第9話 二人目の乗客 後編



「本当に飛んでいる、、、。

こんな大きな物が大人を4人も乗せて、、、。」


「ねえ!これ大丈夫なの!!??

落ちない?絶対に落ちないのよねえ!!??」


「なっ!だから空飛ぶって言ったろ?」


驚くライル、怖がるリーア、大興奮のジェイクで車内は大騒ぎだ。

僕が気を遣って話しかけることは無さそうで助かる。


料金のメーターを見ると、最初から100と表示されていた。

さすがは難易度最高のダンジョン魔王城。


「この100ってなってんのが料金か?

100ペイズ払えばいいのか?」


「料金は行く場所、距離によって変化します。

ここから更に上がっていきます。」


「100ペイズよりも高くなんのか!!??

タクシーってやつは高級なんだなあ、、、。」


この人たち本当に払えるのか!!??

乗り逃げされないようにしなきゃ、、、。



「あー、あれが魔王城ですね。」


山を越え、森を越え、眼下に禍々しい城が見えてきた。

途中魔物らしき生物とすれ違ったが、透明だったのでバレなかった。

御伽噺に出てくる鬼に羽が生えたような見た目の生き物が長い木の棒を持っていた。

人間の子供くらいの大きさだったが、強さは不明だ。


「お!あれか〜!!!!」


ジェイクは窓に張り付いて外を眺めている。


魔王城の門の前には警備をしているらしき魔物がいたので、少し離れたところで着陸した。

ナギリスからは40分ほどの旅路だった。

メーターを見ると2100と表示されていた。


「2100ペイズとなりますが、、、大丈夫でしょうか?」


「2100ペイズ!!??

タクシーとはお高い乗り物なんですね、、、。

、、、お支払いします。」


ライルは薄っぺらい財布を取り出すと、そこからジャラジャラと金貨を出す。


「え?その財布どうなってるんですか!!??」


どう見てもそんなにお金が入ってるような財布には見えない。


「ああ、こちらは魔道具です。

お金、いくらでも入るんです。

街の道具屋で売ってると思いますよ。」


「めちゃめちゃ良いですね、、、それ。」


袋に入れただけのお釣り用の小銭は相当重い。

透明にしておけるので車上荒らしの心配はないが、買い物中足りないと取りに行かねばならない。

財布、、、買おう。



「さーてと!魔王倒しに行きますか!」


「あら!やる気ね?勇者様?」


「、、、勇者?」


リーアがジェイクを勇者と呼んでいる。


「我々はナギリス王から正式に魔王討伐の命を受けています。

ジェイクは勇者なんですよ。」


勇者、魔王城までタクシー使って来ちゃったんかい!!!!

いいのか?????

歩いて修行しながら向かうとかじゃないの!!??


「いやー、昨日急にお前は勇者だから魔王倒してって言われてびっくりしたわ〜。」


「私も〜!

昨日まで普通に家事してただけなのに!」


「俺もだ。

ただの学生だったのに、勇者と旅する魔法使いに選ばれて驚いた。」


昨日???家事???学生???


「よし!!!行くぞ!!!!」


ジェイクがそう言うと3人で門の衛兵に挑んでいった。

ジェイクよりも大きな鎧を着た魔物にすぐにボコボコにされてた。



「いや、無理だろ!!!!!

修行とかしろよ!!!

レベルとか上げて、装備とか整えてから挑むんだよ!!!

ライル頭良いキャラかと思ってたけど3人全員バカかよ!!!」


なんとかタクシーまで走って戻ってきた3人を乗せ、またすぐにナギリスへと引き返した。

帰りの車内は僕の怒鳴り声だけが響いていた。


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