第30話 いざ!出発! 後編



「俺がコウの隣に乗るんだ!」


「我がコウの隣に決まっているだろう。

お前らと一緒に窮屈に座るなど、ありえん。」


「はい!はーい!私魔王様の隣がいい!

なんなら膝の上でもいい!」


「リーア、魔王様は良いが、ジェイクの隣だけは断固拒否する!!!」




誰がどこに座るかの争いが勃発したのだ。

助手席に座りたいジェイク、魔王様。

魔王様の横に座りたいリーアと、ジェイクの隣だけは嫌なライル。


「ごちゃごちゃとうるさいやつらだ。

コウ、こいつらは置いていくぞ。」


ついに魔王様が3人を置いて行こうと言い出した。


「嫌だね!絶対にタクシーに乗るぜ!」


ジェイクと魔王様はバチバチだ。

一触即発!戦闘開始!の雰囲気が漂う。

その時突然、ジェイクの頭からパーン!と快音が響いた。


「魔王様に無礼な口の聞き方をするな!!!」


いつの間にか現れた騎士団長が、ジェイクの頭を叩いたのだ。

後方には大勢の騎士が馬に乗って進んで来るのが見えた。


「お前の叫び声が聞こえたから来てみれば、、、。

魔王陛下、この者の無礼をお許しください。」


騎士団長が魔王様に深々と頭を下げる。


「良い。

お前に免じて許そう。」


自分が気に入った人には甘いんだよな、この魔王様は。


「痛ってえー、、、。

お!王様じゃん!」


大勢の騎士の中、馬車から国王様が降りてきた。


「みんなおはよー!」


手を振りながらの軽すぎる挨拶だった。


「陛下!!!

魔王陛下もいっらしゃることをお忘れなく!!!

いつも、いつも、振る舞いや言葉遣いには気を配って頂きたいと言っているのに!!!」


国王様がこっぴどく説教された。

怒られすぎて涙目になっている。

この国で一番偉いのは騎士団長なんじゃないかって思えてきた、、、。




結局、助手席には魔王様が座った。

後部座席ではリーアを真ん中にして座ることで落ち着いたらしい。


「魔王陛下、お気をつけて。

勇者一行、人間と魔族の未来はお前たちに掛かっている、頼んだぞ。

コウ!運転よろしく!」


国王様からの激励を受けながら、僕たちは空へと飛び上がった。

方角は魔王様が都度指示してくれるらしい。

正確な位置がわからないので、今回ナビは使えない。


「ひゃっほー!

何回乗っても面白いな!これ!」


「ジェイク!暴れるな!落ちたらどうする!」


「魔王様ぁ!

リーア怖いですぅ!」


後部座席が騒がしいが、僕と魔王様はシカトしてどんどん進んだ。





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