第17話 五人目の乗客 中編



「お兄ちゃんありがとう!」


乗せた時にはわからなかったが、少女は裸足だった。

めちゃめちゃ寒そう。

魔王の時と同じように、ジャケットを渡した。


「温かい、、、ありがとう!」


泣きながら笑う少女。

本来ならばほっこりする場面だが、こいつは人間じゃない。


「はい、どうも。」


適当に返事をしておく。


「ナギリスまでで良いんですよね?」


「うん!」


彼女はナギリスの国民で、2週間くらい前に森で薬草を探していたところ魔物に連れ去られたと言う。

城では子どもでも仕事をさせられ、ミスをすると痛めつけられたからボロボロ。

ご飯もろくに食べられなかったそうだ。

隙を見て小さな体を活かして脱走したらしい。


という設定だろう。

上手いこと出来た話しだ。

そもそも魔物たちって人攫うのか?

今まで見たことないし、魔王もあんなんだったけど。


「あ!あそこだよ!私のお家!」


ナギリスの城を越え、自宅を越え、もう国から出そうな場所で少女が言う。

どうせ家に降ろしたら変身を解いて大笑いするんだろう。


「では、着陸しますね〜。」


家の裏手に着陸し、タクシーを透明にして少女と共に家へと向かった。


「お母さん!!!」


少女が、庭で洗濯物を干していた人間の女性に飛びついた。


「エマ!エマなの!!??

どこへ行っていたの!!!

心配していたのよ!!!

無事で良かった、、、、。」


女性が涙を流して少女を受け止めた。


「え、、、?あれ???」


寝不足で頭の回らない僕には、目の前の現実が夢のようだ。

人間が魔物を抱きしめてる、、、?





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