第18話 五人目の乗客 後編



「あなたがエマを助けてくださったんですか!!??

ありがとうございます、、、。」


僕に気づいた母親が深々と頭を下げた。


「その子、、、人間なんですか、、、?」


「はい、エマは人間ですが?」


いやいやいや今までの流れと違うじゃん!!!

森で出会うのは魔物(ごく稀に神)だけだったのに!!!


「申し訳ございませんでした!!!

勘違いをしていて、娘さんに冷たい態度を、、、。

お代は結構ですので!!!」


それだけ伝えてすぐにタクシーに飛び乗り、自宅へと向かう。

眼下ではエマが無邪気に手を振っていた。


「恥ずかしい!恥ずかしい!

とんだ勘違いを!!!」


自宅まで最高速で飛んだ。




自宅に到着して、タクシーの鍵を閉める。

もう嫌だ!今日は散々だ!

ふて寝をすると決めて、ベッドへと足速に進んでいた。


「コウさーん!

今お帰りですか!」


昨日も会った人間に化けて街を楽しんでいる魔物だった。


「魔物って人攫うんですか!!!

働かせて痛めつけたりするんですか!!!」


僕は魔物を怒鳴りつけていた。


「どうしたんですか!!??

そりゃしますよ?

攫うし、働かせるし、痛めつけますよ?

もっと酷いこともするし、最悪の場合殺しますよ?」


そう答えて、不思議そうな顔で僕を見ている。


「なんだよ!!!!

特に危害も加えられないし、人間が魔物を誤解してるってパターンだと思ってたよ!!!

普通に怖いことするんじゃん!!!

あーーーー!もう!!!」


昨日から続いた嫌な気持ちを叫んで空へと吐き出した。


「コウさんは特別なんですよ。

タクシー便利だし、魔王様も気に入ってるし。

良かったですねーーー!」


挨拶もせずに家の中に入って行く僕に、魔物が教えてくれた。

僕、気に入られてたのか。


「もうなんでもいいや、、、。」


疲れ切った体をベッドに沈め、着替えることも忘れて深い眠りについた。



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