第20話 降臨 後編



「なるほど。

同族を殺されていると良い気はしないと言うのだな?

それは一理あるな。」


僕の言葉に激昂した魔王に殺される未来しか想像していなかった。

まさか納得してくれるとは。


「人間が同族を殺していたら、我も怒り狂うだろう。」


「さすが魔王様です!!!

魔物として尊敬致します!!!」


同族への愛ある言葉に、魔物がキラキラした目で魔王を見ていた。


「では、今後人間は殺さぬ。

人間を殺した魔物は我が罰しよう。

それで良いか?」


「え、、、?はい、、、?」


拍子抜けした返事をしてしまう。


「なんだ、信用出来ぬか。

ならば魔王領に最も近いこの国の王と平和条約を結ぼう。

それで良いか?」


「、、、そこまでして下さるんですか?」


「良い、コウが望むのなら。」


僕が望めば、ナギリスと魔物が平和条約を結ぶ?なんで?


「なんで僕にそこまで良くしてくださるんですか?」


疑問がそのまま口から飛び出していた。


「先に我と、同族に良くしてくれたのはお前だコウ。

タクシーに乗せてくれた。

国を案内してくれた。

お金が足りない時にはツケにしてくれた。

魔王領はお前への感謝で溢れている。」


魔王は笑っていた。


「我が乗った時もだ。

あの時衣服を貸してくれたな。

正体を伝えた後も、我と夜通し過ごしてくれた。

過去にそんな人間は居らん。」


隣で魔物が涙を流している。

魔物は魔物で、辛い思いをしてきたのかもしれないと思った。


「お前のためなら、お前が望むなら平和条約を結ぼう。

どうする?コウ。」


僕はベッドから飛び降り、その場に土下座をした。


「よろしくお願い致します!!!

ありがとうございます!!!」


床に頭を擦り付けながら魔王様へ感謝の気持ちを述べ続けた。




言えない!!!

最初は宿暮らしだったからお金が欲しくて誰でも良いや!って思いながら乗せてたなんて!!!

本当は偏見ありまくりだったけど、タクシーの中では安全保たれてるから乗せてたなんて!!!

外で会う時はビビりまくってたのがバレたら全部パァになるううううう!!!

衣服を貸したのは変身してた魔王様が美人で下心だけで貸してます!!!


口では感謝を述べ、心の中では謝罪をしながら朝まで床に頭を擦り付け続けた。



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