第16話 五人目の乗客 前編



「昨夜は楽しかった。

また頼むぞ、コウ。」


朝日の中、城へと送り届けた魔王は満足そうだった。


「これは面白い!

我の攻撃が一切効いていない!」


昨夜の魔王様は嬉しそうに炎や氷、大剣、大砲、様々な攻撃でタクシーの破壊を試みていた。

自分の攻撃で傷つかない物が相当珍しいらしい。


「他に試していないのは、、、ドラゴン召喚してもいいか!!??コウ!!!」


「絶対にダメです!!!

大騒ぎになるでしょう!!!」


「そうか、、、。」


シュンとした魔王を慰め、魔王城専属タクシーへの勧誘を断り続けていると僕は一睡も出来ずに朝になっていた。

そのまま魔王城まで運転、疲労困憊だ。

今日は休みにする!一日中寝る!

そう決意してエンジンをかけた。


「助けて!助けて!」


僕の決意が呆気なく崩れる音がする。

窓の外には女の子が立っていたのだ。

小学生低学年くらいに見える女の子は、バサバサのショートカットで傷だらけ、首には金属の輪がついていた。

白いワンピースは袖もなく、寒そうで裾はボロボロだった。

タクシーをバンバン叩いて叫んでいる。


「いや、絶対魔物じゃん!!!」


考えていたことが口から漏れていた。

魔王城の側で乗車してくるやつは大抵魔物。

僕をからかってくるやつも多い。

まだタクシー運転手になって1ヶ月ほどだが、何度も見たパターンだ。


「魔物じゃないです!

助けて!助けて!」


少女は涙を浮かべていた。

ここで見捨ててもいいのだが(魔物だから)、どうせナギリスへ戻る。

乗せて少しでも稼ぐ方が賢い判断だろう。


「はあ〜、、、どうぞ。」


僕はドアを開けて、少女を車内へと向かい入れた。



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