第26話 レベルアップ 後編


「レベルアップと言えば、進化!

お前モンスター育てるゲームとかやったことあるだろ?」


子どもの頃に夢中で遊んでいたゲームを思い出した。

モンスターを戦わせ、経験値を貰うことでモンスターがレベルアップするゲームだ。

レベルアップしたモンスターは進化して、姿形が変わったりする。

新しい技を覚えさせたりして、より強い相手と戦うのが楽しかった。


「で、タクシーに火でも吹かせてやるか!って来てやったわけよ。」


「いや、それはいらない機能だろ。」


「なんでだよ!!!火だぞ!!!火!!!

かっこいいだろ?」


神が実際に火を吹いて見せた。

こんなことも出来るのかと感心してしまう。

まあ、もうコイツが何をしてきても驚きはしない。


「じゃあやっぱり5人乗りにするか?

ちょっと横幅広くなる程度だけど。」


「する!!!

5人乗れるようにしてくれ!!!」


5人乗りになればリーアを道連れに出来る!!!

もうこの際僕が連行されるのは諦めるしか無さそうだ。

しかし、リーアだけ逃れるのがどうしても許せない。


「よっしゃ!」


そう言って神はスマホを懐から取りだした。

何やらポチポチと打ち込んでいる。


「進化完了!!!」


「え?それだけ?」


「今は神様もこういう時代なのよ!

スマホ1つで何でも出来んだよ。」


神様も進化しているらしい。


「指パッチンとかでも出来るんだけど。」


ただミーハーなだけっぽい。


「5人乗りになってるはずだから後で確認しとけよ!

なんか質問ある?」


「俺自身の進化は?」


あの日読んだ説明を思い出すと、俺も経験値が溜まっているはずなのだ。


「素早さと攻撃力を2上げておいた!

HPは10上げておいたぞ!

大サービスだ!」


「いっらねぇぇぇぇえ!!!」


「50メートル走ってみろよ!

0.3秒くらいは早くなってんぞ!

握力もちょい上がってる!」


「大人はな!50メートル走する機会なんて無いんだよ!」


タクシーみたいに大幅に進化したかった!

魔法が使えるようになるとかが良かった!


「HPは嬉しいだろ?

疲れにくくなるし、お腹減りにくくなる!

ちょいな!」


人差し指と親指でちょいを示す姿が本当にムカつく。

自分の顔なのが更にイライラを増幅させる。


「じゃあな!

またレベルアップしたら来てやるよ!」


手を振る神の姿が煙になり、空気に混ざるように少しずつ消えて行った。



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