第9話 チャチャチャマッチャがマッドで待て待て狂ッテ狂ッタチーパーチー!(前編)
私たちは今エライ目にあってます。助けて、誰か。
「ああああ! もうどこから撃ってんのよ!」
「アリス! 落ちついてください!」
「全然覗けないよ! ユトさん達どこ行っちゃったの」
「爆撃の後、二手に分断されてしまいましたからね。おそらくだいぶ離れてしまった」
「誰よ! この射線どこ通ってんの? 異次元やん」
「簡単なトリックです。相手は徒党を組んでるだけですよ。そして明確に我々を狙ってきた。以前どこかでヘイトでも買ったんですかね」
「知らないわよ! あーもう最悪死にたくねー!」
「この窪みが囲まれたら終わりです。敵はおそらく円状に広がって徐々に詰めてくる。人数は定かではありませんがここでユトやダイナと散らばったのは不幸中の幸い。誰か一人でも円の外に抜けてなんとか突破口を開ければ」
「無線機!」
「二機しかなく、こちらの手元にはありません。しばらく耐えましょう」
「ああああああんんん!!」
「こちら美雲。ダイナ生きてる」
『ガガピー……れに言ってピーガガ』
「くそ電波。まあいい。生きてるっぽいな。アリス達は多分ヤバい。アタシ達でなんとか回り込むしかないよ。この通信機はたぶん殆ど役に立たないからここからは個人のフィジカルを信じる」
『ガガピーガガピー……なんて?』
「グッドラック」
『ちょまピー……』
今朝のこと。新たな一日の始まりに警報は島中を駆ける。残り部隊五十五組。生存人数一〇三名。一夜にして半数近くの部隊が消えた。
「一日が経過したわけですが皆さん、人数が半分となり、ここから接敵の頻度を上げるためにエリアの縮小が実施されます。本日の正午までにこの区画まで移動しなければいけません」
「どうして? わざわざ激戦区作っちゃうみたいなもんでしょ」
「知らんのか」
「何を」
「島中に設置されたガス噴射装置が発動してこの区画外は毒まみれになる。つまり俺らが今いるこの辺りは安置でなくなる」
「聞いてない! てかメチャ遠いじゃん! 間に合う!?」
「すぐに出ましょう。先回りしている部隊の存在は否めませんがこの丘陵地帯を沿うように進めば多少は安全かと」
「同じ考えの奴らがいるかもだけどね。アリス、お前はどう思う」
「わかんないですよ。でも直進するよりはましかも」
「んじゃまあそれで。ダイナが前線でヘイト買いながら残り三人で援護。決まり。行くぞ」
「ちょちょちょいちょい!」
「覗きの罪は重い」
私たちは島の中央に聳える山までにある丘陵地帯を目指した。ところが道中で奇襲に遭う。投げ込まれたグレネード。気付くのがあと少しでも遅れたら終わってた。ただ先行していたユトダイナチームとはそこではぐれてしまう。さらにさらにここは昼には安置外になる。敵の所在が見えず、持久戦を強いられているが時間もない。これが相手の狙いだとしたらめちゃくちゃ嫌な奴らだ。なんで私たちなのというのは野暮な質問。ここは食うか食われるかのサバイバルアイランド。でもピンポイントに狙ってきたんなら以前も戦った相手? 私は初めて自分が撃ってしまった女の子を思い出していた。あの子がリベンジしてきてるならこれは……私の所為!?
☆☆☆
「アーーーッハッハッハアアアア! ぶち殺してやんぞ!」
「帽子屋、あのガキヤバくないか?」
「ああいう手合いはいい駒になる。こちらは六チーム十二人。相手はどう見積もっても四人まで。まあ敗ける要素はないが……確実に仕留めるならあの女みたいな戦闘狂は強い武器だ。いざとなれば切り捨てればいい」
「ヘヘッ。どこまでも冷たいやつだな。一生ついてくぜ」
「……」
「おい帽子屋! 何ブツブツだべってんだコラァ! さっさとブッコロしちゃおうぜ」
「焦るな。どの道逃げられんさ。次は必ず潰す」
☆☆☆
「マズイですね」
「今までそんなんばっかじゃん」
「アリス、私が囮になります」
「は? 待ってよ! 置いてかないって約束じゃん!」
「敵は狡猾です。冷静に我々を仕留める機会を狙ってきた。ずっと追ってきたんですよ。昨晩、あなたは寝ていたから覚えてないかもしれませんがおそらくそいつらです。そして切れ者が一人いる。そいつを倒せば後は烏合の衆と見てもいい。どの道このままではガスで死ぬことになる。それってムカつくじゃないですか」
相変わらず感情を顔に出さないラヴだけど語気にはキレがあった。ブチギレだった。私は「確かに」と目を座らせて両手でピースサインした。ラヴ、生きろ!
「おーい!! 私はラヴと申しますう! 我々を狙ってるどちら様か! 聞こえておりますかああ!? テメェらすぐに地獄に送ってやるから覚悟しろコラァアアアア!!」
ラヴ、疾走開始。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます