第3話 最強タクシー



そこに写っていたのは僕の世界でもよく見かけるタクシーだった。

車に詳しくない僕でも知っているクラウンという車によく似ていた。



タクシー


・乗務員を含めた4人乗り(サイズ変更等は不可)


・料金はダンジョン、行先の難易度によって変動する。

進むごとに料金が上がるため、メーターの確認を怠らないこと。


・空を飛ぶ、地中や水中に潜ることも可能。


・外の環境は車内には影響しない。

外部からの攻撃で傷がつくこと、車内の者に危害が加わることはない。

基本的に壊れることはない。


・車内での乗務員の安全保障あり。

客からの攻撃無効。


・エネルギー補給必要無し。


・経験値を積むことでレベルアップあり。

乗務員、車両共に進んだ距離に応じてレベルが上がる。


・生物以外の荷物はトランクに無限に収容可能。


・事故を起こしても車体、ぶつかった対象ともに傷つくことはない。



「え、、、、すごくない????」


固まる僕を見て神がニヤリと笑う。


「こっちの都合で召喚してんだぜ?

これくらいのボーナスあげないと、やってらんないだろ?

まあ俺からの新しい生活への餞別ってところかな〜!」


めちゃめちゃドヤ顔で話してる。

イラッとする。


「後これ着とけよ〜!

やっぱ雰囲気から入らねえと!」


神がいつの間にか持っていた白のワイシャツ、黒いスラックス、緑のジャケット、真紅のネクタイ、帽子と白い手袋、革靴を手渡された。


「わー、theタクシー運転手だ〜!

はははははは〜!」


もう笑ってしまった。


「その服、洗濯しなくても清潔が保たれる素材だから。

あと防具にもなってるから、ちょっと撃たれたり、ちょっと切られたくらいじゃ怪我しないようになってんだよ〜!」


サラッとすごいこと言うじゃん、、、。

僕はマジマジと服を見つめた。


「おい、サッサと着替えろよ。

お前本当に鈍臭いのな。

着替えたらナビの使い方とか説明すっから早くしろよ。」


悪口を言われ、顔を上げると神の横にタクシーがあった。

緑の車体には白いラインが入っていて、黒い文字で『佐伯交通』と書かれている。ダサい。


僕がしぶしぶ着替えている間、神はタクシーの動作確認を行っていた。

僕のタクシーは問題なさそうだ。


「よし!お前コレに名前つけろよ!

愛車には名前あった方がいいだろ!」


車に名前?いらないだろ!!!!!

と思ったが、神も真剣に考えだしたので言えなかった。


「ディープ・インパクトにします。

速そうなんで。」


「お前それ確か馬の名前じゃね?

、、、まあいいか!かっこいいし!」


こうして僕の愛車はディープ・インパクト号という名前になった。

ナビの説明をしてくれたが、元の世界とほぼ同じだった。


「おう、早速だがディープに乗れ!

乗ったら俺が道を作る。

真っ直ぐ進めばお前の新しい人生の始まり、始まり〜!」


不本意だが、僕は異世界でタクシードライバーになることになった。


「あ、あと何か聞いておくことある?」


僕は最後にずっと聞きたかったことを聞いておくことにした。


「神様は何で僕と同じ顔なんですか?」


僕の質問に神様が手を叩いて笑う。


「最後に聞きたいことそれかよ!!!!

お前にそう見えてるだけだよ!!!

ほら、前向け!!!

脇見運転すんなよ?」


神の言う通り前を向くと、光輝く道が出来ていた。

エンジンを掛け、シートやミラーを調整し、シートベルトを閉めた。

ギアをドライブに合わせ、ゆっくりとアクセルペダルを踏み込んだ。


免許持ってるけどペーパードライバーだなんて今更言えない。

事故に遭っても相手も僕も無事みたいだし、まあ大丈夫だろう!!!!


こうして僕の異世界タクシードライバー生活が幕を開けた。


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