第4話 結末になるはずという
世界が消えてしまう前に。私たちは出会った。私と僕は。運命だと感じるのはこの特殊なシチュエーションのせいだ。このスパイスは私たちを恍惚とさせる。
ずっと恐れていたあの音の正体が彼だったなんて。あの瞬間を迎えてからは、もう孤独は打ち消されたのだと思う。
「コンコンコン」
「コンコンコン」
何かをノックしている。誰かがドアをたたいている。もう思いっきり蹴飛ばしてくれても構わないのに。それは丁寧で、謙虚なことだった。
なんだか不思議なことだよね。この感覚は。忘れてしまってもいいような。そんな感じ。
それでね、もう僕達は消えている。気付く間もなく溶けてしまった。
だからその後の話をしたいんだ。
この世界が幽霊というやつに渡ってしまった後の話を。
「ねえ、何で僕らは死なないのかな?」
「は?死ぬってなんだよ。」
「え?」
彼らは概念もあいまいなまま、さまよう存在のようだ。演繹法というか、同じ所をぐるぐると。でもね、怖いのはその先には行けないんだ。もう、道はないんだ。だから、彼らは滅んでしまった。彼らは滅んでしまうのだ。
さあ、もう疑問だらけだよね。
誰が、誰が。何のためにこの世界を幽霊の物にしたんだろう。それとも、圧倒的多数になった幽霊が、物理法則的に支配者に成りえたのか。誰も分からない。
誰も分からない。
結局、何だったんだろう。
ふとぼんやりと目を開けると、そこには世界が広がっていた。さあ、見知らぬ世界。視界に入るものすべてが未知で不確かでおぼつかない。
でも、立ち上がることができた。ふらふらと、生まれたての羊の様かな。
思考が巡る。頭がはっきりと働いている。
「ここはどこだ。」
「ここはどこだろう。」
境界のあいまいな感じを享受する。この感じがいじらしく、なんともっていうね、心地よい感じ。なんだか、そう、生まれ変わったような気分。
誰かが誕生させてくれたのだろうか。ただ、そんなことが頭に浮かぶのだ。でも、決して悪い気分じゃない。ただ、何もない。何も覚えていない。何も。何も。
だから最初からなかったんじゃないかと思う。だけど、それでもかまわない。そんな気分。
複雑だから、複雑なままにして、いいような。悪いのかとも思うけど。だけどすぐはっきりとさせなくてはという思いに駆られる。なんだかな、焦燥感ってやつだよね。
少し歩いてみると、様々な、様々な事物が押し寄せる。そうだな、脳内にって感じ。
草、がれき、木々、亡骸。
それらを認識する。
「え?」
まあ、異様な光景という言葉をつい口に出す。そして、
「私は・・・」
end.
その世界とは何だろうか。 @rabbit090
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