第17話 Cの血統 その2
それは生まれながらの名もなき暗殺者。親も子もなく、ただ個として存在しながら存在しない背景を持たない者達。各々は世界に点在し、大義のために暗躍する。
ダイナの任務は
「お前一人で俺には勝てない」
「どいて。消えて。私はユトさんを助ける」
「そいつもじきに死ぬ。お前も。ここについてからどれだけ多勢でも一人でやれた。慎重になりすぎていた。ラヴだけは直感的に厄介だと感じたが奴も死んだ。このレベルなら俺一人で優勝できる。お前らは足枷だと判断した。だからここで切ることにした」
「だから? いいからとっとと消えろよ裏切り者!」
「なら俺を倒して通れよ」
「……そんなの出来ないよ もしも私があんたより強かったとしても だってダイナ 泣いてんじゃん」
誤算があった。それは道具であるはずだった。他ならぬ自身がそうであったはずなのに、いつからか寝覚めが悪くなった。郷の教え、国への忠誠、自身の在り方を呪うように説き続ける毎日が続いた。それを塗り替えるように彼女達が目の前で笑むから。いつしかわからなくなった。正しさとは何か。仲間とは何か。大義とは。ダイナは一つの決心を秘めここに立っていた。
アリスに核心を突かれたその刹那、未知の感情が答えとなって表に出ていた。それが彼の隙となり仇となった。ダイナの背後には何処からともなく歪みが生じ影のようなものから腕が伸びていた。腕はダイナの首元に絡みつきそれを締め上げたのである。アリスは叫んだ。影はダイナに囁く。ダイナは思った。ヤキがまわった。かすれる声を上げてアリスに告げた。
「逃げろ! ユトを 頼む」
「ダイナ!」
「いいから行け! コイツ ハーティアの刺客だ チェシャーを始末しに た 狙いは俺だ だから行け 急所は はず てある まだ 間に合う」
「ダイナやだよ もう誰も失いたくない!」
「アリス 勝て」
アリスはユトを背負って走り去った。振り返らなかった。それでいい。ダイナは影に向かって囁いた。
「俺は ダイナ ダイナ・マイトデッカーだ」
爆音が鳴り響いた。アリスは一度だけ立ち止まった。怯みからではない。俯いたまま、時間にすれば数秒のこと。アリスは顔を腕で拭うと再び走り始めた。
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