第10話 チャチャチャマッチャがマッドで待て待て狂ッテ狂ッタチーパーチー!(中編)
ラヴはひた走った。全ての銃弾を潜り抜けることは難しく、幾らかは被弾した。それでも歩みを止めることなく、敵の攻撃を一手に担う。私は何をしていた? 怯えて、震えて、動かない手足が悔しくて泣いた。ラヴが傷つきながらもなんとかしようとしているのに私は臆病にも程がある。戦わねばと頭は言ってる。でも……
「アリス! 無事か?」
「ユトさん」
「二人やった。あっちに行こう。ラヴのバカが無茶やってんのを無駄にするな」
「はい!」
☆☆☆
「ちょこまかとウゼェえええ! なあ? アレ使うぜ」
「いいだろう」
「ガトリング発射アアアア!」
☆☆☆
エゲツない弾道。リロードのない果てしない連射。反対側に走ったラヴの姿を見失った。まさか……私は首を振った。そんなわけない。
「ユトさん! ダイナは!」
「たぶん一人でやりに行ってる。死んだかも」
「ユトさあん!」
「悪りぃ。アタシもヨユーとかないから。カバー頼む」
『ガガピー……おいおいおいおいいい!』
「るせー! どうぞぉ!」
『ピピッ、敵はザッと見て後八人……ピの方にピピッピピッでガガピーッがピガガピだからこっガガガアアだ!』
「OK!」
「わかった?」
「さあね」
「ああ嗚呼アアアア!!」
「前にいる! 三人。コッチだ!」
☆☆☆
「三人落とされた。不甲斐ない連中だ」
「帽子屋、俺たちも行かなくていいのか?」
「ガトリング女の弾数で要塞化出来てる。位置的には有利だ」
「けどよあんま粘ってもここはガスでやられ……」
「なら一人で行け。死にたい奴を止めはしない」
「帽子屋アアアア! 予備弾装填宜しくぅうう!」
☆☆☆
『ガガピーとりやっピーこのままガガぜ!』
「もう黙れ! コッチは攻撃を受けてる! バカの実況聞いてるヨユーなんかねえ!」
『ガガピーガガこと、言っちゃっていいのかな?」
「え?」
「三人! やりやしたああ!」
ダイナ合流。アホほど調子こいて踊り出す始末だけど今はめちゃくちゃ頼もしかった。頭は悪いっていうか考えなしに突っ込むけどフィジカルはチーム随一だ。
「ッ痛!! アアアア撃たれた!」
「もうバカ! ほんとバカ!」
「アリス! こっちは見張ってる。手当してやって!」
「死ぬーーーーッ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
「うるさいうるさいうるさいうるさいいい! 動くなあ!」
☆☆☆
「マズイぜ! 完璧じゃねえのかよ! 押されてんぞ!」
「黙れ」
「んだと!」
「黙れっつってんだ! どいつもこいつも雑魚のくせに僕にケチをつけるなあ!」
「そうだな。テメーなんかに頼った俺たちがバカだったぜ。おいヒミ。このチームは解消だ。俺と組め。そんでから引くぞ」
「えーー? もうちょっとなのにぃ」
「裏切る気か」
「元々敵だよ」
「待て!」
「ごめんね帽子屋ア。生きてたらまったあっそぼー」
「クソどもが」
「あんま調子乗んな人間。雑魚に頼らねーで意地見せろよ帽子屋さん」
☆☆☆
「急に静かになったね」
「ヤバいな。時間がない」
「向こうも諦めたのかな」
「ダイナ、動けるか?」
「無理でつ」
「じゃあ置いてく」
「いけずしないで! 頑張りますから!」
「アタシがおぶってく。でもラヴは」
「……」
一瞬のことだった。影から飛び出てきた黒いコートの人が隙をついてこちらに構えていた。怒り? 悲しみ? 歪んだ表情がはっきり見えた。あ、この人死ぬつもりだ。なんとなくそう思った。でも私たちはそうじゃない。三人とも動きが遅れた。ダメ。やられる。銃口から煙が立つ。弾は発射され私たちの方へ……飛ばなかった。黒コートの側に大きな塊が突進して弾道が逸れたのだ。塊はデカいウサギの頭。人の脚が生えてる。口に懐中時計を咥えていた。ユトさんが私の手を引いて走れと叫んだ。ダメ。置いてけないよ。だって、そこに……やだよ
「アリス」
「ラヴゥゥウウウウーーーーッ!!!」
大きな音がなって耳がやられた。世界が無音になる。
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