第20話 開幕

「みんなで帰れるってどういうことだ?」

「ある人が教えてくれたの」

「ある人?」

「今はこれ以上教えられない」

「なんだよそれ。協力しろってわりには随分信用がないな」

「ごめんなさい。でも出来るだけ多くの助けがいる。私たちの敵は私たち同士じゃないの」

「どういうことだよさっきから」

「この大会の運営、心臓皇女。それが私たちの倒すべき敵」

「それって」

「今までもそんなことを試みた人たちはいなかったわけじゃないらしい。でもみんな成功しなかった。なぜなら運営の防衛は」

「待て待て、頭が追いつかない。アリス、あんた何をする気なんだ」

「運営を潰す。それが元の世界に帰るイチバンの近道だから」

「……よくわかんねえけど……わかった。俺だって帰らなきゃいけないんだ。彼女のためにも、プリケットのためにも。それが出来るんならなんでもやってやる」

「シン……」

「なんだよ」

「ありがとう」


♪♪♪


「やめとけ」

「誰だてめえ」

「その娘、お前の仲間じゃろ」

「オマエノナカマジャロ」

「指図すんな。これは俺たちなりのケジメだ」

「仲間なら手当てしてやれ。ケジメっちゅうのはそういうこった」

「俺は勝つ! 勝ってこの国の王になる! だがそのためにはコイツもいつかやらなきゃならねえ! もう荷物なんだよ! ヒミはもう戦えねえ! 野望のためには邪魔なだけだ!」

「ならなぜ泣く? 本心じゃないからだろ」

「ダロ」

「お前らから殺してやる」

「そうか。ならワシも手は抜かんぞ小僧」

「イクゾジジイ」


♪♪♪


「皇女、申し訳ありません。屯所がすべて鎮圧されました。現在、島との通信手段は断絶した状況です」

「貴様に最後の任をくれてやる。申せ。何奴の仕業じゃ」

「それグァッ」

「くだらぬ報告は要らぬ! 全隊に告ぐ! すぐさま現地に出動し全ての参加者を始末しろ! 余興は終わりじゃ! 愚か者め、妾に恥をかかせたこと……死をもって償わせてやる」


♪♪♪


「うまくいきすぎだな。こんなにコトがトントン運ぶだなんてよ。初めてあんたとやりやった時には俺だってぶっ殺してやるつもりだったが今考えると冷や汗がでる。あんた凄すぎだよ」

「黙れ」

「冷えな。今は仲間だろ。えっと、ヘイヤだっけ? あんたの言うとおり敵が全軍をこの島に仕向けた隙をついて皇女のいる本部を叩く。そんなこと何年も企んでやがったなんてさ。初見で教えろっつうの。そんなら真っ先に乗ったぜ俺は。そりゃそうとあの女信用出来んのか? どう見たってフツーの女子だぜ」

「お前にはわからんさ。あの子の強さは」


♪♪♪


 物語は動き始める。VS心臓皇女。最終決戦、開幕。

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