、魔王様が呟いた。


木々が揺れ、地面も揺れる。

何かがこちらに向かっていた。


「アオォォォォォォォオン!!!!!」


現れたのは銀色の毛をした狼だった。

黒い馬具のような物が、競走馬のようにつけられている。

人が乗れるようになっているのだ。

魔王様の2倍はありそうな巨大な狼。

が、2頭!!??


「この匂いを辿れ。」


リーアの服を狼が嗅ぐ。


「タクシーに乗っているリーアの匂いなんてたどれるんですか!!??」


「いや、無理だな。」


言っている意味がわからなかった。


「じゃあ、どうして!!??」


「小娘が生きていれば、食事、水浴び、排泄、タクシーから出る機会があるだろう。

その匂いを辿る。

もしタクシーの窓が開いていれば、見つけ出せる確率は更に上がるだろう。」


確かに!!!

リーアも、犯人も、車内から一度も出ないことはありえなさそうだ。


「すっげえええ!!!

さすが魔王って感じだな!!!」


「それならリーアを見つけられるかもしれないですね!!!」


ライルとジェイクも嬉しそうだ。


「行くぞ。」


そう言うと、魔王様が僕を脇に抱えた。

そのままジャンプし、狼の背に飛び乗った。


「わあ!!??」


あまりの高さに驚いてしまう。

体感で地面までは5メートルくらいはありそうだ。


「怖いか?

振り落とされるなよ?」


僕の後ろで手綱を持つ魔王様。

抱きしめられているような姿勢が少し恥ずかしい。

だが、すっごく安全そう!!!

遠慮なく魔王様の腕を持たせて頂く。


「お前たちも乗れ!!!

、、、乗馬は出来るのか?」


「僕は出来ますよ。」


ライルが狼に飛び乗る。

狼も乗りやすいように、姿勢を低くしてくれていた。


「早く乗れ!!!」


ジェイクがチラッと僕の方を見て、ライルの前に乗ろうとする。


「お前は後ろだ!!!」


ライルの鋭い蹴りが、ジェイクに炸裂していた。



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