第29話 いざ!出発! 前編



「おはよう!コウ!」


翌朝荷物をトランクに入れていると、勇者一行が到着した。


それぞれ準備した荷物を持っていた。

ライルは大きなリュックサックの上に丸めた寝袋をつけていた。

リーアは外国の学生鞄のような形の茶色い革のカバンだけ。

ジェイクはナップサックのよう革で出来た茶色い袋ひとつだけだった。


「リーアさん、ジェイクさん、荷物少なすぎませんか?」


ジェイクは予想通りだったが、リーアは女性なのでもっと荷物が多いと思っていた。

身だしなみに気を使うタイプに見える。


「化粧品とか、布団とか、洋服とか、ほとんどライルが持ってくれてるの。

後方支援系の自分が持っている方が、いざという時動きやすいだろうって。

私は貴重品と下着くらいしか自分で持ってないわ。」


何も考えてなさそうな3人だが、パーティーの中で役割分担していることに感心する。

詳しく聞いてみると、魔法使いのライルは後方で魔法、ジェイクは腰に下げた剣で、リーアはベルトで足につけた短剣と銃で戦闘をするらしい。

数が多いときにはリーアが魔物や動物をテイムして協力してもらう。

ジェイクが最前線、リーアはジェイクをすり抜けてきた敵を倒すことにしてるのだと聞いた。


「準備は出来たか?」


4人で話しに夢中になっていると、いつの間にか魔王様が到着していた。

魔法で来たのだろう、気が付かなかった。


「魔王様のお荷物もトランクに入れましょうか?」


そう言って預かろうとしたが、魔王様は何も持っていなかった。


「荷物などない。

寝床、食料、衣服、魔法でどうとでもなる。」


さすが魔族の王。

なんでも魔法で解決できるようだ。


「あれ?じゃあ魔法で妹さんのところまで行けるんじゃないですか?」


魔王城からここまで一瞬で来られるのだから、妹のところまでも一瞬なのではと思い、魔王様に疑問をぶつける。


「昨日試した。

だが、妹の城には我を拒絶する魔法が掛けられているようだ。

見知った場所に飛ぶのは容易いが、見知らぬ場所に飛ぶのは少しコツがいる。

拒絶されると場所がよくわからん。」


魔法も万能って訳じゃあないらしい。

向こうも魔法を使うのだ、一筋縄じゃいかないのか、、、。


「じゃあ場所わかんねえの?

どうやって行くんだ?」


「大臣に調べさせ、大体の場所は把握した。」


この人の部下って大変そう、、、。

急に人間と平和条約結ぶから妹に会いに行く!居場所を調べろ!って言われたのだろう、気の毒すぎる。


「では、皆さんご乗車ください。」


この一言で争いが起きるなど思ってもみなかった。




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