第31話 魔王の思い 前編



今僕は、異世界を堪能していた。

これまでナギリス国内、魔王領しか行ったことがなかったことを後悔した。


「えっ!あれってドラゴンですか!!??

飛んでる!!!」


「あの木燃えてません!!??」


「人魚だ!!!」


見たことのない魔物、景色についついはしゃいでしまった。


「ドラゴン取ってくるか?

剥製にしてやろうか?」


「あの木が欲しいのか?

引っこ抜いてお前の自宅に植えてやろう。」


「人魚を捕まえて水槽で買うか?

用意してやろう。」


はしゃぐ僕を見て、横で魔王様がすぐにプレゼントしようとしてくる。


「あ!それは大丈夫です!」


魔王様のご好意は毎回お断りしていた。


「後ろのやつらが静かだと、お前とふたり旅のようで楽しいな。」


ふふっと笑う魔王様。

美形すぎて見惚れてしまう。

長すぎる足であぐらをかくので、少し運転席まではみ出していたが許せた。


「、、、ん?

本当に静かですね?」


3人の静けさにミラーで後部座席を確認した。


「みなさん!!??大丈夫ですか!!??」


運転席の後ろに座るジェイクは、窓から半身を乗り出している。

体操座りでうずくまるリーア。

リーアの背中をさすっているが、口にハンカチを当て天井から目を離さないライル。


「「「き、、、気持ち悪い、、、。」」」


僕がおおはしゃぎしている間に、3人は車酔いしていた。






「みなさんが酔っているのに気づかず、すいませんでした!!!」


河原を見つけ、着陸した。

横になったり、顔を洗ったりして酔いを覚まそうとする3人に謝罪した。


「気にすんな、、、。

少し休めば良くなる、、、。」


座り込むジェイクが、片手を上げながら返事をしてくれた。


「国外に出たのは初めてなんですよね。

色々見たくなる気持ちはわかります。」


この世界に興奮した僕は、ハンドルを切ってあちこち見ていたらしい。

タクシーはまるでコーヒーカップ状態。

3人が酔うのも無理はない。


「魔王様は平気ですか?」


「魔法でなんとでもなる、気にせず楽しめ。」


ニコニコしながら僕の頭を撫でていた。

2メートル以上は確実にある魔王様から見たら、170ちょいの僕は小さく見えるのだろう。

目つきは悪いし、顔も男らしいほう、今までされたことのない新鮮な対応だ。


「ていうか、、、そんな魔法あるなら皆さんにも掛けてあげて下さいよ!!!」


「ああ、良いぞ。」


魔王様が指をパチンと鳴らした。


「お?治った!治ったぞ!コウ!」


「指を鳴らすだけで魔法を、、、すごい、、、。」


「魔王様が助けてくださったんですかあ〜?

ありがとうございますう!」


感動して走り回るジェイク、考え込むライル、魔王様にベタベタするリーア。

騒がしい3人が戻ってきた!!!


どうして魔王様が僕にここまで良くしてくれるのかわからないが、ラッキー!



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