第二章

第19話 降臨 前編



あの日から僕は“魔物のお客様お断り“で仕事をしている。

魔王城までのお客様はお断り。

魔物が化けているとわかっているお客様もお断り。

魔王城、魔王領に行かないので必然的に魔物を乗せることはなくなっていた。

収入は減っていたが、稼ぐのは食費だけでいいので十分だった。

本当にありがとう!ナギリス王!


今はナギリスの国で観光客や、地元のお客さんを運ぶタクシードライバーとして探している。

そして平穏に人生を終える。

はずだった、、、。




真夜中、突然大きな物音がした。

近所で何か問題が起きたのか!!??と飛び起きた僕の目の前には、魔王が居た。


「どうしてここに!!??」


予想外の出来事に体が固まる。

ベッドから出ることが出来ない。


「最近コウさんが魔物をタクシーに乗せてくれないって噂が魔王様まで回って、、、。」


魔王の隣にいたのは茶色い小鬼のような魔物だった。

ミイラのように水分が無さそうな肌、ガリガリで骨が浮き出ている。

服はボロボロの腰布だけを纏っていた。

頭の形は歪で、小さな角が二本生えていた。

ギョッとしてしまったが、その声には聞き覚えがあった。


「常連さんですよね?

魔王様が我が家に来た時にお会いした、、、。」


魔物が牙を見せながらニッコリと笑う。


「そうです!そうです!

コウさんよくわかりましたねえ!」


正体がバレて嬉しそうだった。


「コウ、何故魔物をタクシーに乗せない。」


魔王が鋭い目つきで僕を見ていた。

ものすごく怖い。


「いや、、、その、、、。」


怖くて話すことが出来ない。


「言え!!!!!」


なかなか話をしない僕に魔王がキレた。

今にも殺されそうだ。


「わかりました!!!

言います!言いますから!殺さないで!」


あまりの怖さに命乞いをしていた。


「殺す?

、、、コウを殺すことはない。

怯えずに話せ。」


声が小さくなり、目つきも穏やかになった。

魔王なりに僕を安心させようとしてくれている、らしい。


「怒らないで聞いてくださいね。」


「ああ、怒らぬ。」


話さないほうが恐ろしい目に遭いそうだった。

僕はなけなしの勇気を振り絞った。

一度死んでいる身!!!二度死んでもそう変わらない!!!ヤケだ!!!


「魔物が人間に酷いことしてるって知って乗せたくなくなりました!!!

最悪殺すって聞いて正直引いてます!!!」


一気に言い切った。

ああ、神様、どうか僕をお助けください。

出来れば転生する時に会ったやつ以外でお願いしたいです。

、、、最悪あいつでもいいです!!!






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