第7話 戦犯か不可抗力か
怒涛の一日が終わろうとしている。日は暮れて、昼間の喧騒が嘘のように静かだ。皮肉にもこれまでの人生で一番綺麗な夜空。これが夢でも現実でも見惚れた事実が私。ふと振り返ってため息が出る。緊張は慣れと共に気を弱らせ、夜の空気がまとわりついた。つまり眠い。
「アリス、交代に寝よう。先寝ていいぞ」
「ダイナ爆睡中ですけど」
「ほっとけ。最悪置いてく」
「眠いけど寝れないっていうか」
「怖いか?」
「ユトさんはなんでそんなに落ち着いてるんですか」
「ユトでいいよ。なんでかな。アタシはわりと今の状況を楽しんでる。右も左も分からないまま上京して、変なのにつかまって、気づいたらネット配信してた。毎日自分が自分ではなくなる気がして放送の後はいつも吐いてた。笑うだろ」
「いえ。分からないけど大変なんですねVtuberも。今のほうが自分らしいってことですか?」
「どうかな。でも周りの目とか気にしないでやりたいようにやってるって意味ならそうかも。不謹慎だなんだとか思うかもだけどアタシは今、久しぶりに楽しいよ」
ラヴが二人分のコーヒーを用意してくれた。耳を器用に使って。流石に夜は冷える。少し寝るか。
「リス……ス!! 起きろ! アリスッ!」
「うー」
「起きてください! マズいです! 囲まれました!」
遠くで声が聞こえてくるけど体が動かない。徐々にヤバいことが理解できるけど、でも、私はめちゃくちゃ寝起きが悪い。
「ラヴ! ダイナのバカは?」
「さあ。銃声が鳴った時にはもう姿は」
「裏切ったか、或いは拉致? だとしてなんで?」
「とにかくアリスは私が担いで運びます。急いでここを離れましょう」
「つったってよ! 八方から来てんぞ! この暗がりじゃ隙なんて」
「彼らにやり合わせましょう」
「チーミングだったらどうすんだよ! 運ゲか?」
ガガガ……ピピッ
「無線機……ですか?」
「え? ああ、たぶんバカ猫。 もしもしあんたどこ行って……」
「そっから南西に向かって走れ! 塞いでた部隊を一個潰した。真っ直ぐ抜ければ逃げられる! 早くしろ!」
「クソッ! 勝手ばっかすんな! ああもう! 行くぞ!」
周りがバタバタしてる時、私は二度寝してこの後めちゃくちゃ怒られた。
☆☆☆
「チッ! 逃げられたか」
「おい! お前の作戦てのは完璧じゃなかったのか?」
「フカシこいてんじゃねえぞ帽子屋!」
「完璧だよ」
「ああ? これのどこが完璧なんだ! 逃げられてんじゃねえかよ!」
「彼女達を仕留められなかったのは君たちのスキルの所為だろ」
「おい……みんな聞いたか? コイツは今ラインを越えた」
「ああ。処刑だ」
「まったく君たちときたら。腕も悪ければ頭も、か」
☆☆☆
「なんだ!? 爆発?」
「仲間割れですかね?」
「走れ走れ! 振り返んな!」
……zzz
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